お酒の時間をもっと楽しむために。今一度見直したい「二日酔い」について

メディカルブレイン編集部

お酒を飲みすぎた翌日に襲いかかる、頭痛や吐き気、胃の不快感などといった体の不調——いわゆる「二日酔い」を、お酒を(たしな)む大人なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

忘年会などのイベントが続く年の瀬は、お酒を飲む機会も増える時期。楽しい時間を後悔しないためにも、二日酔いについて今一度見直し、できることから対策しましょう!

そもそも二日酔いとは?

二日酔いの正体は、何でしょうか?

お酒を嗜む人なら、アルコール摂取による脱水症状や浅い眠りによる疲労感、あるいはアルコールを体内で分解し切れなかったことによる翌朝の倦怠(けんたい)感などは実感したことがあるでしょう。しかし、実はそれだけではありません。そこで、まずは二日酔いの主な症状と原因を、おさらいしていきます。

二日酔いの症状

頭痛、胃もたれ・胃痛、吐き気、胸焼け、眠気、口の渇き、疲労感・脱力感・倦怠感、めまいなどのほか、不安・うつ気分、光や音に対する過敏症(感覚や認知の障害)、血圧上昇などが挙げられます。

二日酔いの症状には個人差があるため、これらの症状が必ず出るとは一概(いちがい)には言えません。一般的には自然に解消されていきますが、ひどい場合は24時間以上続いてしまうこともあります。

二日酔いの症状を引き起こす原因

  • 脱水症状
    アルコールによる利尿作用が脱水症状を引き起こし、頭痛や口の渇き、疲労感や脱力感などにつながります。
  • 睡眠障害
    飲酒によって強い眠気に襲われるものの、浅く断続的な睡眠になりやすいため疲れが取れず、疲労感をもたらします。
  • 消化管への刺激
    アルコールは胃の粘膜にとって刺激になり、胃酸の分泌量を増加させます。この酸で胃の内部がダメージを受けると、胃もたれや胃痛、吐き気や胸焼けなどといった症状が現れる場合があります。
  • 体内の炎症反応
    アルコールは体内の炎症を増加させるため、全身の倦怠感につながることがあります。
  • アセトアルデヒドの影響
    アルコールの代謝(分解)は主に肝臓で行われますが、アセトアルデヒドとは、アルコールがアルコール脱水素酵素(ADH)によって分解された中間代謝物質です。アセトアルデヒドは体内で分解できますが、分解する主要な酵素の働きが弱いと、アセトアルデヒドの血中濃度が急増してしまい、フラッシング反応と呼ばれる顔面の紅潮や吐き気、動悸(どうき)、頭痛や眠気などといった症状を引き起こしやすくなります。
  • 酒に含まれる不純物
    アルコール飲料に含まれる添加物などに由来する化合物が、二日酔いの症状の発現や悪化の原因になることがあります。
  • 軽度の離脱症状
    飲酒時のリラックス感や幸福感に対する中毒症状が見られる場合、酔いがさめることで不安感やうつ気分に(さいな)まれる場合があります。

肝臓によるアルコール分解の仕組みイラスト

このように、一言で二日酔いと言っても、その症状や原因は多岐にわたります。

二日酔いにならないためにできることは?

では、二日酔いを防ぐためにできることは何でしょうか?

一番の対策は「飲みすぎないこと」ですが、楽しさのあまりついつい飲みすぎてしまうこともありますよね。お酒と心地よく付き合っていくために「飲む前」「飲みながら」「飲んだ後」の、シーン別にできる対策を以下にまとめました。

飲む前の二日酔い対策

  • 飲酒前の飲食
    空腹時に飲酒すると、アルコールが胃腸で急速に吸収されてしまい、血中のアルコール濃度が急上昇します。飲酒する前に軽く食べたりアルコール以外のものを飲んだりしておくことで、胃腸内でのアルコールの吸収を緩やかに抑えます。
  • 体調管理
    体力や免疫力が低下していると、肝臓の働きも弱ってしまいます。寝不足や体調不良の状態での飲酒はできる限り控えましょう。
  • 飲みすぎを防ぐためのルールや環境作り
    自宅で一人で飲んでいると、ダラダラと飲み続けてしまいがち。量や時間を決めておく、食事と一緒の時にだけ飲む、などルールや環境を工夫するのもおすすめです。

