子宮がんと闘う 子宮頸がん、体がん、肉腫について

四国がんセンター

婦人科

愛媛県松山市南梅本町甲

若年者に多い子宮頸がんの治療

子宮頸(しきゅうけい)がんは、最近国内では若い人を中心に増えていて、少子化が叫ばれている中、深刻な社会問題になってきています。子宮頸がんは、がんになる前の病態(前がん病変)がよく分かっているので、検診が有効です。前がん病変や初期の状態で診断された子宮頸がんでは、妊よう性(妊娠して子どもを産めるような機能)を温存することができます。

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図1 子宮がん

進行した子宮頸がんの場合、手術、放射線療法そして化学療法による治療が中心となります。手術は広汎子宮全摘術(こうはんしきゅうぜんてきじゅつ)を行います。この手術は子宮の頸部の周囲を広く摘出するため、術後に排尿障害やリンパ浮腫(ふしゅ)(下肢(かし)のむくみなど)などが起こる可能性があり、体への負担が大きい手術です。最近では、合併症を少なくするような術式の検討や、術後のケアを実践しています。さらに、手術の負担が少ない腹腔鏡を使った手術を導入しています。一方、高齢者や持病で手術が困難な方には放射線治療をお勧めします。手術と放射線治療はどちらも子宮頸がんの治療に効果がありますが、それぞれ特徴があります。病状によっては、手術、放射線療法に化学療法や分子標的薬を組み合わせるなどの工夫が必要です。

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図2 腹腔鏡
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写真1 腹腔鏡手術の様子

さらに子宮頸がんでも、新しい治療法が臨床試験や治験などで開発されてきています。当科では状況により、これらの治療を提案することができ、病状や患者さんの希望によって治療の個別化を実践しています。

婦人科がんで最も多い子宮体がんの治療

子宮体がんは生活様式の変化により急激に増加しています。子宮体がんの多くは、婦人科がんの中では比較的治りやすい病気です。子宮とリンパ節を取り除く手術(リンパ節郭清(かくせい))が標準手術ですが、最近では病状により治療の個別化が可能になってきました。

まず妊娠、出産を希望する方で初期の子宮体がんでは、子宮を残して妊よう性を保つことができるようになってきました。この治療を安全に行うためには、正確な診断と慎重な治療、経過観察など専門的な知識が必要です。

初期の子宮体がんには内視鏡下手術、ロボット手術が実施できますが、中にはたちの悪いタイプの子宮体がんもあり、これらは術前の評価で通常の子宮体がんと区別することが必要です。リンパ節郭清については、術後のリンパ浮腫を引き起こす可能性があり、リンパ節への転移の可能性などを考えながら実施について決める必要があります。

進行がんや一部の悪性度の高い子宮体がんに対しては、がんの広がりに応じた切除範囲の広い手術や追加の化学療法、放射線療法が必要です。

子宮筋腫と区別が難しい子宮肉腫

子宮にできるまれな病気に子宮肉腫(にくしゅ)があります。子宮肉腫がどのようにして発生するのかについて、詳しいことはまだよく分かっていません。治療前に子宮筋腫(きんしゅ)との区別が困難な例があり、手術後に子宮肉腫と診断されることもよくあります。子宮筋腫で肉腫の疑いがある場合は注意が必要で、がんセンターなど悪性腫瘍を専門に取り扱っている施設を受診しましょう。病気の進行が速く、治療の選択肢も少ないのですが、最近では新しい治療法も開発されてきています。まれな病気なので、がん専門病院での治療が勧められます。

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写真2 婦人科のスタッフ

更新:2024.01.25