がんの最新放射線治療

福井大学医学部附属病院

放射線科

福井県吉田郡永平寺町

がんに対する放射線療法とは

放射線治療とは放射線という目に見えない光線を患部に当てて、がんを殺すという治療です。がん治療において、放射線治療は外科手術、化学療法とともに治療の3本柱の1つであり、単独治療として行われる場合もありますが、多くは化学療法や手術療法とも併用して施行されます。

放射線治療の特徴としては、がんを切らずに治すということがあります。がんが治るかどうかは、がんの放射線に対する感受性やがんの進行の程度が影響します。また、がんのある臓器を切除しないので、正常な臓器を温存し、機能が保たれる可能性があります。また、放射線治療は通常は30回程度に分割して治療するために1回当たりの体に対する負担は少ないという特徴があり、かなりの高齢者でも治療可能です。

どんながんに有効なのか

放射線治療が適応されるがんとしては、肺がんと乳がんが最も多く、次いで前立腺がん、口や喉(のど)などの耳鼻科系のがん、また、食道がん、子宮がん、脳腫瘍(のうしゅよう)、悪性リンパ腫(しゅ)などにも応用されます。

放射線治療の副作用

放射線治療では、がんを狙って放射線を照射しますが、どうしてもがんの周りの正常組織にも少ない割合の放射線が照射されます。また、放射線が通過する組織にも影響があります。正常組織に放射線がかかるとその部位には一時的な炎症が発生します。皮膚では紫外線による日焼けと同じような症状が出る場合がありますが、いずれも治療後1~2週間で徐々に軽快してきます。

最新の放射線治療の特徴
――新型のリニアックを用いた高精度放射線治療について

強度変調放射線治療(IMRT)とは

強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる高度な治療は、放射線を照射する各方向からの放射線ビームに強弱をつけて、周囲の大事な組織や臓器の線量を低くして、複雑な形をした病巣の形状に合わせて照射する方法です。マルチリーフコリメータ(多分割絞り)と呼ばれる厚さ0.5cmの遮蔽体(しゃへいたい)をコンピューターで制御して、複雑に動かすことにより放射線の強弱を作ります。IMRTにより正常な組織の副作用を軽減することができます。

IMRTの治療対象について

当初は限局型前立腺がんを対象として開始しましたが、その後、頭頸部(とうけいぶ)腫瘍、婦人科腫瘍、脳腫瘍などIMRTの適応される領域が拡大してきています。

前立腺のIMRT

前立腺がんのIMRTでは、直腸(ちょくちょう)と膀胱(ぼうこう)の線量を減量することが可能となります(写真1)。通常の放射線治療では直腸や膀胱からの出血が数%の人に認められるのに対して、IMRTを使用することにより、直腸や膀胱の出血の頻度(ひんど)を減らすことが可能です。

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写真1 前立腺がんに対するIMRT

頭頸部のIMRT

頭頸部腫瘍(口や喉(のど)などのがん)では、IMRTを使用することにより、耳下腺や口の線量を減らしつつ、病巣には十分な放射線を照射することが可能となります(写真2)。IMRTにより唾液の減少や口の中の炎症を減らし、治療中、治療後の生活状態の改善に役立ちます。

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写真2 中咽頭がんのIMRT

IGRT搭載リニアックと同室MDCT

画像誘導放射線治療(IGRT)とは、治療の位置を決める際に、従来は皮膚のマークで行っていたのに対し、X線画像を用いて位置を正確に決めて行う治療です。新リニアックでは、治療用のX線を用いて画像を撮影し、その画像を使用して治療の位置を自動で修正することができ、従来に比較して格段の正確さで治療を行うことが可能となります。

当院の特徴としては、IGRT搭載の新リニアックと同室にMDCT(多検出器型の高速CT)が設置されており(写真3)、同室MDCTを使用して、より正確に腫瘍の位置を合わせることが可能です。この同室MDCTを用いたIGRTで正確に位置の補正を行い、IMRTの治療を実施しています(写真4)。

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写真3 IGRT搭載新リニアックと同室MDCT
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写真4 同室MDCTを用いた位置補正

高精度のピンポイント照射(定位的放射線治療)について

IGRT搭載の新リニアックと同室MDCTを用いて、高精度のピンポイント照射が施行可能です。小さな脳腫瘍や肺腫瘍に対して、同室MDCTで正確な位置を決定し、その後に病変部に集中的に放射線を照射することで、精度が高く、効果も高い治療が可能です(写真5)。

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写真5 小さな肺腫瘍に対する定位的放射線治療
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写真6 放射線科治療スタッフ

更新:2024.10.04