肺炎
基礎情報
概要
肺炎とは、気道から肺に入り込んだ細菌やウイルスなどが肺の中で増殖し、炎症を起こす疾患です。最初は風邪によく似た症状が現れますが、重症化すると呼吸困難になり入院が必要になる疾患で、日本人の死因第5位になっています。高齢者に多い誤嚥性(ごえんせい)肺炎を入れると、老衰以外の死因では第3位となり、70歳以上の人は発症率も命を失ってしまう率も非常に高くなっています。
肺炎は、いくつかに分類されます。原因による分類では、感染性肺炎(細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、非定型性肺炎)と非感染性肺炎(誤嚥性肺炎、薬剤性肺炎など)に分けられます。
どこでかかったかによる分類では、市中肺炎(自宅や会社など日常生活の中でかかったもの)と、院内肺炎(病院に入院して48時間を過ぎた後に発症したもの)に分けられます。そして、感染によってどこにどのような病変が起こるかにより、肺胞性肺炎と間質性肺炎に区別されます。肺胞性肺炎とは、肺の末端にある肺胞が炎症を起こしている状態で、間質性肺炎とは、肺胞を支える間質という組織が炎症を起こしているものです。
新型コロナウイルス感染症による肺炎
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、初期症状は軽症で、発熱や咳など風邪のような症状が見られることがありますが、重症化すると肺炎を発症します。半数以上の場合は症状に対する治療を行うことで徐々に回復しますが、肺炎が悪化し重篤化すると、場合によっては死に至るケースもあります。
原因
多くの場合、肺炎は病原体となる細菌やウイルスが肺に入り込み増殖することが原因となります。肺炎にかかりやすい要因としては、高齢者であること、肺や気管支などの呼吸器に疾患があること、心臓や肝臓・腎臓に疾患があること、糖尿病・悪性腫瘍(がん)・関節リウマチがあること、薬物により免疫が抑制された状態にあること、などがあげられ、発症してしまうと重症化のリスクが高く、命に関わる状態になることも多いとされています。
原因となる細菌としては、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマ、レジオネラ菌、黄色ブドウ球菌、クラミジアなどの微生物などがあげられます。ウイルス性肺炎の原因となるのは、サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどのウイルスがあげられます。
院内肺炎においては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌といった抗菌剤の効果が現れにくい細菌が原因となることが多いとされています。高齢者に多い誤嚥性肺炎は、ものを飲み込む力が衰えることで、細菌が含まれる食べ物や唾液が気道に入ることが原因となります。
症状
高熱、激しい咳(せき)、息切れ、倦怠感(けんたいかん)、鼻水、痰(たん)、喉(のど)の痛み、耳の痛み、炎症が広がることによる胸の痛みなど、さまざまな症状が現れます。重症化すると呼吸が速くなり、呼吸困難、意識が遠のくこともあります。原因によっては、筋肉痛、腹痛、下痢といった症状が出ることがあるとされています。細菌性肺炎では、黄色や緑色をした痰が出ることもあります。総じて症状は風邪と似ていますが、高熱と咳が続く場合は、肺炎を疑って早期に医師による診断を受けることが勧められます。
高熱と咳、緑色の痰が出る肺胞性肺炎は、目立った後遺症もなく完治が見込まれますが、呼吸困難や呼吸不全を起こし、痰が出ない乾いた咳が続く間質性肺炎では、病状が急速に悪化することがあるばかりか、呼吸困難などの後遺症が出る場合があります。
子どもや高齢者では、これらの症状がはっきりと現れないことがあり、高熱が出てただぐったりとしていることもあります。免疫力が低下している高齢者は重症化するリスクが高いため、より注意が必要です。
検査
聴診
肺炎に特徴的な「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)があるかどうかを確認します。
胸部X線検査
肺に炎症が起こっていれば、肺炎特有の白い影が見られます。必要に応じてCT検査も行われることもあります。
血液検査
肺の炎症の程度や血液の中の酸素量を調べるために行われます。
原因を探るための検査
的確な治療を行うために、原因となる細菌やウイルスを調べるための迅速検査(検査キットなどを使った検査)、痰の培養による検査、肺組織の病理検査、尿検査などが行われます。
治療
原因となる細菌やウイルスに対する抗菌剤が処方されます。
軽症の場合は、通院治療や薬剤を服用しながら自宅で安静にすることが勧められますが、症状が重い場合、特に幼い子どもや高齢者は入院が必要となり、点滴で薬剤や水分を補給し、酸素投与で呼吸を楽にします。誤嚥性肺炎の場合は飲食を絶った上で治療を行う必要があります。
抗菌剤が効かないウイルス性肺炎の場合は、発熱や咳を抑える対症療法が行われます。
更新:2022.05.26