唾液腺腫瘍
概要
唾液腺腫瘍は、口の中やあごの周辺にある唾液腺に発生するがんです。唾液腺には、耳の前あたりにある耳下腺や、あごの下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺などがあります。唾液は口の中を湿らせ、食べ物を飲み込みやすくし、消化を助けるはたらきをします。唾液腺腫瘍は、これらの場所に「しこり」ができる病気で、多くは良性ですが、一部に悪性(がん)が含まれます。

唾液腺腫瘍の原因
唾液腺腫瘍は、ほかのがんと同じく、細胞の遺伝子に変化が起こり、異常な細胞が増えることによって発生すると考えられています。しかし、具体的にはっきりとわかっている原因は多くはありません。いくつかの要因が関係しているといわれています。
- 1.放射線被ばく
- 過去に頭や首の部分へ放射線治療を受けた人は、唾液腺腫瘍になるリスクがやや高まると報告されています。
- 2.遺伝的要因
- 一部のがんには、家族の中で似たがんが多く発生するケースがあり、遺伝子の異常が影響している可能性があります。しかし、唾液腺腫瘍に特異的な遺伝子変化や家族性の傾向は、他のがんほど明確に解明されていません。
- 3.職業や環境
- ゴムや金属など、特定の化学物質に長期間さらされる職業に就いている場合に、唾液腺がんが多く見られるとの報告があります。ただ、はっきりした因果関係は研究段階です。
- 4.その他の要因
- 喫煙やウイルス感染などが関係する可能性も指摘されていますが、まだ確立した学説はありません。
唾液腺腫瘍の症状
唾液腺腫瘍は、比較的ゆっくり進行するタイプが多いとされ、症状が出にくいまま過ごす人もいます。しかし、次のようなサインがみられる場合があります。気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。
- 1.しこりや腫れ
- 耳下腺やあごの下などに、痛みを伴わないしこり(こぶ)ができることがあります。痛みがなくても、しこりが徐々に大きくなるようなら注意が必要です。
- 2.顔面神経の麻痺(まひ)
- 唾液腺がある耳の周辺には顔面神経が通っており、がんが神経を圧迫したり、浸潤(*1)したりすると、顔の筋肉が動かしにくくなる場合があります。具体的には、まぶたがうまく閉じられない、口角が下がるなどの症状が出ることがあります。
- 3.痛みやしびれ
- 腫瘍が大きくなると、周囲を圧迫することで痛みやしびれが発生することがあります。咀嚼(そしゃく)(*2)や会話に支障が出る場合もあります。
- 4.口の中やのどの違和感
- 舌下腺や小さい唾液腺がある口の中にがんができると、食事をしているときやつばを飲み込むときに違和感を覚えることがあります。
最も大切な症状は、痛みのない、硬いしこりが耳の下やあごの下にできることです。良性腫瘍であっても放っておくと徐々に大きくなり、稀に悪性化することもあるため、痛くないから放っておくことはせず、早めに専門医(耳鼻咽喉科)を受診することが大切です。
※1:がんがしみ込むように広がること
※2:食べ物をかむこと
唾液腺腫瘍の検査・診断
唾液腺がんの疑いがある場合、専門医は以下のような検査を行って診断を進めます。
- 1.視診と触診
- 医師が直接、しこりの大きさや硬さ、場所などを目と手で確認します。痛みの有無やしこりの動きやすさを調べます。
- 2.画像検査
- CT検査(コンピューター断層撮影検査):X線を使って体の内部を断面図のように撮影し、腫瘍の位置や大きさ、周辺組織への広がりを調べます。
- MRI検査(磁気共鳴画像検査):磁気と電波を使って体内の詳細な画像を得る方法です。神経や軟部組織がはっきり映るので、顔面神経との関係なども確認できます。
- 超音波検査:超音波を当てて体内の様子を観察します。しこりの状態を簡易的に調べるときに用いられます。
- 3.細胞診・組織検査
- 腫瘍やしこりに細い針を刺して細胞や組織を採取し、がん細胞の有無を確認します。これにより、悪性か良性か、がんの種類などを詳しく調べます。
- 4.血液検査
- がんの診断に直接使われることは少ないですが、体全体の健康状態を確認するために行われることがあります。
唾液腺腫瘍の治療
唾液腺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や大きさ、場所、患者さんの健康状態などによって異なります。主に以下の方法が組み合わされることが多いです。
- 1.手術療法
- 腫瘍を外科的に取り除く方法です。唾液腺がんの場合、耳下腺や顎下腺など、発生した部位によっては顔面神経を傷つけないように注意しながら手術が行われます。ただし、がんの広がりが神経に及んでいる場合、神経の一部をやむを得ず切除することもあります。
- 2.放射線治療
- がん細胞を死滅させるために、高エネルギーの放射線を照射する方法です。手術後に、がんの再発リスクを下げる目的で行われることが多いです。腫瘍の大きさや場所によっては、手術前に放射線治療を行い、腫瘍を小さくしてから手術に臨む場合もあります。
- 3.化学療法
- いわゆる抗がん剤(こうがんざい)を使う治療です。唾液腺がんでは、進行度や腫瘍の種類によっては放射線治療との併用が考えられます。しかし、唾液腺がんに特に効果が高いとされる抗がん剤の選択は、まだ研究段階の部分もあります。
- 4.標的療法・免疫療法
- 最近では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、新しい治療法の研究も進められています。適用が認められているタイプの唾液腺がんに対しては、これらの治療法を組み合わせることがあります。
ただし、唾液腺腫瘍は、細胞診だけでは、良性か悪性かの最終的な判断が難しいことが多々あります。そのため、腫瘍を組織ごと取り除いて詳しく調べることと、再発を防ぐことの両方を目的として、手術による摘出が治療の第一選択となるのが一般的です。
更新:2026.09.26


