先天性難聴
概要
先天性難聴とは、生まれつき難聴を持っている状態のことを指します。約1,000人に1~2人の割合で発生する、最も多い先天性異常です。
生まれて間もない時期に、産科などで行われる新生児聴覚スクリーニング検査(ふるい分けの検査)で早期に見つけることが可能で、スクリーニング検査で「要再検」と判定された場合には、精密検査機関で再検査を行い、難聴があるかどうかをはっきりさせる必要があります。
原因
遺伝子異常、胎生期(お母さんのお腹(なか)の中にいる時期)の母体感染などが主な原因です。
検査・診断
乳児は大人のような聴力検査ができないため、ABR(聴性脳幹反応検査)を実施します。ABR(聴性脳幹反応検査)とは、音は最終的には脳で認識されるため、脳波を使って行う聴こえの検査のことです。ABRの結果、両耳に、ある程度以上の難聴があると診断された場合、そのままではことばの獲得が難しくなります。
治療
両耳ともに、ある程度の難聴があると診断された場合、「聴覚補償」と「言語療育」が必要になります。
聴覚補償
補聴器を用いて音を大きく増幅して入れてあげ、聞こえにくい耳に対し、音を補います。
言語療育
音遊びなどで積極的に音を入れてあげたり、絵やサインなどの視覚情報とともに積極的にことばを入れてあげます。生まれて6か月ぐらいから療育を始め、ことばの獲得を含めたコミュニケーション力の育成をしていきます。
また、聴覚補償や言語療育と並行して、画像検査や遺伝子検査といった、難聴の原因精査や聴力検査を実施します。聴力検査は、成長に伴って実施できる検査が増え、7~12か月になるとCOR(条件詮索反応聴力検査)などで、音の高さごとの聴こえを調べることができます。
人工内耳の手術
補聴器を使っても十分な聴こえが得られない場合には、人工内耳の手術を行うこともあります。人工内耳の手術は1歳、体重8㎏以上から可能で、補聴器では効果がなく、以前はことばの獲得が難しかった重度の難聴のこどもたちでも、ことばの獲得ができるようになってきました。
人工内耳とは、音声を電気信号に変換し、聴神経を電気刺激することで聴覚を取り戻します。人工内耳は、手術で耳の後ろに埋め込む受信装置と、音を集めて受信装置に送る体外部から成ります。体外部のマイクで集めた音は電気信号に変換され、その信号が送信コイルから皮膚の下にある受信装置に送られます。受信装置に伝わった信号は、内耳に埋め込まれた電極から聴神経を介して脳へ送られ、音として認識されます。
更新:2022.08.22