ひしょうさいぼうはいがん

非小細胞肺がん

基礎情報

非小細胞肺がん肺がんに含まれます。

概要

肺にある気管や気管支、肺胞(はいほう/気管支の末端にある小さな袋状の組織)の細胞ががん化した病気が肺がんです。ほかの臓器のがんから転移して発生したものではなく、最初に肺にできるがんのことを指すのが一般的です。

肺がんは周囲の組織に広がりやすく、脳や骨、肝臓やリンパ節に転移しやすい特徴があります。また肺は、大腸や肝臓、乳房などさまざまな部位のがんが転移しやすい臓器でもあり、肺がんは治りにくいがんの一つということもできます。

肺がんは、病理検査による組織の型によって、小細胞肺がんと非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)の2つのタイプに分けられます。60歳以上の男性に多く見られ、すべてのがんの中でもっとも亡くなる人の多いがんでもあります。

図
図:肺と肺胞

症状

初期の肺がんは自覚できる症状がほとんどありません。そのため、検診などで見つかるケースも多く、発見できたときにはがんが進行していることもあるため、毎年の定期的な検査が重要です。進行すると、慢性的な咳(せき)や痰(たん)、胸の痛みや倦怠感(けんたいかん)、体重減少などの症状が現れてきます。痰に血が混じったり、呼吸の際に喉(のど)で乾いた音がする、強い息苦しさを感じるようならがんの進行が考えられるので注意が必要です。最終的には肺に水がたまるほか、肺炎を合併して自力で呼吸をすることが困難になるなど、非常につらい症状を伴うのも肺がんの特徴の一つです。

原因

肺がんの原因はすべてが解明されたわけではありませんが、喫煙習慣が大きく影響すると考えられています。喫煙者の中でも本数を多く吸う人は発症リスクが高く、たばこを吸い始めた年齢が低いほど肺がんになりやすいという統計結果もあります。また受動喫煙によってがんになるリスクが高まることも指摘されています。

そのほか、肺がんはアスベストやラドン、ヒ素、クロロメチルエーテル、ニッケルなどの化学物質に長期間さらされることや、これらの物質に関連した大気汚染によって引き起こされることも知られています。こうした物質を扱う職業の人や、大気汚染のリスクのある地域に暮らす人はより注意が必要といえるでしょう。

検査・診断

肺がんの検査は、最初に胸部X線検査やCT検査などの画像検査を行います。その上で、がんの疑いが強いときには確定診断のための検査を行っていきます。

画像検査(胸部X線検査、CT検査)

実際に肺にがんがあるかどうかを画像検査によって調べます。第一に行うのは胸部X線検査で、患者さんにかかる負荷も少なく簡便に実施できます。X線検査でがんが疑われる異常が見られたときには、病変の大きさや位置などをさらに詳しく調べるために、CT検査を行います。ただし、X線検査では小さながんを見つけるのが難しい場合があるため、発症リスクが高い場合は、早期発見をめざすために最初からCT検査を行うのも有用といえます。

喀痰(かくたん)細胞診検査

痰を採り、その中にがん細胞が含まれているかどうかを調べる検査で、主として気管や太い気管支に発生する早期の肺がんを発見するために役立っています。画像検査と合わせて行われることが多くあります。

気管支鏡検査

気管支に内視鏡(気管支鏡)を挿入して、肺の内部を詳しく調べる検査です。挿入した気管支鏡で肺の組織の一部を採取し、がん細胞があるかどうかを調べる病理検査を同時に行い、確定診断につなげることができます。

腫瘍マーカー検査

肺がんを発症すると体内で値が高くなる腫瘍マーカーの有無を調べるための検査で、血液検査によって行います。肺がんの治療方針を決めていくためにも有効な検査です。

治療

肺がんの治療は、がんの進行の度合いやがんのタイプによってどの治療法がよいかを決定します。治療法は外科手術・放射線治療・薬物療法の3つが柱となり、それぞれの治療を効果的に組み合わせて行う集学的治療(しゅうがくてきちりょう)が積極的に用いられています。

外科手術

比較的早期の段階でがんが見つかった場合には、手術による切除が可能です。手術の方法は、従来は胸部を15〜20cmほど切開して行う開胸手術が一般的でしたが、近年では、胸に数カ所の穴を開け、胸腔鏡という細い棒状のカメラを挿入して行う胸腔鏡下手術が広く行われています。またロボット支援下手術を行う医療施設も最近増えつつあります。

放射線治療

手術は基本的に早期発見の場合しか行うことができず、手術が難しい段階になると放射線治療を実施します。がんを消滅させたり小さくしたりすることを主な目的として行います。

薬物療法(抗がん剤治療・免疫療法)

体内に入った薬は全身をめぐるため、転移しやすいがんである肺がんの治療において、薬物療法は有効です。肺がんには、がん細胞だけを攻撃する分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)が数多くあるほか、免疫によってがん細胞を抑えていく「免疫チェックポイント阻害薬」による治療も効果的です。

更新:2022.08.22