【健診結果のミカタ・第1回】血糖値よりも重要⁉HbA1cは何を示す数値?

メディカルブレイン編集部

多くの人が年に1回程度受診している健康診断。しかし、どの検査項目結果が何について示しているのかをご存じでしょうか?健康を維持していくためには、健康診断結果の数値に異常がなくても、健康診断の結果の「見方」を知ることで、自身の健康の「味方」にしていくことが必要です。この企画では、健康診断結果に並ぶ検査項目と数値の意味をご紹介していきます。第1回目となる今回は、血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)についてです。

血糖値とHbA1cで診断できる疾患は糖尿病

血糖値とHbA1cは糖尿病の診断のために用いる数値で、血液検査によって測定します。まずは血糖値とHbA1cが何を示す数値なのか、糖尿病がどんな病気なのかについてご紹介します。

血糖値とは?

食事で糖質を摂取すると、その後胃や腸で分解されてブドウ糖となって血液に流れ出し、血管を通って筋肉、臓器や脳といった場所に届けられ、消費されます。血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことを指します。濃度が高いと高血糖の状態を表し、逆に低いと低血糖の状態であることを示します。

HbA1cとは?

HbA1cは、「ヘモグロビン・エーワンシー」と読みます。ヘモグロビンは血液中の細胞成分の一種である赤血球の中にあるタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。このヘモグロビンは血液中のブドウ糖と結び付くと、糖化ヘモグロビンという糖化タンパク質に変わります。

すべてのヘモグロビンの中で、糖化ヘモグロビンがどの程度の割合で存在するかをパーセントで表した数値が、HbA1cです。

ヘモグロビンイラスト

血糖値の低い状態だと糖と結合するヘモグロビンは少なくなるためHbA1cの数値は下がり、血糖値が高くなればそれに伴い数値も上がります。

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病とは、血液中の糖の量をコントロールするために膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモン「インスリン」の量が減少、あるいは働きが弱まることで慢性的な高血糖状態が続いてしまう症状のことを指します。

糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2種類があり、「1型」は自己免疫異常によってインスリンを分泌する膵臓の細胞が壊されてしまう疾患で、多くは幼児期から思春期にかけて発症します。

私たちが日頃注意しているのは「2型」の方で、インスリンの分泌が低下しやすい体質など遺伝的な要因もあるものの、多くの場合では食べ過ぎ、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣が深く関係しています。糖尿病患者の約9割が「2型」に該当すると言われています。

1型糖尿病と2型糖尿病のイラスト

糖尿病の恐ろしい点は、高血糖の状態が続いて血管に負担がかかり過ぎると、全身を巡る大小の血管が機能不全に陥ってしまい、さまざまな合併症を引き起こしてしまうところにあります。また、もう一つ怖い点として挙げられるのが、糖尿病は自覚症状が出にくい点です。(のど)の渇きや手足のしびれ、体重減少や倦怠感(けんたいかん)といった初期症状が出る頃にはすでに症状が進んでしまっているということも少なくなく、そのためにも健康診断によって兆候を早めにつかむことが重要になるのです。

糖尿病の主な自覚症状イラスト

血糖値とHbA1cの違い

糖尿病の兆候に気付くためには、常日頃から自身の血糖値をチェックしておく必要があります。血糖値もHbA1cも、数値が低ければ低血糖の状態を示し、高ければ高血糖の状態を示すことには変わりありません。ただ、血糖値の大きな特徴として挙げられるのが、食前・食後では大きく数値が変わる点です。

前述の通り、食事で糖質を摂取すれば、血液中のブドウ糖濃度に大きな影響を及ぼします。健康診断前に数時間程度の絶食が求められるのは、血液検査の基準値が空腹時を基準として設定されているからです。

一方で、過去1~2か月の血糖の平均値を見ることができるのが、HbA1cです。赤血球の寿命は120日程度で、一度糖化したヘモグロビンは寿命が尽きるまで元に戻ることはありません。空腹時や満腹時で数値が増減することもないため、日常的な血糖の高さを測定するには、血糖値よりもHbA1cの方が重要な指標とされています。

もちろん、だからといって血糖値が不要なわけではありません。HbA1cはあくまで過去1~2か月の平均値であるため、今現在の状況を知るには不向きです。HbA1cで日常的な状態を把握しつつ、異常があった際には血糖値でその時点の状態を把握するというように、適材適所での使い分けが肝心です。

HbA1cによる糖尿病判定の目安

年齢や性別によって若干の違いがありますが、おおむね5.5%以下だと正常で、6.5%以上だと糖尿病の強い疑いがあるとされています。その間の数値の場合はどちらともいえない「境界型」になりますが、血糖値の数値によっては糖尿病の疑いが否定できないと診断される可能性もあります。なお血糖値は、空腹時の測定でおおむね100mg/dL未満が正常値とされています。

HbA1c の数値 判定の目安
~5.5% 正常
5.6%~5.9% 要注意
6.0%~6.4% 糖尿病が否定できない
6.5%~ 糖尿病の強い疑い

HbA1cは糖尿病を診断する上で最も重要な指標の一つですが、この数値だけで診断結果が決まるわけではありません。自覚症状の有無や血糖値の数値などから総合的に診断されます。HbA1cや血糖値など、一つの数値だけを見て自分で判断することは控え、何か一つでも糖尿病が否定できない要素がある場合は、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

更新:2024.09.09