花粉症を根本から治す「舌下免疫療法」とは?効果や治療期間、開始時期を解説

メディカルブレイン編集部

スギ花粉やダニなどのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)による花粉症やアレルギー性鼻炎に悩まされている人は、少なくありません。特にスギ花粉は早いエリアでは年明け1月から飛散が始まるということもあって、今から憂鬱(ゆううつ)な気持ちになっている人もいるのではないでしょうか。花粉症はマスクや眼鏡を着用して花粉をブロックしたり、内服薬や点眼薬によってくしゃみや鼻水、目のかゆみを和らげたりといった対策が一般的ですが、実は根本から治す方法が存在します。それが、「舌下免疫療法」です。

花粉症やアレルギー性鼻炎はなぜ起こる?

花粉症は花粉が飛散する季節に発症

花粉症もアレルギー性鼻炎も、花粉やダニなどのハウスダストに対するアレルギー反応が原因となって起こる症状で、具体的には鼻水や鼻づまり、くしゃみに加え、目や(のど)のかゆみなどが生じます。

花粉症とアレルギー性鼻炎の症状は同じなのですが、原因となるアレルゲンが異なります。花粉症の場合はスギやヒノキ、イネ、ヨモギ、カモガヤ、ブタクサ、シラカンバといった植物の花粉が原因のため、その花粉が飛散する季節だけに限って症状が現れます。しかし、飛散の季節が異なる複数の種類の花粉がアレルゲンとなっている場合もあるため、中には毎年長期間にわたって症状に悩まされる人もいます。

2025年夏の記録的猛暑などが影響し、2026年は北海道から東海にかけては例年より花粉の飛散が多いとみられています。
※日本気象協会「2026 年 春の花粉飛散予測(第1報)」より

2026年エリア別花粉飛散傾向

エリア 例年比 昨シーズン比
北海道 非常に多い(250%) 非常に多い(420%)
東北 非常に多い(200%) 非常に多い(730%)
関東甲信 やや多い(140%) 多い(170%)
北陸 多い(160%) 非常に多い(270%)
東海 やや多い(130%) 多い(150%)
近畿 並(100%) やや少ない(80%)
中国 並(100%) 少ない(60%)
四国 並(90%) やや多い(110%)
九州 並(100%) 少ない(60%)

出典:日本気象協会「2026 年 春の花粉飛散予測(第1報)」

一年中症状が現れるアレルギー性鼻炎

一方アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲンは、ダニなどのハウスダストやペットの毛、唾液、フケなどのため、季節を問わず一年中症状が続きます。このためアレルギー性鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎、花粉症は季節性アレルギー性鼻炎ともいわれます。

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アレルゲンを少量ずつ体に取り入れることで体質を改善する「舌下免疫療法」

舌の下に薬を毎日少しずつ投与することで、アレルギー反応を抑える

花粉症やアレルギー性鼻炎の対策としては、まずマスク着用によるアレルゲンからの回避が挙げられます。それでも症状が起きてしまったら、内服薬(抗ヒスタミン薬など)、鼻噴霧用ステロイド薬による治療が選択肢に挙がります。しかし、これらはあくまで症状を緩和する対症療法です。一方、根本から治す治療法が「舌下免疫療法」です。

「舌下免疫療法」は、アレルゲンを含む薬を舌の下に少量ずつ投与し続けることで、アレルギー反応が起こらないように体質を少しずつ変えていく治療法です。現在はスギ花粉とダニのアレルギーに対する治療が可能で、保険も適用されます。

1日1回、薬を舌の下で溶かして飲み込むだけ

「舌下免疫療法」は、1日1回薬を舌の下に1~2分間置いて、薬が溶けたら飲み込むというものです。薬を飲み込んだ後は、5分程度飲食やうがいを控える必要があります。

図:薬を舌の下で溶かして飲みこむ

薬は3~5年間服用し続けることが推奨されていて、治療開始直後は2週間に1回、その後は1か月に1回通院することが望ましいとされています。

薬を初めて服用するときは、医療機関で医師や看護師の指導の下で行います。その後は処方された薬を自宅で服用することが可能です。

「舌下免疫療法」を行った患者さんの約2割が根本から症状を改善でき、約6割の患者さんが症状改善の自覚があるという調査結果もあります。

「舌下免疫療法」の注意点

スギ花粉が飛散している時期には治療を開始できない

「舌下免疫療法」を始めるためには、まずスギ花粉による花粉症なのか、あるいはダニを原因とするアレルギー性鼻炎であるのかという確定診断が必要です。確定診断を受けた後、「舌下免疫療法」を始めることになるのですが、スギ花粉による花粉症の治療は、スギ花粉が飛散する1~5月に開始することはできません。

写真:スギ花粉の飛散

ダニを原因とするアレルギー性鼻炎の治療は、通年で開始することが可能です。

5歳以上にならなければ、治療を開始できない

「舌下免疫療法」は、患者さん本人が治療内容を正しく理解し、毎日薬を服用できるかどうかが鍵です。そのため、5歳以上の患者さんが治療の対象となります。小児期から治療を始めた方が十分な効果が得られやすい治療法なのですが、舌の下で薬を一定時間保持して飲み込むという服用法を日々きちんと続ける必要があるため、小児期の患者さんには保護者のサポートが重要です。

治療を受けられない場合もある

以下のような人は、「舌下免疫療法」を受けることができません。

  • 重度の気管支喘息(ぜんそく)で治療中の人
  • がんや免疫系の病気がある人
  • 妊娠中、授乳中の人や妊娠希望の人
  • 重い心臓や肺の病気がある人
  • β遮断薬を服用中の、高血圧の人

副作用が生じる可能性がある

以下のような副作用が出ることがあります。

  • 口内のかゆみや腫れ
  • 唇の腫れ
  • 喉や耳のかゆみ
  • 吐き気、腹痛、下痢、頭痛

また、極めてまれですが、全身のじんましん、呼吸困難、腹痛、嘔吐(おうと)、意識低下などのアナフィラキシーショックが起こる場合もあります。

つらい症状を根本から改善するためにできること

「舌下免疫療法」は、花粉症やアレルギー性鼻炎に長年悩まされてきた方にとって、症状の根本改善が期待できる選択肢のひとつです。治療期間が数年間に及ぶことや、開始時期・対象年齢に制限があるなど注意点もありますが、適切な診断と継続によって大きな効果が得られる可能性があります。

毎年のつらい症状を少しでも軽くしたい、将来的に薬の量を減らしたいと考えている方は、一度医師に相談してみるとよいでしょう。自分に合った治療方法を知り、早めに対策を始めることが、来シーズンをより快適に過ごす第一歩になります。

更新:2025.12.08