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末梢動脈疾患(PAD)

概要

末梢動脈疾患(PAD)とは、血管の内側にコレステロールなどがたまって、血液の流れが悪くなることによって動脈硬化が進み、主に足の動脈の血液の流れが悪くなる、あるいは詰まってしまうことで引き起こされる疾患です。

以前は、閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症(ASO)、あるいは下肢慢性動脈閉塞症という病名で知られていましたが、近年はより広い概念である末梢動脈疾患と呼ばれるようになりました。閉塞性動脈硬化症のほかに、難病に指定されているバージャー病(ビュルガー病)(難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/170)なども含まれますが、末梢動脈疾患のほとんどは閉塞性動脈硬化症であるといわれています。

末梢動脈には、両腕・両足の動脈、腹部の内臓動脈、頭部へ血液を送る頸動脈など、重要な動脈がたくさんあります。これらの血管に動脈硬化が起こることで引き起こされる疾患ですから、悪化すると足に潰瘍(かいよう)ができたり、壊死(えし)したりすることもあり、早期の診断や処置が重要とされます。

原因

末梢動脈疾患を発症する主な原因は、アテローム性動脈硬化です。血管に余分なコレステロールがたまってアテローム=粥(かゆ)状の塊になり、盛り上がって硬くなることで血管を狭くしたり血流を止めてしまったりします。動脈硬化が起こる要因には、加齢、喫煙、運動不足、肥満、
高血圧などの生活習慣が大きく関わっていると見られています。

動脈硬化の状態になり血液の流れが悪くなると、その先の筋肉や臓器が酸素不足の状態になり、栄養も十分に届かなくなります。末梢動脈疾患は血管の疾患ですが、全身どこの動脈でも起こる可能性があり、重篤な疾患の発症のきっかけとなることもあります。

図
図:動脈硬化の進行

症状

末梢動脈疾患の症状は、フォンテイン分類という方法でⅠ度からⅣ度に分けられます。足に発症した場合の分類は以下の通りです。ただし、高齢者や糖尿病患者はこれらの症状を感じにくい場合があり、注意が必要です。

Ⅰ度

無症状、足のしびれ・冷感(冷たく感じる)、皮膚が青白い、など。高齢者の場合はほかの疾患があることも多いため、それを考慮に入れて診断されます。

Ⅱ度

間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれる、特徴的な症状が出ます。歩くときに、ふくらはぎやお尻、太ももがしびれたり、締め付けられるような痛みを感じたりしますが、少し休むとまた歩けるようになる状態です。検査においても、実際に歩いてみて間欠性跛行があるかどうかが調べられます。

Ⅲ度

安静時疼痛(あんせいじとうつう/じっとしていても足が痛む状態)の症状が出ます。動かなくても刺すような痛みが続き、足の小さなけがも治りにくくなっている状態です。

Ⅳ度

動脈が詰まって足の指先まで酸素や栄養分が届かないため、少しの傷で足の指先に潰瘍ができたり、壊死が起こったりします。

検査

まずフォンテイン分類[Ⅱ度]の症状である間欠性跛行があるかどうかを問診します。その上で、次の検査を行います。

ABI検査

両腕両足の血圧の比を測定することで、血液の流れを調べます。両足の血圧を両腕の血圧で割った数値がABI(足関節上腕血圧比)で、この比率で動脈が狭くなっている度合いを判定します。

画像検査

超音波検査、造影CT検査、MRI検査などで動脈が狭まっている、あるいは詰まっている状態を調べます。

治療

フォンテイン分類に基づき、治療方針が決められていきますが、動脈硬化を起こしている原因となる疾患がある場合は、その治療も併せて行われます。

Ⅰ度の場合

動脈硬化を起こさないための生活改善が中心となります。たばこを吸う人は禁煙が絶対的な条件です。ウオーキングなどの運動療法もとられます。

Ⅱ度の場合

基本的には薬物治療が中心となります。動脈硬化高血圧を防ぐための薬物治療が行われます。改善されない場合は手術も検討されます。

Ⅲ度の場合

動脈硬化が起こっている部分に対して、カテーテル(柔らかい細い管)を足などから入れて到達させ、狭くなった血管を広げる血管内治療が行われます。また症状に合わせて、詰まった部分を取り除く血管内治療、詰まった血管を迂回するバイパス手術などが検討されます。

Ⅳ度の場合

潰瘍や壊死している部分に対する外科的治療が行われます。足の切断が必要となる場合もあります。

更新:2022.08.22