なぜ、糖尿病は怖い病気といわれるのですか?
糖尿病・内分泌内科 循環器内科 腎臓内科
糖尿病は怖い病気なの?
糖尿病の一番多い症状は「無症状」です。一見おとなしそうにみえて、実はたちが悪いことが糖尿病の一番怖いところです。治療の中心も食事療法など、日常生活で地道な努力を継続することが必要であり、つい治療を中断してしまいがちなところもやっかいです。合併症や併存症をこじらせてしまうと、健康をそこねたり、致命的になることもあります。
糖尿病の別名は、サイレントキラー(静かなる殺し屋)です。糖尿病そのものは、何年間も無症状であることがほとんどです。最も多い2型糖尿病の場合には、血糖を下げるホルモンであるインスリンの作用不足が徐々に進行し、血糖が高い状態が何年間も続きます。
この段階では、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を測らない限りは糖尿病と診断できず、知らないうちに慢性の血管合併症(網膜症、腎症(じんしょう)、神経症、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳梗塞(のうこうそく))や併存症(骨粗(こつそ)しょう症(しょう)、歯周病、認知症、がんなど)が進行して、後戻りができなくなります。
急性の合併症には、高血糖に伴う意識障害や感染症などがあります。高齢者や長期間病気にかかっている方では、認知症が進行して、食事療法や運動療法の継続が困難となりがちです。患者さんによっては、インスリン注射や血糖の測定などの手技が行えなくなり、治療が困難になることも多々あります。
当院では、血管合併症が進行している患者さんやがん患者さんなど、合併症や併存症で治療をすでに受けている方も多く、糖尿病も1型など、インスリン不足が顕著で血糖値が乱高下しやすい症例を数多く診てきました。このように多様で複雑な症例についての豊富な診療実績を踏まえた上で、個々の患者さんに応じた治療を行うように心がけています。
どうやって治療したらいいの?
糖尿病は検査の病気とも呼ばれ、病気をこじらせないために、積極的に検査を行い、早期発見・早期治療につなげることが極めて重要です。
現在、治療薬は種類が増えて、一部の薬品では週1回の内服や注射も使えるようになってきています。また、低血糖を起こしにくく合併症の予防効果が高いもの、腎機能が悪化しても使用しやすい薬なども増えてきました。このように個々の患者さんの病状や社会的背景にあった薬剤を取捨選択して、薬物治療を受けてもらうことになります。
合併症・併存症を含めたトータルケアを行うためには、薬物治療だけではなく、チーム医療によるサポートを受けることも大切です。
当院では、管理栄養士による栄養指導や、認定看護師によるセルフケア指導、腎症予防、フットケア指導なども行っています。さらに介護、在宅医療、行政などの地域ネットワークとも緊密に連携して、より良い治療を受けられるように努めています。
更新:2024.10.07