強皮症(全身性硬化症)に国際基準の最先端医療で挑む
リウマチ・膠原病内科 / 強皮症・筋炎先進医療センター

強皮症(全身性硬化症)とは?
強皮症(全身性硬化症)は、皮膚や全身の内臓が硬くなる病気です。皮膚が硬くなる状態を「皮膚硬化」と呼びます。また、指先や内臓の血管の中が狭くなって血流が悪くなることもあります。推定患者数は2.7万人で、男女比は1対10で女性に多く、30~60歳代の方に多く発症します。症状は二つに大別され、肘《ひじ》・膝《ひざ》を越えて胸部、腹部などの体幹側まで皮膚硬化が広がるタイプ(びまん皮膚硬化型)と、手指に皮膚硬化が留まるタイプ(限局皮膚硬化型)に分かれます。患者さんによっては病状が進行性で生活に支障をきたすこともあるので、早期の受診が望ましいです。
手指の皮膚硬化に留まらず、内臓に合併症が起こることも
強皮症は、皮膚や内臓に物質がたまって硬くなる線維化という状態を生じる病気です。線維化が進むと正常な機能を果たせなくなります。また、指先などの血管の壁が厚くなって内部が狭くなり、血流が低下することもあります。以下、頻度が多い順に内臓の症状を列挙します。
まずすべての患者さんにおいて、手指や手の甲などの皮膚が硬くなって、つっぱったりつまみづらくなったりする皮膚硬化が出現します(図1)。

前述の通り皮膚硬化が肘・膝を越えて体幹側まで広がるびまん(病変や症状が一面に広がり、はっきりとした境界なく全体的に拡がっている状態)皮膚硬化型と、皮膚硬化が手指に限局する限局皮膚硬化型の二つのタイプがありますが、特にびまん皮膚硬化型の患者さんは皮膚硬化が胸部、腹部まで広がることから、内臓の症状が出やすいです。
続いて約8割の患者さんに、寒い時などに手指の色が白、紫、赤に変わるレイノー現象が出ます(図2)。

これは血管が一時的に縮こまって血行障害になるからです。また、指先の皮膚に傷ができて治りにくくなる皮膚潰瘍も出ます。さらに約7割の患者さんでは、食道の動きが悪くなります。このため食事をしたときの胸がつかえや、胃酸の逆流による胸焼け症状が生じます。同じく約7割の患者さんに、肺が線維化することで硬くなる間質性肺疾患が見られます。症状や画像所見が軽度のまま変わらずに推移する場合もあれば、進行して酸素交換できる正常部分が少なくなって、歩くときに息切れが出て酸素が必要になる場合もあります。
さらに約1割の患者さんには心臓への負担が見られ、歩く時に息切れ、疲労感、動悸《どうき》を感じるようになります。心臓の左に負担がかかる場合は、心臓の筋肉自体が硬くなって動きが悪くなることによるものです。心臓の右に負担がかかる場合は、心臓の右側の先にある肺動脈が狭くなって圧力が上がる状態(肺動脈性肺高血圧)によるものです。
同じく約1割の患者さんで腎臓の中の血管が狭くなり、急な血圧上昇と腎臓機能の悪化が急速に生じて、透析が必要な状態にまで陥る腎クリーゼになることがあります。また、同じく約1割の患者さんで腸の動きが低下し、腹部膨満感や便秘などが出現して重症な場合は腸閉塞になったり、あるいは腸内細菌が繁殖して下痢になったりすることがあります。
血液検査に加え、内臓を調べるためにX線やCT、エコーやカテーテル、内視鏡も用いる
血液検査では、肺、心臓、腎臓などの状態を調べる数値を測定します。特に間質性肺疾患ではKL-6、肺高血圧症ではNT-proBNPあるいはBNPを測定します。また、自己抗体という項目も測定します。自己抗体には、抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体、抗U1RNP抗体の4つが国内で測定可能です。自己抗体ごとにどの内臓が障害されやすいかなど特徴が異なるため、自己抗体の種類を特定することで、それらの特徴をおおよそ予測することができます。
また、内臓の状態を調べるために、肺については動脈血液ガス、胸部X線・CT、肺機能検査、心臓については心電図、心エコー検査、心臓カテーテル検査、食道については内視鏡検査や食道内圧検査、腸については腹部X線、腹部CTなどを行います。
根治的な治療薬がないため、症状の進行を抑えたり軽減させたりする治療が中心
強皮症に対しては現時点では根治的な治療薬がないため、現実的な治療目標は皮膚や内臓の状態の進行を抑え、機能低下を軽減したり、少しでも長く生きられるようにしたりすることにあります。治療には、強皮症全体の経過を変えて進行を抑えたり機能を改善したりする「疾患修飾療法」と、症状を軽減させる「対症療法」があります。また、すべての患者さんに、指先の保温や禁煙含めた日常生活指導も行います。
疾患修飾療法の対象になるのは、(1)びまん皮膚硬化型の発症5年以内で皮膚硬化や内臓の病状が進行する例と、(2)間質性肺疾患が進行する例の二つです。(1)には炎症を抑える薬剤(内服薬や注射薬)、(2)は(1)のほかに線維化を抑える内服薬を使います。
対症療法としては、手の血行障害には血管拡張薬を、肺動脈性肺高血圧症には肺血管拡張薬を、腎クリーゼにはアンジオテンシン変換酵素阻害薬を、逆流性食道炎には胃酸抑制薬を投与します。
強皮症・筋炎先進医療センターを開設し、最先端の治療を提供
当院では、2020年より強皮症・筋炎先進医療センターを開設し、専門医による国際基準での最先端の治療を一人一人の患者さんの病状に応じて実践しています。また、当センターでは院内の各診療科スタッフと良好な連携を取りながら、全身管理を行っています。
さらに、間質性肺疾患や肺動脈性肺高血圧症や、強皮症全体を対象とした新薬の国際的な臨床試験も行っています。現状の全身状態の評価と今後の病状進行の予測を適切に行い、症状や内臓の機能障害の改善、進行抑制を目指した診療を実践しています。
この10年間で約600名の患者さんに受診していただいており、毎月2~3名の紹介患者を受け入れています。全患者さんのうち、びまん皮膚硬化型が約180名(30%)を占め、多くの患者さんが前述したような内臓の障害も伴っており、内服や注射薬を使用したり、他の診療科にも通院したりと全身的な診療を必要としています。
一方、限局皮膚硬化型の患者さんも、手指の血流障害に対する治療を必要とする場合が少なくなく、また、一部で心臓、肺にも障害が出て、治療が必要になる場合もあります。
更新:2026.02.02
