頭頸部腫瘍ー唾液腺腫瘍の治療

済生会吹田病院

耳鼻いんこう科

大阪府吹田市川園町

唾液腺腫瘍とは?

唾液腺(だえきせん)には、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3対の大唾液腺と、口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)粘膜表面に多数散在する小唾液腺があります。大唾液腺で作られた唾液は、導管を通り口腔内に分泌されます。分泌される唾液には、食物を消化し、口腔内を湿らせ、清潔に保つ作用などがあります。

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図 唾液腺の構造

唾液腺の代表的な疾患としては、流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)(おたふくかぜ)、小児反復性耳下腺炎、シェーグレン症候群、唾石症(だせきしょう)、唾液腺腫瘍(だえきせんしゅよう)などが挙げられます。

唾液腺腫瘍病理の特徴

唾液腺腫瘍は、ほかの臓器にできる腫瘍と比べ組織の種類がさまざまです。頻度(ひんど)の高い唾液腺腫瘍は順に、多形腺腫(たけいせんしゅ)、ワルチン腫瘍、基底細胞腺腫、粘表皮(ねんひょうひ)がん、腺様嚢胞(せんようのうほう)がん、腺房細胞(せんぼうさいぼう)がん、良性の多形腺腫(たけいせんしゅ)から発生する多形腺腫由来(ゆらい)がんです。

唾液腺腫瘍診断の検査には、唾液腺腫瘍の広がりが分かるMRI、組織型(良悪性)を推定できる頸部(けいぶ)エコー、エコーガイド下穿刺細胞診(せんしさいぼうしん)などがあります。当科では初診日に、エコーガイド下の穿刺細胞診まで行うことができます。

唾液腺腫瘍の特徴としては次のような点が挙げられます。

  • 唾液腺腫瘍の大部分は耳下腺に発生し顎下腺、小唾液腺に10%程度、舌下腺には数%
  • 耳下腺に発生する良性腫瘍の50%が多形腺腫
  • 顎下腺、小唾液腺に発生する多形腺腫の発生率はともに耳下腺の20分の1程度で、舌下腺ではさらに少ない
  • 悪性腫瘍は耳下腺では10%程度ですが、顎下腺では約半数、小唾液腺では80%が悪性です。

唾液腺腫瘍の初発症状は耳下部、顎下部の腫瘤(しゅりゅう)ですが、唾液腺腫瘍の中でがんを疑う症状としては、痛みがある、腫瘍が硬く周囲と癒着し動かない、すでに顔面神経麻痺(まひ)がある(耳下腺腫瘍の場合)、腫瘍周辺皮膚の変色などがあります。

唾液腺腫瘍の治療方針

良性腫瘍でも基本的には手術で、特に多形腺腫はがん化の可能性があり手術を勧めます。がんの場合も手術が主体で、耳下腺がんで悪性度の高いものは顔面神経を含めた拡大全摘を行い、悪性度の低いものは顔面神経の温存に努め、リンパ節転移がある場合は頸部郭清(けいぶかくせい)を追加します。

唾液腺がんの術後の放射線治療の適応としては、高悪性のがん、浸潤性(しんじゅんせい)のもの、頸部リンパ節転移を認めるもの、神経浸潤を認めるものなどが挙げられます。唾液腺がんに有効な化学療法(抗がん剤)は現在なく、あくまで補助的な役割です。

更新:2024.01.25