悪性腫瘍(がん/転移)を針で治すラジオ波焼灼術
放射線科

ラジオ波焼灼術とは?
ラジオ波焼灼術(はしょうしゃくじゅつ)(RFA)とは、体の外から腫瘍(しゅよう)に特殊な針を直接刺し、ラジオ波電流を流すことで針の先端周囲に高熱を発生させ、腫瘍を焼灼する治療法です。CTや超音波(エコー)などの画像で、病変の位置を確認しながら針を刺すため、安全性・正確性の高い治療を行うことができます。創(きず)は針穴のみで体を切る必要はなく、局所麻酔で行うことができる体に負担の少ない治療法です。以前は肝臓(かんぞう)がんのみが保険適用でしたが、2022年9月より、肺・腎臓(じんぞう)・骨・骨盤(こつばん)内に存在する臓器の悪性腫瘍(がん/転移)、骨の良性腫瘍の一部(類骨骨腫)に対して保険診療で治療を行うことができるようになりました。
肺の悪性腫瘍(がん/肺転移)に対するラジオ波焼灼術
肺悪性腫瘍には、肺から発生した悪性腫瘍である原発性肺がんと、ほかの臓器に発生したがんが肺へ転移したものである転移性肺がん(肺転移)がありますが、ラジオ波焼灼術はどちらも対象となります。手術適応となるのは、サイズが1cm~2.5cmの範囲内で、病変の数が数個以内のものです。
肺の悪性腫瘍には手術、抗がん剤、放射線照射などのさまざまな治療法が存在しますが、これらの治療ができなかったり、効果が得られなかったりした患者さんにも治療を行うことができます。また、病変をピンポイントで治療できるので、肺の大部分の機能を温存することが可能です。さらに、体の負担が非常に少ない治療法ですので、高齢の患者さんや全身麻酔を行うことができない患者さんにも行うことができ、繰り返し何度でも治療が可能です。
入院期間は3泊4日程度です。治療成績は腫瘍の種類や大きさにより異なりますが、2cmまでの腫瘍に関しては原発性肺がんで60~80%程度、転移性肺がんで80~90%程度の局所制御率(※1)が報告されています。
※1 局所制御率:治療後の一定期間、治療を行った部位で再発が見られなかった人の割合
ラジオ波焼灼術の実際
ラジオ波焼灼術は、次のような流れで行います。
- CTや超音波検査を行い、皮膚から腫瘍までの針を刺す経路を決定します(写真、図a)。
- 針を刺す部分の皮膚を局所麻酔し、CTや超音波の画像検査で位置を確認しながら、直径約1.5mm程度の針を皮膚から直接刺し、目的の腫瘍まで進めます。
- 針の位置が適切であることを確認したら、針の先端にラジオ波電流を流して焼灼を開始します(図b)。治療中は、強い痛みが生じることがあるため、必要に応じて麻酔薬や鎮痛剤(痛み止め)を投与します。
- 腫瘍のサイズが大きい場合や数が複数ある場合は、針を複数回刺して治療を行います。また、治療自体を複数回に分けて行うこともあります。治療時間は1~2時間程度です。
- 術後は定期的に画像検査をして、治療効果の評価を行います(図c)。


肺以外の腫瘍に対するラジオ波焼灼術
2022年9月に新たに保険適用となった臓器として、肺以外に腎臓、骨、骨盤内に存在する臓器があります。肺と同様、それぞれの臓器に発生した悪性腫瘍(がん/転移)が手術適応となります。また、類骨骨腫という骨の良性腫瘍も適応となります。
腎臓の場合は、サイズが1~3cmの範囲内であれば治療効果が期待できます。骨の場合は、悪性腫瘍を治療する目的以外に、悪性腫瘍によって生じた痛みを軽減させる目的でも行われます。いずれの臓器の腫瘍も、まずは手術、抗がん剤、放射線照射などの標準的な治療が優先されますが、これらの治療ができなかったり、効果が得られなかったりした患者さんが、ラジオ波焼灼術の手術適応となります。
ただし、ラジオ波焼灼術を行うためには、安全に針を刺す経路が確保できることが前提となります。また、病変の近くに心臓や大動脈などの重要な臓器がある場合や、針を刺すことによる出血などの合併症の発生リスクが高い患者さんには、行うことができない場合があります。詳しくは当院放射線科外来までお問い合わせください。
当科の特色 放射線科
放射線科では、X線、CT(年間43,000件)、MRI(年間15,000件)、核医学(年間3,000件)、PET(年間4,500件)などの画像装置を用いた診断と治療を行っています。放射線科で行う治療の中に、IVR(Interventional Radiology)という治療法があります。IVRとは、X線やCTなどの画像装置を用いて体の中を透かして見ながら、カテーテル(医療用の細い管)や特殊な針などの細い医療器具を使用して、治療を行う最新の治療法です。
さまざまな種類の病気や臓器に対して行うことができますが、多くの場合は、局所麻酔でできるため、体を切る必要がなく、針穴程度(数mm)の傷口で治療が可能であり、体への負担が非常に少ないという特徴があります。治療後の創はほとんど残ることはなく、入院期間は数日~1週間程度と短く、治療後は速やかに日常生活に戻ることが可能です。
ラジオ波焼灼術はIVR治療の中の1つですが、当院ではラジオ波焼灼術以外にも、さまざまな疾患や臓器に対してIVR治療を行っています。
診療実績
放射線科では、脳と心臓以外のあらゆる臓器の病気に対して、年間約800~1,000件のIVRを行っています。当院の大きな特徴は、高度救命救急センターを併設しているため、救急疾患に対するIVRが非常に多いことが挙げられます。すべての緊急症例に対して、24時間365日オンコールで対応しています。
また、心臓血管外科および循環器内科と協力して大動脈診療にあたり、大動脈瘤や大動脈解離に対するステントグラフト治療を行っています(詳しくは(「切らずに治す大動脈瘤、大動脈解離のステントグラフト治療」)をご覧ください)。そのほかにもさまざまな診療科と密接に連携しながら、専門的な診療を行っています。
更新:2025.12.12