飲みながらできる二日酔い対策

  • お酒の合間に水を飲む
    お酒とは別に、水やノンアルコール飲料を用意して合間に飲むことで、飲酒のペースや量を緩やかにすることができます。胃の中のアルコール濃度を薄められますし、脱水の予防にも効果的です。
  • 糖質やタンパク質、ビタミンB群の摂取
    糖質は、肝臓でアルコールを分解するエネルギー源になります。タンパク質はアルコールの分解酵素の働きを、ビタミンB群はアルコールの代謝をサポートする栄養素です。タンパク質を多く含む食材としては枝豆やチーズ、鶏肉などが挙げられ、ビタミンB群を多く含む食材は豚肉やブリ、ウナギなどがあります。
  • 飲酒時間を区切る
    楽しいからといって2軒目、3軒目とはしご酒をしていると、アルコールの分解がなかなか終わらず、二日酔いどころか酩酊(めいてい)状態を翌日に引きずることにもつながります。飲酒時間の終わりを決め、遅くまで飲み続けないようにしましょう。

飲みながら水を飲むイラスト

飲んだ後の二日酔い対策

  • 不足分の栄養補給
    飲む前はもちろんですが、飲んだ後も体調を整える行動は有効な対策の一つです。肝臓では糖の代謝(ブドウ糖の産生)よりもアルコールの分解が優先されるため、アルコール性の低血糖になりやすくなります。その場合は糖質を欲しがちですが、ラーメンなど胃に負担がかかるものは控えましょう。アルコールは胃腸の粘膜にもダメージを与えるので、お茶漬けなど負担の少ないものがおすすめです。
  • 水分の摂取
    寝る前までに水を飲んでおくと、脱水症状による頭痛の予防につながります。スポーツドリンクや経口補水液、ビタミンや糖質を補給できるオレンジジュースやトマトジュースなどでも代用できます。
  • 軽めの入浴
    脱水を促進させてしまう場合があるため、入浴はシャワーでササッと済ますか、ぬるめのお湯に短時間浸かる程度にとどめましょう。熱い湯船に長時間浸かる、サウナによる温冷交代浴などはなるべく控えてください。

二日酔いになってしまったら?

それでも、ついつい飲みすぎて二日酔いになってしまうことも。そんな場合の対処法を、以下にまとめました。

二日酔いは対症療法のみ

残念ながら、二日酔いに対する特効薬や即効性のある治療法は存在しません。以下のような対症療法を試みながら、時間の経過とともに症状の改善を待つのが一般的です。

  • 水分をしっかり摂る
  • 光や音などの刺激を軽減する
  • リラックスできる服装で安静に過ごす
  • 頭痛や胃の不快感、吐き気などには、それぞれの症状に対する市販薬や医薬品を使用する

医療機関を受診する必要がない場合がほとんどですが、症状が重度な場合、また何日も続くような場合は、内科をはじめ症状に見合った医療機関に相談してください。

二日酔いにまつわる迷信についてのQ&A

誰もが一度は耳にしたことがあるような二日酔いについての迷信は、数多く存在します。今回、その一部の真偽を検証してみました。

Q1:迎え酒は二日酔い対策に有効?

答えは×です。飲酒による酔いが二日酔いの症状を麻痺(まひ)させているだけ。むしろ、二日酔いの症状が長引く結果になりかねません。

Q2:「ちゃんぽん(複数種類のアルコールの飲酒)」は、二日酔いになりやすい?

こちらも×です。二日酔いはアルコール量と吸収速度に起因するため、関連するのは飲酒量です。ただ、さまざまな種類のお酒を飲むことで飲酒の総量がわかりにくくなり、飲みすぎにつながりやすくなってしまうということはあり得ます。

Q3:「コーヒーを飲む」「熱いシャワーを浴びる」などの行動が二日酔い対策に効果が期待できる?

先に述べた通り、二日酔いに対する即効性のある薬や治療法はありません。そのため、この答えも×です。二日酔いを避けるためには、飲酒量を制限する以外にないと心得ましょう。

Q4:飲酒後に飲む貝のみそ汁は、二日酔い対策になる?

こちらは○。シジミに含まれる「オルニチン」はアセトアルデヒドの分解を、アサリやカキなどに多い「タウリン」は肝臓の解毒作用を助けるとされています。塩分と水分を同時に摂取できるみそ汁は、アルコールの利尿作用による塩分の排出や胃腸へのダメージに対しても有効です。

Q5:ウコンの摂取も二日酔いに影響がある?

ウコンに含まれる「クルクミン」には、アセトアルデヒドを分解する肝臓の機能を高める効果が期待されます。よって、この答えも○。しかし、一度の大量摂取は逆に肝機能障害を引き起こす場合があるため、注意が必要です。

飲んだ後貝の味噌汁を飲むイラスト

二日酔いに対する知識を改めて見直し、忘年会などのイベントが続く年の瀬を元気に乗り切りましょう!

更新:2024.12.06