がんの早期発見に効果的な「PET検査」。定期的に受ければ万事安心?

メディカルブレイン編集部

がんを早期発見するうえで効果的なのが、PET検査です。しかしX線検査やCT検査、MRI検査、エコー検査などと比べると、何を行う検査なのかがイメージしにくいという人もいるかもしれません。今回は、そのPET検査について解説します。

PET検査では、どのようなことを行う?

PET検査がイメージしにくい理由の一つとして、名称を聞いただけでは何を行う検査なのかが分かりにくい点が挙げられます。PET検査のPETは「陽電子放出断層撮影」の略であり、放射線を放つ薬剤を投与して病変を撮影することを示します。しかし、これだけを聞いても、ピンとくる人は少ないのではないでしょうか。そこで、まずはPET検査ではどのようなことを行うのかについて、説明します。

PET検査ではまず、ごく微量の放射線を放つ薬剤を静脈に投与します。がんを発見する目的で行うPET検査では、この放射線を放つ薬剤には、ブドウ糖と似た性質を持つ18F-FDG(フルオロデオキシグルコース、以下FDG)という薬剤を用います。

がん細胞は通常の細胞よりも多くのブドウ糖を取り込みエネルギーとして消費する性質があるため、静脈に投与されたFDGは、がん細胞により多く集まります。FDGはブドウ糖とは異なり、解糖されずにその場に留まります。そのため、FDGが多く集まった部位からは、より強い放射線が放たれることになります。PET検査は、この放射線が強く放たれる部位を特殊なカメラで撮影して、がん細胞の位置や大きさなどを調べる検査です。

正常な細胞とがん細胞が放つ放射線の違い

PET検査は多くの場合で、後で紹介するCT検査やMRI検査と並行して行われます。CTやMRIで全身を撮影し、PET検査での撮影画像とCT画像やMRI画像を組み合わせることで、がんの発生や転移を見つけ出すことができるのです。今ではPET画像とCT画像を同時に、しかも融合させた画像を撮影できる医療機器も開発され、主流となっています。

PET検査の流れ

さらに、放射線を放つ薬剤の種類を変えれば、がん以外にも狭心症やアルツハイマー型認知症などの早期発見も可能です。このようにPET検査は、がんをはじめとする命に関わるような病気の早期発見に、非常に有効な検査なのです。

PET検査とほかの検査の違いとは?

ところでがんなどの早期発見においては、ほかにも体内の見えない部分を撮影する検査があり、主にX線検査、CT検査、MRI検査、エコー検査などが挙げられます。それぞれの検査の仕組みは、以下の通りです。

X線検査
放射線の一種であるX線を利用して体内の画像を映す検査です。臓器や骨、食道や乳腺など多くの体の部位を撮影できるうえに、装置も簡便なため、多くの医療機関で用いられています。ただし、微量とはいえ放射線を被ばくすることになります。
CT検査
360度方向からX線を当てることで体の輪切り画像を映し出す検査です。X線検査よりも詳しく体内を調べられるのですが、同様に微量とはいえ放射線を被ばくします。また、造影剤を用いて撮影する際には、副作用が現れることもあります。
MRI検査
磁力と電磁波を用いてさまざまな方向の体の断面を画像化する検査で、X線検査やCT検査とは異なり、放射線被ばくの心配もありません。X線検査やCT検査とは撮影方法が異なるため、病変を発見しやすい画像を撮影できるのも特徴です。ただし撮影時間はCT検査と比べて長くなります。
エコー検査
超音波を使って体内の様子を画像化して調べる検査です。検査を行うと同時に腫瘍やポリープ、結石といった臓器の異常を発見できるのが特徴で、X線検査同様に装置が簡便なため、検査のための部屋などが必要なく、非常に多くの医療機関で利用されています。ただし、肺や脳など異常を検出しにくい部位もあります。

PET検査ががんの早期発見に適している理由

これらの検査は、いずれも体内の臓器や器官が病気によって正常とは異なる形に変わってしまっていないかどうかを調べるものです。一方、PET検査は先に説明したように、病変部の代謝異常を検知する検査です。一般的に代謝異常の方が形状変化よりも先に現れることがほとんどのため、PET検査はX線検査、CT検査、MRI検査、エコー検査などよりもがんの早期発見に適していると言えるのです。

PET検査で見つけやすいがん、見つけにくいがん

PET検査ががんなどの早期発見に効果的な検査であることはこれまで述べてきた通りですが、万能ではありません。PET検査を受ければすべてのがんが見つかるというわけではなく、向き・不向きがあります。

PET検査で発見しやすいがんは、主なものでは肺がん、大腸がん、膵臓(すいぞう)がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、悪性リンパ腫などが挙げられます。

その一方で、ブドウ糖代謝が低い早期の肺がんには、CT検査の方が適しています。また、そもそもFDGが集まりにくい部位である胃がんも内視鏡検査やMRI検査、エコー検査の方が向いていますし、逆に正常でもFDGがよく集まる前立腺、膀胱(ぼうこう)、腎臓などのがんにもPET検査は不向きです。

発見を得意とするがん

  • 肺がん
  • 大腸がん
  • 膵臓がん
  • 乳がん
  • 子宮がん
  • 卵巣がん
  • 悪性リンパ腫など

発見が苦手ながん

がんの種類 代わりとなる検査手法
早期の肺がん CT検査
胃がん MRI検査、エコー検査
前立腺がん 血液中の前立腺特異抗原(PSA)の量を測定するPSA検査
膀胱がん MRI検査、エコー検査、細胞を採取して調べる細胞診
腎臓がん MRI検査、エコー検査

PET検査を受ける際の注意点

加えて、PET検査でも放射線を被ばくすることには、注意が必要です。PET検査自体の被ばく量は自然界から受ける放射線量1年分程度なのですが、そこにCT検査による被ばくも加わると、1回の検査でバリウムを飲んで行う胃のX線検査の1~4回分程度の被ばく量になってしまいます。これでもただちに影響がある被ばく量とは言えませんが、妊娠中・授乳中の人はPET検査を受けることができません。検査前に、妊娠の可能性がないことを確認する必要があります。

さらに、PET検査はブドウ糖に似た性質の放射線を放つ薬剤を使用して行う検査のため、検査時に血糖値が高いと、検査の精度に影響を及ぼします。高血糖の人は特に、検査前の血糖値コントロールが必要になります。

がんの早期発見には、さまざまな検査の使い分けが肝心

このようにPET検査にも向き・不向きがあり、放射線被ばくや血糖値との兼ね合い次第では、検査自体を受けられないということもあり得ます。「PET検査を受ければ安心」というわけではなく、がんの早期発見のためにはPET検査を含むさまざまな検査手法を適材適所で使い分けていく、と考える方が適切です。

更新:2025.06.19