めにえーるびょう

メニエール病

概要

厚生労働省難治性疾患克服研究事業(なんちせいしっかんこくふくけんきゅうじぎょう)の調査研究班が行った、平成20(2008)年の糸魚川(いといがわ)市調査から、メニエール病の患者数は全国で4万~6万人と推定されます。男性よりも、女性の方がやや発症しやすく、発症する年齢は働き盛りの30~40歳代であるとされています。

メニエール病の代表的な症状はめまいですが、めまいは脳などの疾患でも現れるため、診断が難しい疾患と認識されています。耳鼻咽喉科の疾患では、指定難病の遅発性(ちはつせい)内リンパ水腫(難病センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/148)や、前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)、良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい症などが、メニエール病と間違えられやすい疾患の代表例です。めまいや耳の違和感を自覚したら、まず耳鼻咽喉科を受診し、確定診断を行うことが治療への第一歩です。

図
図:耳の構造

原因

メニエール病は、耳の奥にある内耳(ないじ)に過剰なリンパ液がたまる「内リンパ水腫」によって引き起こされる疾患です。内耳は平衡感覚と密接なかかわりを持っているため、ここに異常が生じることで、ふらつくようなめまいを感じます。なぜ内リンパ水腫が起こるかについては、生まれつきの内耳構造の異常やアレルギーなど、いくつかの要因は考えられますが、はっきりとは解明されていません。一般的なメニエール病に加え、症状などによってメニエール病にはいくつかの種類があります。

メニエール病の種類

「蝸牛型(かぎゅうがた)メニエール病」は、そのほとんどの原因が内リンパ水腫とされていますが、めまいの症状が見られないタイプです。一般的なメニエール病に移行することが多いものの、早期に治療を開始すれば完治も見込めます。

「前庭型(ぜんていがた)メニエール病」は激しいめまいを繰り返すのが特徴で、原因としては内リンパ水腫のほか、内耳の血流障害が考えられます。

一般的なメニエール病は片側の耳に発症しますが、両側の耳に同じような症状が現れるのが「両側性(りょうそくせい)メニエール病」です。このタイプは進行が早いため、早めの治療が肝要となります。

症状と検査

メニエール病で感じるのは、目が回るような回転性のめまいです。これは横になっても治まらず、数時間続くこともあります。耳鳴りや低音が聞き取りにくい難聴、吐き気などもよく見られる症状です。

これらの症状がいったん治まっても、治療を行わなければ、多くの場合、再発を繰り返します。その結果、初期には低音域だけだった難聴が、高音域にまで及ぶことも珍しくありません。

メニエール病の診断を下すためには、平衡感覚を調べる検査やどの音域がどの程度聞き取りにくいかを調べる聴力検査、特殊な検査用眼鏡を用いて眼の揺れを調べる眼振(がんしん)検査、リンパ液の排出を促す利尿剤を投与して聴力の変化を観察するグリセロールテストなどが行われます。頭蓋内(とうがいない)の別の疾患と鑑別するために頭部CT検査や頭部MRI検査などで画像診断を行うこともあります。

治療

メニエール病と確定した場合の治療は、めまいなどの症状を緩和することと、内リンパ水腫の改善が目的となります。多くが薬物療法で、炭酸水素ナトリウムなどをはじめとした抗めまい薬や吐き気止め、自律神経調節薬などが処方されます。内リンパ水腫を改善するためには利尿剤やステロイド薬が有効とされています。

薬物療法でめまいの症状が改善されない場合には、手術が検討されます。めまいの対症療法として、鼓膜に注射針を刺して抗菌剤を直接注入する「鼓室内注入術(こしつないちゅうにゅうじゅつ)」が選択される場合もあります。

手術にはいくつかの方法がありますが、聴力を損なうリスクが少ない手術として、「内リンパ嚢開放術(のうかいほうじゅつ)」と「前庭神経切断術(ぜんていしんけいせつだんじゅつ)」が挙げられます。

内リンパ嚢開放術(のうかいほうじゅつ)は、内リンパ水腫を起こしている嚢を切開して、たまっているリンパ液を抜き取ります。前庭神経切断術(ぜんていしんけいせつだんじゅつ)は、平衡感覚をつかさどっている前庭神経を切断する方法です。

ただし、メニエール病の治療においては、手術は最終手段ともいえるもので、積極的に行われるものではありません。早期の段階から治療を始めれば、薬物療法でも症状の軽減は期待できます。

メニエール病の予防には、精神的なストレスや肉体的な疲労をためない、睡眠を十分にとる、塩分のとり過ぎに注意するといった生活習慣の改善に取り組むことが効果的です。

更新:2022.05.26