しぼうせいかんえん

脂肪性肝炎

概要

脂肪肝とは、肝臓内に脂肪が蓄積した状態のことです。以前から多量にアルコールを飲む人が脂肪肝からアルコール性肝炎になりやすいことはよく知られ、積極的に治療されていました。一方、飲酒歴のない人、またはほとんど飲酒しない人でも同様の脂肪肝が起こることがあると知られるようになったのは、日本では2000年代になってからです。

アルコールを除くいろいろな原因で起こる脂肪肝を総称して「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」と呼び、肝臓内に脂肪が沈着するのみで改善しやすい「単純性脂肪肝」と、放置すると線維化が進行して肝硬変や肝がんとなる危険性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」に分けられます。

日本にはNAFLDの患者さんが約1000万~2000万人いると推定され、そのうち10~20%程度はNASHに進行する可能性があると考えられています。

フローチャート
フローチャート:脂肪肝の分類

原因

アルコール性脂肪性肝炎の原因は、アルコールの摂取です。アルコールを過剰摂取する人の約90%が脂肪肝になるとの報告もあります。そこから30~40年かけて肝硬変へと至り、肝細胞が線維化することで肝硬変になることもあります。

アルコールをほとんど飲まない人に起こるNAFLDの原因には、肥満、糖尿病脂質異常症高血圧といった生活習慣病のほか、睡眠時無呼吸症候群、多嚢胞(たのうほう)卵巣症候群、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症などの病気、膵頭(すいとう)十二指腸切除術、空回腸バイパス術などの手術後の中心静脈栄養、特定の薬剤などがあります。

単純性脂肪肝からNASHへ進行する原因については、はっきりとは解明されていません。極端な食事制限など無理なダイエットをした人も「低栄養性脂肪肝」と呼ばれる脂肪肝になることがあります。日本人は欧米人と比べて、肥満の基準を満たしていない人が脂肪肝を発症する割合が高いため、注意が必要です。

症状

肝臓は再生能力に優れ、ダメージを受けても残りの細胞が機能を維持できることから、異常があっても気づきにくく、肝機能の異常値は健康診断や人間ドックで発見されることが多いといえます。

脂肪性肝炎も初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。ただ、脂肪肝になると血液がドロドロになって血流が悪くなり、全身の細胞に酸素や栄養分が補給されにくくなります。そのため、疲れやすい、体がだるい、肩がこる、頭がボーッとするといった症状が出ることもあります。さらに肝線維化が進行し、肝硬変へと移行すると、黄疸(おうだん)や強いかゆみ、食欲の低下、むくみなどの症状が見られるようになってきます。

検査・診断

脂肪肝の検査では、血液検査、超音波検査、CT検査などが行われます。血液検査では、血液を採取し異常値がないか検査します。超音波やCTの画像では、脂肪がたまった部分が通常よりも白く光って見えるため脂肪肝を確認することができます。肝障害を引き起こすほかの病気がないかを調べることも検査の目的になります。

現在、NASHの診断を確定する方法は、肝生検(肝臓の一部を針で採取して病理診断を行う検査)のみとなっています。しかし、肝生検は体に負担がかかることから、体にやさしく簡便に肝線維化を調べるため、超音波でしこりの硬さを画像化するエラストログラフィが開発されています。その一つであるフィブロスキャン検査では、肝臓の線維化と脂肪沈着の両方を同時に測定でき、NAFLDとNASHの診断に有用です。また、血液検査などのデータを組み合わせて評価するスコアリングシステムという手法も開発されています。

治療

脂肪性肝炎にはまだ確立した治療法がありませんが、できるだけ進行を抑えて肝硬変、肝がんへと移行させないことが大切です。アルコール性脂肪肝の場合、まずはアルコール摂取量を減らすことが第一になります。NAFLDの場合、食事や運動など生活習慣の改善を行い、体重を減らす必要があります。糖尿病脂質異常症高血圧などを合併している場合は、それらをしっかり治療することで脂肪性肝炎も改善していきます。

肝臓についた脂肪は比較的落としやすく、脂肪肝の段階なら健康な状態を取り戻すこともできます。ただし、一時的に脂肪が減っても、生活習慣が乱れた状態に戻れば脂肪肝は再発してしまいます。適切な食事や運動を継続し、健康管理に気をつけて再発を防ぎましょう。

更新:2022.05.16

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