小児の心臓病-先天性心疾患、心臓の病気

富山大学附属病院

小児循環器内科

富山県富山市杉谷

小児の心臓病とは、どんな病気ですか?

小児の心臓病には生まれつき心臓・血管に異常がある病気(先天性心疾患)と生まれた後、何らかの原因で起こる心臓の病気(心筋・心膜疾患、不整脈、川崎病、肺高血圧など)に分けられます。

①先天性心疾患(生まれつき持っている心臓・血管の異常)

生まれてくる赤ちゃんの約1%は先天性心疾患を持つといわれ、それほど珍しくない病気です。正確な診断、適切な手術のタイミングや方針の決定、術前・術後遠隔期の管理などがとても重要です。胎児診断技術の進歩により出生前に診断される症例が増加しており、当院では新生児科と産婦人科との協力で出生時からの計画的な治療を行っています。患者さんのほとんどが、治療することで立派に大人にまで成長することができる時代です。成人した後も内科と協力し、生涯にわたる観察・治療体制を築いています。

②心筋・心膜疾患(図1)

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図1 心筋症の病型

心筋炎・心筋症は、心臓のポンプ機能に異常をきたす疾患で、生まれつき健康なお子さんが急にショック状態となることも多く、緊急の対応が必要です。

③不整脈(脈が乱れる心臓のリズム異常)

子どもの不整脈は危険性の低いものが多く、運動制限や薬による治療を必要としないことがほとんどです。しかし、健康なお子さんに突然不幸が訪れる危険な不整脈もあります。子どもたちが学校生活や運動を安全に行えるよう、確実なスクリーニング(抽出)を心がけています。

④川崎病

川崎病は5歳未満の小児に多い原因不明の発熱性全身疾患です。血管に炎症が起こり、その結果、冠動脈に異常が起こることがあります。始めは冠動脈が広がる(拡大)だけですが、進行すると瘤(こぶ)になります(冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)、写真1)。巨大な瘤になると、血液の塊(かたまり)(血栓)が生じ、冠動脈が狭くなったり(狭心症)、詰まったり(心筋梗塞(しんきんこうそく))します。現在は、多くの患者さんは軽快し、冠動脈病変の後遺症を残さずに治ります。

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写真1 川崎病後の冠動脈瘤(心臓カテーテル検査)

⑤その他

特発性肺動脈性肺高血圧(原発性肺高血圧)、アイゼンメンジャー症候群など

どのような検査が必要ですか?

X線検査、心電図検査、心臓超音波検査(経胸壁心エコー)などがあります。また、特殊な検査として、3D‐CT検査、MRI検査、核医学検査、胎児心エコー検査、経食道心エコー検査、心臓カテーテル検査、遺伝学的検査、発達検査などがあります。

胎児心エコー検査

近年ではエコー検査の進歩により、お母さんのお腹(なか)の中にいるときから赤ちゃんの管理ができるようになりました。赤ちゃんの心臓の状態をみながら、できる限り最適の環境で出産できるように準備をするために大切な検査です。

心臓カテーテル検査(写真2)

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写真2 心臓カテーテル検査

手術の時期の決定、術後評価、心機能・血行動態評価、川崎病合併症の評価などを目的に行う検査です。検査後はベッド上で安静にしなければならないため、3~5日間の入院が必要です。

経食道心エコー検査

年長児などで、通常行うエコー(経胸壁心エコー)では十分な観察ができない場合に行います。経食道心エコーは、経胸壁心エコーよりも心臓に近い場所からの観察が可能で、より精度の高い情報が得られます。

3D‐CT検査

造影剤を使用しながらCTを撮影し、コンピューターで心臓や血管の形態を描き出します。エコーやX線では見ることができない血管、心臓の構造や気管支の形態、それらの位置関係を把握するのに有用な検査です。3次元画像を見ることで、血管造影では得ることができない情報も確認できます。

遺伝学的検査

心筋症、特に心筋緻密化障害の遺伝子解析を行っています。

発達検査

心疾患の子どもの発達検査の1つとして、ベイリー検査を行っています。この検査は、おもちゃを用いた遊びを通して、認知、言語、運動発達などを神経学的観点から詳細に評価できます。

どのような治療が必要ですか?

薬を飲んだり点滴をしたりする薬物治療と、それ以外の非薬物治療があります。手術以外の非薬物治療としてはカテーテル治療が代表的です。カテーテル治療には、「穴をふさぐ」「狭い血管を広げる」「血管を詰める」とさまざまな方法があります。いずれの治療も外科手術と比べて、お子さんにとって有効でかつ安全にできると判断した場合に行います。

以下に先天性心疾患のカテーテル治療例を挙げます。

心房中隔欠損の治療(図2)

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図2 経皮的心房中隔欠損閉塞術

生まれつき心房中隔という心臓内を分割している壁に穴があいている病気で、通常、小児期は無症状ですが、40歳過ぎ頃から心房細動などの不整脈、血流の鬱滞(うったい)、肺高血圧などによる浮腫(ふしゅ)や疲労感などの右心不全症状が現れる場合があります。

動脈管開存の治療

本来は生後数日で閉鎖する動脈管が太く開いたままの状態を動脈管開存といい、多呼吸や発育不良などの左心不全症状が現れる場合があります。乳児期早期なら外科的結紮術(けっさつじゅつ)、乳児期後期以降ならカテーテル的閉鎖術を施行しています。

小児循環器グループは、小児心臓外科とチームを組み、循環器疾患の診療にあたっています。北陸地域全体から患者さんが受診し、小児循環器外科との協力のもと、年間160~180例の心臓手術を行っています。

更新:2024.01.26