心療内科 線維筋痛症を和らげる~集団自律訓練法の効果~

中部ろうさい病院

心療内科

愛知県名古屋市港区港明

線維筋痛症を自律訓練法で和らげる

線維筋痛症(せんいきんつうしょう)は、体の広い範囲に原因不明の痛みやこわばりを自覚し、圧痛点(*)を伴う病気です。治療法が確立されていないため、患者さんは日常生活に多くの支障をきたし、生活の質を著しく低下させます。

線維筋痛症の合併症状は、痛みによる不眠とストレスからのうつ状態です。不眠(とうつ)状態は痛みを悪化させ、さらに、痛みが不眠(とうつ)状態を悪化させるという悪循環に陥ります。

自律訓練法(じりつくんれんほう)は、体をリラックスさせるための心理療法です。自律訓練法を行うことにより、精神的苦痛や身体的痛みが緩和され、ストレスによる衝動的行動の減少や、心身の緊張や凝り、不安が和らぎ、蓄積された疲労が回復するなどの効果が認められます。

当科では1990年より、さまざまな病気に対して自覚症状の改善と向精神薬(こうせいしんやく)の減量・離脱を目的に、自律訓練法を集団で行っています。

*圧痛点:指などで圧迫したときに強い痛みを感じる部位

集団自律訓練法の効果について

当科を2005年6月〜2017年7月に受診した線維筋痛症および、疑いのある患者さんについて治療効果を検討しました。

効果の判定は、集団自律訓練法終了後における向精神薬(抗不安薬、睡眠薬など)の内服の有無と、自覚症状の変化を指標にしました。終了後に向精神薬が完全に不要となり、自覚症状が消失した群を“著効(ちょこう)群”、向精神薬を内服しているものの自覚症状が消失した群を“有効群”と設定しました。

さまざまな病気に対して行った先行研究と比較したものの結果を「図」に示します。やや有効(痛みが軽快し、向精神薬が減量した・なくなった)が14例(73.7%)ですが、著効(向精神薬が完全に不要となり、自覚症状も消失)は認められませんでした。

グラフ
図 集団自律訓練法の効果判定

線維筋痛症に対する集団自律訓練法は、新しい試みです。「やや有効」という結果が70%以上の患者さんで認められたことは、不眠の改善や無意識に生じている筋緊張を和らげたと考えられます。

心療内科の特徴

心療内科は、「心でおきる体の病」である心身症や心理的影響の強いストレス病を診断し、治療する診療科です。慢性の体の病気を持っているためにいろいろなストレスを感じている方や、体の具合が悪いのに原因が分からない方にも受診をお勧めします。

当科は、完全予約制で薬物治療が原則ですが、心理検査や集団自律訓練法、カウンセリングなどの心身医学療法も行っています。

更新:2022.03.23