最先端の技術を駆使した診断と治療 肺がん
徳島大学病院
呼吸器・膠原病内科
徳島県徳島市蔵本町

肺がんの特徴
2013(平成25)年の統計では、日本人のがんによる死亡のうち、肺がんによる死亡率が男女ともに1位となっています。肺がんの死亡率は今後も増加していくものと予想されており、数あるがんの中でも予後の悪い(たち〈回復経過〉の悪い)がんと言えます。予後不良の理由として、以下のことが挙げられます。
1.症状に出にくい
肺の中は痛覚神経が発達していないため、がんが出来ても痛くもかゆくもないことはよくあります。全く症状がないケースも多い病気ですから発見(診断)の遅れにつながります。実際、肺がんの約7割は進行した状態で発見されます。
2.進行が速い(遠隔転移しやすい)
がん細胞は、血流に乗ってほかの臓器に運ばれ、そこで大きくなる性質を持っており(遠隔転移)、予後不良の原因となります。肺がんは脳、骨、肝臓などに遠隔転移しやすいといわれています。
3.抗がん剤や放射線治療が効きにくい
現状では、肺がんは薬や放射線治療が効きにくいがんの一つです。ただ、最近の医療技術の進歩によって、特定の肺がんに対しては分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)が劇的な効果を示すことが知られています。
最先端の技術を駆使して診断
肺がんの診断は幾つかのステップに分かれます。
- 肺がんを疑うような症状(咳(せき)、血痰(けったん)、胸痛など)がある場合や、検診で異常を指摘されたときは、胸部単純X線検査(レントゲン)やCT検査などを行います。これら画像診断で肺がんが疑われる場合は、次のステップに進みます。大切なことは、画像に写る「影」だけでは肺がんと確定できないことです。
- 画像で肺がんが疑われた場合、実際にその場所から細胞や組織を採取することで肺がんと診断できます。アプローチの方法としては、気管支内視鏡検査(きかんしないしきょうけんさ)、CTガイド下経皮的肺生検、胸腔鏡検査(きょうくうきょうけんさ)のいずれかが主に使われます。気管支内視鏡検査は、ファイバースコープを口、または鼻から気管支に挿入して検査します(写真1)。CTガイド下経皮的肺生検はCTを撮影しながら、体表から肺に針を刺して検査します。これらはいずれも局所麻酔下に行います。胸腔鏡検査は、胸部を小さく切開し、胸腔内に内視鏡を挿入する方法で、多くは全身麻酔下で行います。
- 肺がんが確定すれば、病期(どれくらいがんが広がっているか)を決定するため、MRI、シンチグラフィーなどの検査を行います。当院では、PET/CTや超音波気管支鏡(EBUS)など最先端の診断技術を導入し、所属リンパ節転移や遠隔転移の評価をより正確に行っています。

肺がんの治療
肺がんの治療は手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療の大きく3種類に分かれます。呼吸器・膠原病(こうげんびょう)内科では主に化学療法を担当します。手術を担当する呼吸器外科、放射線治療を担当する放射線科と合同で週1回、症例検討会を行い、肺がん患者さんの包括的な治療をめざします。また、より良い治療をめざした薬の臨床試験も行っています。確かに、進行期の肺がんは治癒することが難しい病気ですが、最近では、がん細胞に特有の遺伝子異常が複数発見され、その分子をターゲットにした新しい分子標的治療薬が次々と開発承認されています。
遺伝子異常があれば、劇的な効果が期待でき(写真2)、遺伝子の検査をもとに患者さんに合った薬を選択する個別化医療を進めています。患者さんの生活の質を保つため、できるだけ外来治療をしながら、どんな治療がその患者さんにとってベストなのかを常に患者さんや家族と一緒に考えながら治療するよう心掛けています。

予防が大切
肺がんは予後の悪い病気なので、予防が大切です。予防策としては、「1に禁煙、2に検診」です。できるだけ早く禁煙することで、肺がんになる確率を減らすことができ、定期的に検診を受けることで早期発見できれば、治癒する可能性も高くなります。
飲み薬や貼り薬による禁煙治療は2006年から保険適用となりました。当科でも禁煙外来を開設しています。約3か月のプログラムに沿って治療しますので、自己流よりも容易に禁煙することができます。禁煙したいけれど自信がない、うまくいかない人にお勧めします。
更新:2022.03.04