小さな厄介者:トコジラミの生態と対策

メディカルブレイン編集部

皆さんはトコジラミをご存じでしょうか?
今フランスでは、国会でも取り上げられるほどの大きな問題になっています。
実は日本でも近年、その存在が徐々に増加しています。

今回は、体長わずか5〜8mmの小さな厄介者、トコジラミの生態や対策について掘り下げていきます。

トコジラミの特徴

トコジラミは南京虫(ナンキンムシ)とも呼ばれる害虫です。名前にシラミと付いていますが、実はシラミではなく、カメムシの一種です。

トコジラミの写真

成虫の寿命は9~18か月で、人や動物の血液を餌にしています。昼間はベッドやソファなどに隠れていて、夜になると姿を現し、寝ている人の手、足、首などの露出部分に噛みついて血を吸います。

トコジラミの特徴は次の通りです。

  • 飛ぶことはできないが、歩くスピードはとても速い。
  • 成虫は5~8mmの楕円(だえん)形で、色は褐色。
  • 幼虫は1~4mmで、成虫と同じ形状をしていて、孵化(ふか)直後は透けて白っぽいが、成長するにつれて褐色になる(5回脱皮して成虫になる)。
  • 幼虫、成虫、メス、オスすべてが吸血する。
  • 4~10日に1回吸血し、条件が良ければ吸血しない状態で半年以上生きることがある。
  • 空腹時には平らで、吸血すると体が伸び、丸く膨らむ。
  • 吸血時間は、幼虫が3~10分、成虫が10~15分と長く、満腹になるとポロッと落下し、直ちに潜伏場所に戻る。
  • メスは1回に5~6個、生涯に200~500個の卵を産む。

トコジラミの被害は近年増加傾向

トコジラミの被害は1970年代に減少し、それ以降は落ち着いていましたが、2009年ごろから徐々に増加してきています。(※「東京都におけるトコジラミ相談件数」グラフ参照)

東京都におけるトコジラミ相談件数(2003年度~2022年度)の推移グラフ
東京都におけるトコジラミ相談件数
東京都におけるねずみ・衛生害虫等相談状況調査結果より)

この増加の理由は、
・生き延びた個体が抵抗力をつけて繁殖しやすくなったこと
・グローバル化により、外国人旅行者や、海外に行って帰国した人の荷物や衣服に卵や幼虫、成虫が付着して持ち込まれること
などが考えられています。

トコジラミに刺されるとどうなるのか

トコジラミに刺されて血を吸われても、最初の数回は意外にもかゆみを感じません。トコジラミに刺された時のかゆみはアレルギー反応によるもので、数回吸血されることでアレルギー反応を起こすようになります。その結果、以後は吸血によってかゆみが生じ、皮膚に赤い発疹(ほっしん)が現れるようになります。
アレルギー反応が起こるようになるまでの吸血の回数は人によって違います。また、何度も刺された結果、反応しなくなる場合もあります。

トコジラミに刺された跡のかゆみは非常に強く、夜も眠れなくなり不眠症の原因になることもあります。また、リンパ節の腫れや発熱を伴うこともあります。

刺された跡には抗ヒスタミンの外用薬を塗ることで症状の緩和が可能です。かゆみがひどい場合は皮膚科を受診するようにしましょう。
ただし、刺された跡を見てもトコジラミかどうかを判断するのは専門医でも難しく、トコジラミの存在を特定するためには、寝室などで直接トコジラミを見つけることが最も確かな方法です。

今まで、トコジラミが感染症を媒介したという報告はありませんが、かき過ぎることにより細菌が入り、症状が悪化することがあるので注意しましょう。

トコジラミの潜伏場所と見つけ方

トコジラミは夜間に吸血する習性のため、主に寝室内のベッドやその周辺3mほどの範囲の隙間に潜んでいます。また、ソファやカーペットも生息しやすい場所です。トコジラミは体が平べったく、狭い隙間にも隠れることができ、暗くて温かい場所を好みます。

トコジラミの生息数が増えると、隣の部屋へと広がっていきます。

トコジラミが生息している場所には、血糞(けっぷん)と呼ばれる黒ゴマ状のしみが多く見られます。これらの血糞は、トコジラミが吸血した際に排泄するもので、潜伏場所を特定する際の重要な目印となります。

トコジラミの血糞の写真
トコジラミの血糞

主な生息場所の例

ベッドの隙間や裏、マットレスの中、カーテンの折り目の間、カーペットの下、ソファの隙間、家具と壁の間、額縁の裏 など

部屋のイラスト。ベッドの隙間や裏、マットレスの中、カーテンの折り目の間、カーペットの下、ソファの隙間、家具と壁の間、額縁の裏に◯印がついている。

布団やまくらの中、畳の縁、床・柱・壁・天井の隙間、押入れ、電化製品の裏や内部、障子、掛け軸の裏など

部屋のイラスト。布団やまくらの中、畳の縁、床・柱・壁・天井の隙間、押入れ、電化製品の裏や内部、障子、掛け軸の裏に◯印がついている。

イラスト出典:知っていますか? トコジラミ(東京都保健医療局)

トコジラミを見つけた時の対策

トコジラミは、部屋が清潔でないから発生するものではありません。何かのきっかけによってトコジラミの卵や成虫が家に持ち込まれることにより発生します。残念ながら、トコジラミの持ち込みを完全に防ぐ方法はありません。トコジラミの被害を最小限に抑えるためには、トコジラミを早期に発見し、日々の掃除や整理整頓を心がけることが大切です。

トコジラミが生息しやすい場所で血糞や成虫を見つけた場合は、被害の拡大を防ぐため早急に駆除する必要があります。

市販の殺虫剤は効果がない場合も多く、むやみに使用するとトコジラミが安全な場所を求めて移動し、他の部屋にも被害が広がってしまうことがあるため注意が必要です。

トコジラミの増殖が進行してしまった場合、自力で完全に駆除することは非常に難しいため、経験豊富な専門業者に早急に依頼することが必要です。

日本でのトコジラミ被害は、現在のところは欧米ほどの状況ではありません。安全で快適な生活を維持するために、トコジラミに対する知識を深め被害の拡大を防ぎましょう。

更新:2023.12.04