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鼠径ヘルニア

概要

鼠径ヘルニアは、太ももの付け根(鼠径部)に腸などが飛び出してポコッと膨らみができるもので、多くの場合、おなかに力が入ると出てきて、あおむけに寝たり、押したりすると引っ込みます。体の組織や臓器が飛び出した状態をヘルニアといいますが、腸や脂肪、膀胱、女性の場合は卵巣の場合があります。鼠径ヘルニアは、場所や大きさなどに個人差のある疾患ですが、腸が出てしまうことが多いため、脱腸(だっちょう)とも呼ばれています。

年間およそ12万人以上が手術を受けている、子どもと60歳代以降に多い疾患です。急激に悪化することはありませんが、鼠径ヘルニアの部分が硬くなっている、押すと痛い、横になっても引っ込まないといった場合には、ヘルニアの部分に腸が挟まって壊死(えし)するなどの危険性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。

鼠径ヘルニアには、できる場所によって3つのタイプに分かれます。

外鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの中でもっとも多いタイプで、8〜9割が男性といわれています。
内鼠径ヘルニア
内股(鼠径の中央に近いところ)にできるヘルニアです。
大腿(だいたい)ヘルニア
大腿部から下肢につながる血管の脇から臓器がはみ出すヘルニアで、女性に多い疾患です。

腹部にできるヘルニアには、ほかにもあります。

図
図:鼠径ヘルニアの種類

原因

鼠径管は、出生時に男児の体内から睾丸(こうがん)が下りてくる通り道であるという先天的な理由から、鼠径ヘルニアは男性に多く見られます。女性の鼠径管には子宮を固定する靱帯(じんたい)が通っています。

子どもの鼠径ヘルニアは、胎児のときに自然に閉じるはずの腹膜の穴が閉じないことが原因ですが、成人の鼠径ヘルニアの場合、後天的な原因、つまり加齢による発症が多いことがわかっています。筋膜や腱膜(けんまく)という筋肉の外側の組織がゆるんで起こるケースがほとんどで、力仕事など、おなかに力を入れることが多い、肥満、便秘体質、喫煙、喘息などでよく咳(せき)をする、出産経験が多い、といった方がなりやすい疾患です。

症状

鼠径部に小さくて柔らかい膨らみが現れるのが典型的な症状です。おなかに力を入れると出っ張り、横になったり、手で押し戻したり、力を抜いたりすると引っ込みます。痛みが伴わないため、人に指摘されて初めて気づく場合もあります。初期に2〜3cm程度だった膨らみは、長い時間をかけて大きくなりますが、中には大きさが変わらない人もいます。

ヘルニアの部分を触ると痛い、硬い、押しても戻らないというときには注意が必要です。非常にまれですが、ヘルニアの部分に腸などの組織が挟まって、血流が途絶え、腸に穴が開いて腹膜炎や腸閉塞を起こしたり、腸の一部が壊死したりする可能性があります。こうした状態を嵌頓(かんとん)といい、激しい腹痛、嘔吐(おうと)、発熱などの症状が現れ、ヘルニアの手術の前に、小腸をつなぎ直す緊急手術が必要になります。

検査

鼠径ヘルニアの特徴的な膨らみがあるかどうか、いつからどのような症状があるのか、問診、視診、触診によって診断します。ヘルニアは、大きさ、できた場所、病態など、個人差が大きく、ほかの病気との鑑別診断を行う必要もありますから、超音波検査やCT検査を行って、患部を詳しく観察します。

治療

ヘルニアの治療は、手術が基本です。弱くなって臓器や組織がはみ出してしまった筋膜の部分を、メッシュと呼ばれる人工の膜でふさぐ方法が主流です。この方法は、鼠径ヘルニアに関する国際ガイドラインでも推奨されており、以前採用されていた筋膜を縫い縮める方法に比べると、感染率、再発率ともに減少しています。

腹腔鏡手術

腹部に穴を開けて内視鏡の一種である腹腔鏡を挿入して行う方法です。傷が小さいので回復にかかる時間も短いですが、全身麻酔で行います。

従来の切開法

腹部を3〜4cm程度切開して行う方法です。手術にかかる時間が短く、局所麻酔で行います。腹腔鏡手術より費用が安いというメリットがあります。

予防

筋膜の内側にある筋肉を鍛えても、ヘルニアの予防にはなりません。規則正しい生活を心がけ、生活習慣を改善することが大切です。肥満を解消して、水分をたくさんとり、便秘にならないようにします。また、禁煙や節酒も効果的です。

手術治療を受けた場合、術後1週間ほどで日常生活に戻れますが、3週間程度は重いものを持つなど、腹圧のかかる動作は制限してください。術後の再発の可能性は1%以下といわれています。以前と同じようにおなかに負荷がかかる生活を続ければ、別の場所にできる可能性もありますから、注意が必要です。

更新:2022.05.16

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