妊娠糖尿病
概要
妊娠糖尿病(GDM)は、妊娠中にはじめて発見または発症した「糖尿病にいたっていない耐糖能異常」を指します(妊娠前からの糖尿病や妊娠中の明らかな糖尿病は別に扱います)。もともと糖尿病(※1)をもっていなかった女性が、妊娠を機に血糖値(※2)が高くなる場合が典型的です。妊娠中は胎盤(※3)から分泌されるホルモンの影響で、インスリン(※4)の働きが弱まりやすくなります。通常は、体がこの変化に対応して血糖値を調整しますが、うまく調整できないと妊娠糖尿病を発症します。
※1:血糖値が慢性的に高い状態
※2:血液中のブドウ糖の濃度
※3:赤ちゃんに栄養を送る器官
※4:からだの血糖値を下げるホルモン

妊娠糖尿病の原因
妊娠糖尿病が起こる主な原因は、妊娠中に分泌されるホルモンの影響でインスリンの効き目が落ちることです。妊娠に伴い胎盤が作るホルモンには、血糖値を上げる作用をもつものがあります。通常であれば膵臓がインスリンをより多く出して血糖値を保とうとしますが、その調整が追いつかない場合に妊娠糖尿病を発症します。以下のような要因が重なるとリスクが上がります。
- 肥満:BMI(体格指数)が高い、または妊娠前から肥満傾向にある
- 家族歴:両親や兄弟姉妹が糖尿病をもっている
- 過去に大型児(出生時の体重が4キロ以上の赤ちゃん)を出産した経験がある
- 多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)など、ホルモンバランスに影響を及ぼす疾患をもっている
妊娠糖尿病の症状
妊娠糖尿病は、軽度の場合はほとんど症状がありません。そのため、自覚しないまま検査で見つかるケースが多いです。しかし、血糖値が大きく上昇したまま放置すると、以下のような症状が現れる場合があります。
- のどの渇きが強くなる
- 尿量が増える
- 疲れやすくなる、疲れが取れない
- 目がかすむような感じがする
妊娠糖尿病の検査・診断
妊娠糖尿病のスクリーニングは、妊娠初期と妊娠中期(※5)に行うのが一般的です。代表的な検査方法は以下のとおりです。/p>
- 50グラム経口ブドウ糖負荷試験
- 妊婦さんに糖分50グラムを含む甘い飲み物を飲んでもらい、1時間後の血糖値を測ります。一般的に1時間値が140mg/dL以上で陽性とし、陽性の場合は次の精密検査(75gOGTT)に進みます(施設により基準が異なることがあります)。
- 75グラム経口ブドウ糖負荷試験
- 50グラムの検査で基準を超えた場合やリスクが高いと考えられる方に対して、より詳しい検査として実施します。糖分75グラムを含むドリンクを飲んだあと、空腹時・1時間後・2時間後など複数回にわたって血糖値を測定し、診断基準を満たすかどうかを調べます。(診断基準:空腹時≧92mg/dL、1時間値≧180mg/dL、2時間値≧153mg/dLのいずれか1点以上でGDM)
妊娠糖尿病(GDM)は、75gOGTTで「空腹時≧92mg/dL、1時間値≧180mg/dL、2時間値≧153mg/dL」のいずれか1点以上を満たす場合に診断します(施設で運用が異なることがあります)。診断がついたら、主治医と相談しながら治療や食事管理を行います。
※5:一般的には妊娠24週から28週の間
妊娠糖尿病の治療
妊娠糖尿病の治療では、まず食事療法と運動療法が基本となります。妊娠中は赤ちゃんに十分な栄養を送る必要がありますが、血糖値が上がりすぎないようバランスを考えなければなりません。医師や管理栄養士から適切なカロリーや栄養素のとり方、食事の回数・時間などについて指導を受けることが大切です。
適度な運動としては、妊婦体操やウォーキングなどがよく勧められます。運動によってインスリンが働きやすくなり、血糖値のコントロールを助ける効果が期待できます。ただし、運動の種類や強度は妊娠の経過や体調によって異なるため、必ず医師に相談してください。
食事療法と運動療法だけでは十分に血糖値が下がらない場合、インスリン注射を使うことがあります。薬物療法が必要な場合、インスリンが標準治療です(胎盤を通過しないため)。飲み薬(経口血糖降下薬)は国・薬剤・施設により扱いが異なるため、主治医の方針に従います。定期的に血糖値を測定し、数値が適切な範囲に収まるよう調整を続けます。ほとんどの妊娠糖尿病は、こうした取り組みによって無事に出産を迎えられます。
妊娠糖尿病の合併症
妊娠糖尿病を適切に治療せず放置すると、母体にも赤ちゃんにも合併症が起こるリスクが高まります。母体に関しては、高血圧性疾患や妊娠高血圧症候群を発症しやすくなることがあります。赤ちゃん側では、過度な成長(巨大児)や、出生後に低血糖を起こす可能性が高まるなどのリスクがあります。
また、母体は将来的に2型糖尿病へ進展するリスクが上がるため、産後6〜12週に75gOGTTで耐糖能を評価し、その後も定期的なフォローを続けることが勧められます。
妊娠糖尿病の予防
妊娠糖尿病の予防には、妊娠前からの生活習慣の見直しが有効です。過度な肥満はインスリンの効きを悪くするため、適正体重の維持が望ましいとされています。バランスの良い食事をとることや、適度な運動を取り入れる習慣は、妊娠糖尿病だけでなくさまざまな生活習慣病の予防にもつながります。
また、妊娠がわかったあとも、主治医や助産師、管理栄養士と相談しながら定期健診をきちんと受けることが大切です。早期に血糖値を測定し、異常があれば食事療法や運動療法を始めることで、重症化や合併症の発生を抑える可能性が高くなります。
更新:2026.05.13




