せんてんせいしんぞうびょう

先天性心臓病

概要

先天性心疾患は生まれつき心臓に障害を持って生まれてくる病気です。

治療の進歩によって、小児期に先天性心臓病が見つかり手術や治療受けた人の内、9割以上の人が成人期(18歳以上)を迎えられるようになっています。その結果、成人の先天性心臓病患者数が急増しています。

成人期に問題となる先天性心臓病の代表的なものは、表の通りです。

疾患 問題点
心房中隔欠損症 右心不全
三尖弁閉鎖不全
僧帽弁閉鎖不全
肺高血圧症
心房細動、心房粗動
心房中隔欠損 大動脈弁尖逸脱による大動脈弁閉鎖不全
バルサルバ洞動脈瘤
ファロー四徴症術後 肺動脈弁逆流
右室流出路の狭窄
肺動脈狭窄
右心不全
心房頻拍、心室頻拍
大動脈縮窄症術後 縮窄遺残による高血圧
完全大血管転位症
(動脈スイッチ手術後)
未梢肺動脈狭窄
大動脈弁閉鎖不全
冠血流障害
エブスタイン奇形
(術前・術後)
三尖弁閉鎖不全
心房頻拍
右心不全
右室の拡大による左心不全
単心室疾患
(フォンタン手術後)
うっ血肝、肝硬変
蛋白漏出性胃腸症
腹水貯留
肺動静脈瘻
心房頻拍、洞機能不全など不整脈

心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)や心室中隔欠損症のような単純な心疾患の場合、小児期に手術を受けていれば、成人になって大きな問題が生じることはほとんどありません。小児期は順調に経過した場合でも、成人になってから問題を生じる場合もあり、ここでは特徴的な成人先天性心疾患について説明します。

成人先天性心疾患の原因

先天性心臓病を未治療のまま成人を迎えるケースや、高齢になってから先天性心臓病が発見されるケースは少数です。しかし、小児期に見つかった慢性の先天性心臓病の治療を成人以降も継続していたり、小児期の手術前の病変が残存(遺残症)していたり、術後に新たな問題(続発症)が生じたりすることがあります。

例えば、ファロー四徴症(しちょうしょう)や完全大血管転位症、フォンタン手術を受けた単心室症のような複雑な心疾患の場合、小児期は順調に経過した場合でも、成人になって年齢を重ねると遺残病変や心不全、不整脈などの続発症を生じる場合があります。

ファロー四徴症の場合

ファロー四徴症の多くのケースが、小児期までに最終手術として心室中隔欠損閉鎖と右室流出路再建が行われますが、成人期になると疲れやすさや息切れ、動悸(どうき)などの症状が現れることがあります。

これは、再建した右室流出路や肺動脈の再狭窄(さいきょうさく)や肺動脈弁の逆流などが原因となり、右心室や右心房に負荷がかかって右心不全や頻脈性不整脈を生じるためです。このような場合、心エコー検査や心カテーテル検査を行い、状況によってカテーテルによる治療(バルーン拡張術)や手術を行います。右心室機能が損なわれないうちに治療をすることが重要です。

更新:2023.04.27