門脈圧亢進症のさまざまな症状と治療
消化器外科

門脈圧亢進症とは?
門脈(もんみゃく)は、胃腸・脾臓(ひぞう)などの血液を集め、肝臓(かんぞう)に栄養を供給する血管です。門脈血は、肝臓で代謝や解毒の作用を受けたのち、肝臓の静脈から大静脈を介して心臓に送られます。門脈の圧が上がり、門脈の流れに停滞が起きることを、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)といいます。門脈から肝臓に流入する血液(求肝性血流)の流れが、門脈圧亢進症により停滞し、次第に行ったり来たりする血流(to and fro性血流)となります。そして、さらに悪化して血流が逆流(遠肝性血流)し、さまざまな症状が出ます(図1)。

門脈圧亢進症の分類、原因
門脈圧亢進症は原因部位により、肝臓を中心に上流(肝前性)、肝臓(肝性)、下流(肝後性)に分けられます。代表的な原因は主に3つあります(図2)。

- ①肝前性:
- 膵炎(すいえん)、腫瘍(しゅよう)、血栓(けっせん)(血液の塊(かたまり))による門脈閉塞(もんみゃくへいそく)。
- ②肝性:
- 肝硬変(かんこうへん)や特発性門脈圧亢進症。
肝硬変の原因は、B型・C型肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝が多いとされています。 - ③肝後性:
- バッドキアリ症候群、右心不全(うしんふぜん)など。
門脈圧亢進症のさまざまな症状
門脈圧亢進症になると、門脈血は食道・胃腸の血管(静脈)を迂回して流れます(側副血行路(そくふくけっこうろ))。迂回路は逆流した血液で膨らみ、食道や胃に血管のこぶ(食道・胃静脈瘤(じょうみゃくりゅう))を形成します。
逆流した門脈血により、脾臓も大きくなります(脾腫(ひしゅ))。脾臓はもともと血小板を壊す働きがありますが、脾腫ではさらに過剰に血小板が壊され、血小板が減少します(脾機能亢進症)。
肝臓で解毒されない門脈血が迂回して全身に流れ、有害物質(アンモニア)が脳に影響して、意識障害を起こします(肝性脳症)。また、肝臓で作られるアルブミンが減ると、腹腔(ふくくう)内の毛細血管より水分が漏れ出し、腹水(ふくすい)となります。
食道・胃静脈瘤が出血した際は、吐血や下血をきたします。出血量が多いときは冷や汗や意識消失の症状が出ます。眼球結膜が黄色くなる黄疸(おうだん)や、腹水による腹部膨満などの症状が、診断の契機となることもあります。
門脈圧亢進症の診断方法
門脈圧亢進症にはさまざまな原因(図2)があり、以下のような検査を組み合わせて診断します。
- ・血液検査:
- 肝臓の状態のチェックや原因疾患の鑑別に用います。原因疾患により検査項目が異なります。
- ・超音波(エコー)、CT、MRI検査:
- 主に肝臓と門脈の状態を確認します。精査のため造影剤を使用することもあります。超音波やMRIでは肝臓の硬さも評価できます。
- ・上部消化管内視鏡検査:
- 食道・胃静脈瘤を確認します。
そのほか、血管造影検査では実際の門脈の流れをチェックしたり、門脈圧を測定したりすることもできます。
門脈圧亢進症の治療法
脾臓の一部の働きを抑える部分的脾動脈塞栓術(そくせんじゅつ)や、脾臓を摘出することで、門脈血を減らして門脈圧を下げる方法があるほか、患者さんの状態に合わせてβ遮断薬を投与します。
門脈圧亢進症の症状に対して、「表」のようにさまざまな治療が患者さんに行われます。患者さんによって門脈血の流れ方や症状はそれぞれ違うため、治療法は患者さんの状態に合わせて選択します。当院では、他院で治療困難とされた門脈圧亢進症に対し多くの治療経験があります。


更新:2025.12.12
