重症心不全に対する包括的な治療とは?-循環器センター

富山大学附属病院

循環器内科

富山県富山市杉谷

重症心不全とは?

はじめに、心不全とはどのような状態を指すのでしょうか?心臓は血液を全身に隈なく送るためのポンプの機能を担っています。さまざまな原因によって、心臓のポンプとしての働きが弱ってしまった結果として、全身に必要な血液を送ることができていない状態を「心不全」と呼びます。人口の高齢化や食生活の欧米化など、さまざまな理由によって、心不全の数は爆発的に増えているのが現状です。

心不全を治すためには、心不全そのものに対する治療も必要ですが、心不全の原因となる心臓の病気の治療も必要になってきます。当センターには、さまざまな心臓の病気のエキスパートが揃っています。意見を寄せ合いながら、それぞれの患者さんに最適な治療の組み合わせを提供しています。

しかしながら、病気の進行とともに、従来の治療には反応しにくい重い心不全をもつ患者さんも少なからずいます。このような患者さんに対しても、当センターでは「ハートチーム」を結成することで、科の垣根を越えて最先端の治療を提供しています。

補助人工心臓治療とは?

「補助人工心臓治療」というのは、心臓にポンプを植え込むことで、患者さん本人の心臓が全身に血液を送ることを手助けする治療法です。ポンプが体の外に出ているタイプと(図1)、ポンプが体の中に植え込まれるタイプとに分かれます(図2)。特に、ポンプが体の中に植え込まれるタイプの装置に関しては、富山県内で唯一、富山大学だけが治療を行う承認を得ており、現在、さまざまな種類の装置が開発されています。

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図1 体外式補助人工心臓
体の外に置かれたポンプの力で血液を心臓からポンプに移動させ、ポンプから大動脈に戻すことによって患者さんの弱った心臓のはたらきを助けます
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図2 植込型補助人工心臓
さまざまなタイプの機械が開発されていて、より小型で高性能なタイプが使えるようになってきました

また、足の付け根などからカテーテルを入れて心臓の中に通すことで心臓のポンプ機能を助ける治療装置も最近国内で使えるようになり(図3)、当センターは北陸地区で最も多くこの治療を行っている施設です。心不全の重症度に合わせて、最適な治療を提供しています。

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図3 カテーテルによる補助人工心臓
足の付け根からカテーテルを入れることで、心臓のはたらきを助ける小型のポンプを、胸を開けることなく心臓の中に入れることができるようになりました

経皮的僧帽弁形成術

「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」とは、僧帽弁の閉まりが悪くなり血液が逆流する病気です。通常は外科医が開心術によって治療しますが、心臓の機能が低下していたり、高齢など、ほかに合併症があるために手術リスクが高い場合には、カテーテルによる治療が行えるようになりました。カテーテルの先端につけたクリップを足の付け根の静脈から心臓まで持ち込み、僧帽弁の先端をクリップでつまむことで逆流を制御する治療法です(図4)。

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図4 経皮的僧帽弁形成術
足の付け根から心臓までカテーテルを入れることで、広がった僧帽弁を小型のクリップで閉じて、逆流を治します

胸を切らないために体への負担が小さく、これまで手術を受けることができなかった患者さんでも十分に耐えうる治療となっています。わが国では2018年より治療が始まり、北陸地区では現在当センターでのみ可能となっています。

更新:2022.03.16