熱中症予防に経口補水液で水分補給――その飲み方、間違いかもしれません
メディカルブレイン編集部

最近では、ドラッグストアなどでも気軽に購入できる「経口補水液」。猛暑日や真夏日が続くこの季節、熱中症予防として運動前後や汗をかいた後にスポーツドリンクのようにゴクゴクと飲んでいませんか?その飲み方、体に負担をかけてしまっているかもしれません。
見た目は似てるけど別物!経口補水液とスポーツドリンクの決定的な違い
夏場になると、ドラッグストアの店内に所狭しと並べられる経口補水液。水分や電解質を手軽に補給できる飲み物で、まるでスポーツドリンクのようにデザインされたパッケージの商品も多いため、運動前後の水分補給や大量に汗をかく際の熱中症予防として飲んでいる人もいるのではないでしょうか?
しかし経口補水液は、運動時の水分補給のために作られたスポーツドリンクとは大きく異なります。経口補水液は、脱水症の治療に用いるための「特別用途食品」として国から許可を得て製造・販売されている食品で、病者の食事療法用の飲み物なのです。
経口補水液の成分は基本的に、サルモネラ菌やノロウイルスといった細菌やウイルスを原因とする食中毒などで下痢や嘔吐《おうと》が続いた際に、素早く水分や電解質を補えるように調整されています。ただし、経口補水液の中には、熱中症や過度の発汗などによる軽度の脱水症状の際にも飲用できる商品もあります。経口補水液のラベルには具体的な用途が記されていますので、もし熱中症による脱水症状の対策として冷蔵庫に入れておきたい場合は、ラベルをチェックしてから購入するようにしましょう。
いずれにしても、経口補水液は脱水症状からの回復のために飲むものであって、熱中症予防のために飲むものではありません。
熱中症対策に選ぶべきはどっち?成分量から見る正しい選択
ただ、水分に加えナトリウム、カリウムなどの電解質を含むという意味では、経口補水液もスポーツドリンクも同じです。そう聞くと、「夏場の熱中症対策として飲んでもいいのでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、経口補水液とスポーツドリンクとでは、その成分量に大きな差があります。
ドラッグストアなどで手に入れやすい代表的な経口補水液3種と、スーパーやコンビニ、自動販売機で気軽に買える代表的なスポーツドリンク2種の成分をまとめた表が、以下のものです。
種類 | メーカー | 商品名 | エネルギー | ナトリウムの 食塩相当量 |
カリウム |
---|---|---|---|---|---|
経口補水液 | 大塚製薬工場 | 経口補水液 OS-1 |
10kcal | 0.292g | 78mg |
日本 コカ・コーラ |
アクエリアス 経口補水液 ORS |
11kcal | 0.249g | 80mg | |
味の素 | 経口補水液 アクアソリタ |
6kcal | 0.2g | 78mg | |
スポーツ ドリンク |
大塚製薬 | ポカリスエット | 25kcal | 0.12g | 20mg |
日本 コカ・コーラ |
アクエリアス | 18kcal | 0.1g | 9mg |
このように塩分・カリウム共に、経口補水液の方がスポーツドリンクよりも約2~84倍も多く含みます。そのため、塩分やカリウムを制限されている人が誤ってスポーツドリンクのように経口補水液を日常的に飲んでしまうと、体に負担がかかり、健康に大きな問題を引き起こしてしまう可能性が生まれます。
また、経口補水液には糖分も含まれています。糖質制限を受けている人も注意が必要です。
熱中症対策のお守りに。常備したい経口補水液の選び方
経口補水液は、前述の通り「特別用途食品」ですので、医師と相談のうえ、食事療法の一環として摂取するのが望ましいです。
しかし、気象庁の3か月予報によると、8~10月の3か月間は全国的に平均より気温が高くなる見込みで、熱中症の心配が続きます。予防として経口補水液を飲むのは控えなければなりませんが、いざという時のための熱中症対策として経口補水液を常備しておくことは効果的です。
そのために選びたいのが、熱中症や過度の発汗による軽度の脱水症状にも対応した経口補水液です。先に成分を紹介した、代表的な経口補水液3種の主なラベルの記載をご紹介します。これら3種の経口補水液は、いずれも熱中症時に飲用可能です。
経口補水液 OS-1(大塚製薬工場)
下記の状態等を原因とした脱水症の悪化防止・回復、脱水症の回復後も下記の状態等における水・電解質の補給、維持にご利用ください。
- 感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱
- 高齢者の経口摂取不足
- 過度の発汗
また、脱水を伴う熱中症にもご利用ください。
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アクエリアス 経口補水液 ORS(日本コカ・コーラ)
経口補水液 アクアソリタ(味の素)
- 医師から、熱中症・過度の発汗による軽度の脱水時の食事療法として指示された場合にご使用ください。
- 医師、薬剤師、管理栄養士等の指導に従ってお飲みください。
経口補水液のおすすめの飲み方は?
経口補水液は一気に飲むと吸収効率が下がってしまうため、5~10分間隔で50~100ml程度ずつ飲むのが理想的です。脱水症状の際、適切に水分・電解質が補給されると、数時間後には尿の排出が始まります。尿が排出されるまでは、小まめに経口補水液を摂取し続けましょう。注意点は、経口補水液には1日の摂取量の目安があることです。商品ごとに違いはあるものの、成人の場合だと大体1日当たり500~1000mlです。
また、夏場だとキンキンに冷やしてから飲みたいと思うかもしれませんが、吸収の効率を考えると常温程度で飲用する方がよいでしょう。ペットボトルタイプの経口補水液は、凍らせても成分が変わりませんが、溶かしながら飲むと成分に偏りができてしまうため、一度全体を溶かしてから飲む必要があります。さらに、ペットボトルのまま凍らせると膨張して容器がを破損すさせることがあるので、別の容器に移す必要もあります。どうしても凍らせたい場合は、製氷皿で一口サイズに凍らせてから、小まめに食べる方法がおすすめです。

経口補水液の中にはゼリータイプの商品もありますが、ゼリータイプの場合は凍らせると成分が変質してしまう商品もあります。凍らせる前に、必ずラベルの表記をチェックするようにしましょう。
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更新:2025.08.11