熱中症から身を守ろう!症状と応急処置のポイント
メディカルブレイン編集部

日本の夏はますます暑くなっており、最近では35℃を超える猛暑日も珍しくありません。先月のトピックスで「熱中症が起こる仕組みと予防方法」について解説しましたが、予防に努めていても、状況によっては熱中症を発症してしまうことがあります。そのような場合には、熱中症発症のサインを見逃さず、できるだけ早く処置することが重要です。そこで、今回は熱中症の症状と応急処置について解説していきます。
(関連記事:「暑さ到来!夏の熱中症から身を守るための予防対策」)
熱中症の症状と重症度の判断
熱中症をできるだけ早く処置するためには、熱中症の症状を正しく理解しておくことが重要です。
熱中症は、その症状によって重症度を判断することができます。最も重要な重症度の判断ポイントは、意識の状態です。まずは声をかけて、その反応を確認してください。反応が鈍かったり、おかしな返答をしたりするなど、少しでも意識に異常が感じられる場合は、中等症の可能性があり、医療機関への搬送が必要です。
呼びかけに反応がなく、意識がない場合は重症と考えられ、非常に危険な状態です。直ちに医療機関へ搬送し、医師の処置を受けましょう。
重症度 | 状態 | 具体的な症状 |
---|---|---|
軽症 | 現場での応急処置で対応可能な状態 | ・めまい ・立ちくらみ ・生あくび ・大量の発汗 ・筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り) |
中等症 | 医療機関への搬送が必要な状態 | ・頭痛 ・吐き気、嘔吐 ・倦怠感、虚脱感(体がぐったりして力が入らないなど) ・集中力や判断力の低下(呼びかけや刺激への反応がおかしい、反応はあるが鈍いなど) |
重症 | 入院して集中治療が必要な状態 | ・意識障害(呼びかけに反応がないなど) ・痙攣、引きつけ ・手足の運動障害(まっすぐ歩けない、走れないなど) ・高体温(体に触ると熱い状態) ・発汗停止 |
熱中症の応急処置のポイント
熱中症のサインが現れた場合は、できるだけ早く的確な処置を行うことが重要です。
軽症の場合は、まずは涼しい場所へ移動し、体を冷やす処置を行い、水分を自分で飲んでもらいます。その際には誰かがそばに付き添い、状態を見守ります。
意識がおかしい、自分で水分や塩分をとれない、応急処置を行っても症状が改善しない場合は、中等症以上と考えられますので、すぐに医療機関へ搬送しましょう。
以下のフロー図は、症状や状態に応じた処置方法をまとめたものです。このフロー図を参考にして、ちゅうちょすることなく適切な処置を行うことが重要です。

(出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル」)
具体的な応急処置の方法
●涼しい場所への避難
風通しのよい日陰や、できればクーラーが利いている室内などに避難させましょう。
●脱衣と冷却
【軽症、中等症の場合】
- 涼しい場所に移し、衣服をゆるめ、水分と塩分を補給します。(女性の場合には、可能であれば同性の救護者をお願いしましょう)
- 皮膚を濡らしてうちわや扇風機で風を当てます。氷やアイスパックなどで冷やすのもよいでしょう。これで改善すれば、軽症と考えられます。
- 冷えたペットボトル、氷の入ったビニール袋、氷のうなどを手に入れ、それを首、脇の下、足の付け根の前面、股関節部に広く当て、皮膚のすぐ下を流れている血液を冷やすことも有効です(アイスパック法)。
また、濡れタオルを体に当て、うちわや扇風機で風を当て、水を蒸発させて体を冷やす方法もあります。 - 最初から症状が重い場合や、嘔吐、吐き気などで水分補給ができない、処置をしてもよくならない場合は中等症と考えられますので、速やかに医療機関に搬送しましょう。
【重症(意識障害があるなど)の場合】
- 重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。体をできるだけ早く冷やす必要があります。
- スポーツや仕事場で重症の熱中症が疑われる場合は、「水道水散布法」と呼ばれる方法が効果的です。これは水道につないだホースで全身に水をかけ続けるもので、アイスパック法よりも体温低下率が高い方法です。
- その場に医療スタッフがいて直腸温をモニターできる環境が整っている場合は、全身を氷水や冷水に浸ける氷水浴(冷水浴法)が最も早く体温が下がる方法ですが、必ず医療スタッフの指示に従って行ってください。
- 救急車を呼んだ場合も、救急車到着前から体を冷やし始めることが必要です。
- 屋内で高齢者が重症の状態の場合は、体温をできるだけ早く下げるようにし、なるべく早く医療機関に搬送しましょう。
●水分・塩分の補給
- 応答が明瞭で意識がはっきりしている場合は、冷たい水を本人に持たせ、自分で飲んでもらいます。冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪い、体温を下げる効果があります。大量に汗が出ている場合は、汗で失われた塩分も同時に補える経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。食塩水(水1リットルに1~2グラムの食塩)も有効です。
- 意識障害がある(呼びかけや刺激に対する反応がおかしい、返答がないなど)場合は、飲んだ水が誤って気道に流れ込む可能性があります。また、吐き気や嘔吐の症状がある場合は、すでに胃腸の動きが鈍っています。このような場合には、口から水分を飲むことは避け、すぐに医療機関に搬送し点滴してもらうことが必要です。
●医療機関への搬送
- 自力で水分が飲めない場合は、水分と塩分を点滴で補う必要があり、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法です。
- 実際に、熱中症で医療機関を受診する人のうち約10%が入院が必要な状態であり、点滴や血圧・尿量のモニタリングなどの厳重な管理、肝障害や腎障害の検査を必要としています。
- 医療機関では以下のようなことを聞かれます。付き添う場合はできる範囲で事前にまとめておきましょう。

(出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル」)
十分に予防策を講じても、完全に熱中症を避けることはできません。また、周りの人が熱中症になる可能性もあります。万が一熱中症になってしまった場合は、できるだけ早く適切な処置を行い、重症化を防ぐように心がけましょう。
更新:2024.04.26