【流行早まる】注射嫌いの子どものインフルエンザ対策 「フルミスト」は本当に効果的!? 鼻スプレー型ワクチンを解説
メディカルブレイン編集部

コロナ禍後の2023-2024シーズンから、インフルエンザの流行時期が変わってきています。2025-2026の今シーズンも、これまでより流行時期が少し早まる傾向が見られるため、ワクチンの接種を急ぐ必要があります。そこで注目したいのが、昨シーズンから本格的に接種が開始された、鼻にスプレーするタイプのワクチン「フルミスト」です。皮下注射を嫌がる子どもでも接種しやすいこのワクチンには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今シーズンのインフルエンザは、すでに流行中!
9月下旬に、インフルエンザ流行の目安となる数値を突破
まずは、今シーズン(2025-2026)のインフルエンザの流行状況から見ていきましょう。
2020-2021シーズンから2022-2023シーズンの3シーズンはコロナ禍の最中だったこともあり、マスク着用や手指の消毒の徹底、イベントの減少などによってインフルエンザの流行も抑えられていました。ところが2023-2024シーズンからは再び流行し、しかもコロナ禍前と比べると流行時期に変化が見られるようになりました。
過去の記事:コロナ禍後のインフルエンザ流行時期に変化あり?
インフルエンザ流行の目安は、全国約5,000の定点医療機関から毎週報告される感染者数を、定点医療機関の数で割った「定点当たりの感染者数」が1.00を超えることとされています。今シーズンでは9月22日~28日の週に「定点当たりの感染者数」が1.00を上回り、それ以降も感染者数が増え続けていることから、すでにインフルエンザが流行している状況なのです。
感染者数の増加傾向が、爆発的に流行した昨年11月~12月に酷似
今シーズンおよび過去3シーズンのインフルエンザの流行状況は、以下のグラフの通りです。

出典:厚生労働省HP「インフルエンザの発生状況」より作成
※2025-2026シーズンは2025年11月2日までのデータ
見逃せないのは、今シーズンのインフルエンザ感染者数の増加傾向です。9月22日~28日の週に「定点当たりの感染者数」が流行の目安となる1.00を超えてからの増加傾向が、前年2024-2025シーズンの11月~12月にかけての増加傾向に酷似しています。
2024-2025シーズンでは2024年10月28日~11月3日の週に「定点当たりの感染者数」が1.00を上回った後、12月23日~29日の週には「定点当たりの感染者数」が現行の報告体制となった1999年以降で最大の数値となる64.39(感染者数317,812人)を記録しています。このまま昨シーズン同様に増え続けると、今年も11月から12月にかけて、爆発的にインフルエンザが流行する可能性も否定できません。
インフルエンザ予防の決め手となるのは、早めのワクチン接種です。ところが、子どもは皮下注射のワクチンを複数回接種するのを嫌がることもしばしば。そこで注目されているのが、昨シーズンから本格的に接種が開始された、鼻にスプレーするタイプのワクチン「フルミスト」です。
新しいインフルエンザ予防のワクチン「フルミスト」は子どもにぴったり?
注射嫌いの子どもに対する、新たなインフルエンザ予防の選択肢
「フルミスト」は鼻腔内に噴霧するタイプの弱毒生インフルエンザワクチンで、このタイプのインフルエンザワクチンとしては日本初になります。2023年に承認され、昨シーズンより本格的に接種が開始されています。

インフルエンザウイルスの侵入口(鼻)で防ぐ「生ワクチン」
従来の腕に注射するタイプのインフルエンザワクチンは、ウイルスを殺した不活性ワクチンと呼ばれるもので、主には血中の免疫を高めて重症化を防ぐ効果があります。一方「フルミスト」は、弱毒化された生きたウイルス(弱毒生ワクチン)をインフルエンザウイルスの体内への侵入口である鼻の粘膜に直接噴霧するもので、全身だけではなく、鼻や喉の粘膜にも免疫ができることで、インフルエンザウイルスの侵入を早い段階でブロックできるようになります。
加えて、ワクチン接種時に痛みがないことや、13歳未満では注射によるワクチン接種は通常2回のところを「フルミスト」だと1回の接種で済むこと、さらに注射によるワクチンの効果の持続期間が5か月~6か月なのに対し、「フルミスト」は約1年効果が持続するなどの特徴もあります。
| フルミスト | 従来のワクチン | |
|---|---|---|
| 接種方法 | 鼻に噴霧 | 腕に注射 |
| 対象年齢 | 2歳~18歳 | 生後6か月以上の全年齢 |
| 接種回数 | 1回 | 生後6か月~12か月は2回、13歳~は1回 |
| 特長 | 鼻や喉の粘膜にも免疫ができるため、ウイルスの侵入を初期段階でブロックしやすい | 血中の免疫が高まるため、重症化を防ぐ効果が確立されている |
| メリット | 注射の必要がないため、痛くない | 長年使用されているため安全性と実績が豊富 |
| 効果持続期間 | 約1年 | 5か月~6か月 |
「フルミスト」のメリット・デメリット|注射嫌いの子どもに最適
予防効果は注射するタイプの従来のワクチンも「フルミスト」も同等とされていますが、注射を嫌がる子どもが少なくないことや、インフルエンザウイルスが体内に侵入する初期段階でブロックする効果が期待できることなどから、子どものインフルエンザ予防の新しい選択肢として注目されています。
「フルミスト」を接種するうえで注意したいことは?
「フルミスト」を使用する際に最も注意したい点は、従来のワクチンとは異なり、対象年齢が2歳~18歳に限られていることです。さらに、以下の項目に該当する人は、対象年齢内でも接種することができません。
- 発熱している人
- 重篤な急性疾患にかかっている人
- 「フルミスト」に含まれる成分によってアナフィラキシーショックを起こしたことがある人
- 免疫機能に異常のある病気にかかっている人、または免疫抑制をきたす治療を受けている人
- 妊娠している人
- 予防接種を行うことが不適当な状態にある人
また、以下のような副作用が生じることもあります。副作用は、接種後3~7日後に現れることが多いです。
- 鼻水、鼻づまり、くしゃみ
- 風邪の症状に似た喉の痛み、咳、発熱
- 頭痛、倦怠感
- まれではあるが、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が起こることもある
注射を嫌がる子どもにとっては、「フルミスト」は新たなインフルエンザ予防の選択肢になるワクチンです。インフルエンザが本格的に流行する前に、医療機関と相談のうえ予防を進めましょう。
更新:2025.11.21
