PET検査では何がわかるのでしょうか?
研究所画像研究部門
PET(ペット)検査って、なんですか?
PETとは、陽電子放射断層撮像法(Positron Emission Tomography:ポジトロン エミッション トモグラフィ)を略した名称で、放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ:放射線を出す元素)を含む薬剤を投薬して体の中の特定の物質の動きや、代謝、機能を画像としてとらえる検査です。レントゲン検査やCT検査、MRI検査などが形や大きさ、内部の性状を見る検査であるのに対し、PETはそれぞれの部位での物質の取り込みから細胞の性質や活発さを見ることで、病気を評価します。絶食などの前処置があり検査終了まで数時間を要する検査が多いです。また、少量の放射線被ばくはありますが、安心して受けてもらえるように努めています。
FDG-PET検査では何がわかるのですか?
FDG-PET検査は、ブドウ糖に似た薬剤(フルオロデオキシグルコース:FDG)を用いて体内のブドウ糖の取り込みを調べるもので、世界中で最も多く行われているPET検査です。体の中の多くの細胞は、生きていくためのエネルギー源として、ブドウ糖を必要としています。無秩序に細胞分裂を繰り返し大きくなる性質を持っている悪性腫瘍(しゅよう)の細胞は、正常の細胞に比べると多くのブドウ糖を取り込む性質を持っています。FDG-PET検査では、一度の検査で全身のブドウ糖の取り込みを調べることができ、「がん」の広がりや悪性度を評価することが可能となります(図1)。
他の検査では指摘することが困難ながん病変を見つけることが得意な検査ですので、体内の病気の広がりを示すステージ(病期)が2だと思われていた患者さんが、PET検査にてステージ4であることがわかったなど、FDG-PET検査を行うことで4割程度のがん患者さんのステージが変更されるといわれています。また、抗がん剤などによる治療効果を判断したり、治療後の経過観察中に、他の検査では見つけられない再発・転移病変を早いうちに見つけたりすることに役立ちます。このように、FDG-PET検査は、多くの「がん」患者さんの、次の治療方針を決定するために大切な役割を果たす検査です。
がん病変以外に、感染症や強い活動性の炎症病変も、白血球などの細胞が活発に活動するために多くのブドウ糖を必要とします。そのため、FDG-PET検査は、心臓サルコイドーシスや高安病(たかやすびょう)、巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん)などの大型血管炎といわれる病気の評価にも用いられ、保険適用となっています。
当院のPET検査室の特徴は?
当院では、施設内の研究所でPET薬剤を作ることのできる設備があり、薬剤メーカーからの供給のない薬剤を用いた検査も行っています。
脳ガスPET検査は、脳血管障害に対するバイパス手術の決定や脳梗塞(のうこうそく)の再発リスクの判定のために有用な検査です。保険適用でありながら薬剤合成と検査施行のために大掛かりな設備と熟練したノウハウが必要なため、近畿では数施設しか行うことのできない検査を当院では施行可能です。
当院は京都大学や、京都薬科大学、理化学研究所、量子科学技術研究開発機構などと連携し、保険診療以外にも次のような新しい薬剤や検査法の開発、基礎的・臨床的研究を行っています。
- がんの診断薬として、FDG-PET検査の弱点を補う新しいアミノ酸製剤(11C-MeAIB:メチルエーアイビー)の開発とその診断方法・活用について研究しています
- 超高齢社会の課題である認知症の発症前の診断や危険因子の探索として、アルツハイマー病の脳内でもの忘れの症状が現れるよりも前に出現するアミロイド(*)や、タウ蛋白(たんぱく)の蓄積を調べる製剤(18F-FPYBF-2、18F-PM-PBB3)を用いた研究をしています(図2)
- 独自のアミロイド製剤(18F-FPYBF-2)を用い、全身のさまざまな臓器に障害を起こすことで知られるアミロイドーシスの新たな評価方法についても検討を行っています
当院のさまざまな診療科と連携し、県民の健康のために診療と密接にかかわるPET検査を行うとともに、最新の研究結果を国内外に向けて発信しています。
* アミロイド:タンパク質の立体構造が変化して凝集したもの。体の中で蓄積して様々の病気の原因となる。アルツハイマー病の脳内では、βアミロイドといわれるものがたまっている。
FDG-PET検査は多くの腫瘍の評価に役に立ちますが、万能ではありません。腫瘍の種類によってはあまり有用ではないことや、良性の病変や正常の臓器にもFDGが多く取り込まれることもあり、さまざまな情報を総合して画像を評価します。気になることがある場合には、スタッフにお訊ねください。
更新:2024.10.24