PDT- 中心型早期肺がんに対する低侵襲レーザー治療 中心型肺がん
徳島大学病院
呼吸器外科
徳島県徳島市蔵本町

中心型肺がんとその治療
肺がんは発生する部位によって、大きく中心型肺がんと末梢型肺がんに分けられます(図1)。中心型肺がんとは、比較的太い気管支にできる肺がんのことです。中心型肺がんを手術で切除するには、がんができた気管支とともに肺を広範囲に切除しなければいけない場合が多いため、術後の呼吸機能低下が避けられません。

しかし、早期発見できた場合、手術を行わないで光線力学療法というレーザー治療でがんを根治(完全に治すこと)できることがあります。光線力学療法はPhotodynamic Therapyの頭文字をとってPDTと呼ばれています。中心型肺がんは喫煙者に発生しますが、喫煙者は何回も肺がんができたり、もともと肺機能が低下していたりして手術をできないことがあります。そういったケースにPDTは威力を発揮します。
PDTの原理
PDTはレーザー治療の一種ですが、レーザーを照射する前に薬を注射する必要があります。この薬は「レザフィリン」という名前で、注射して4時間程度で肺がんの部分に集まってくる性質があります。
この薬には、赤色のレーザー光線を当てると化学反応を起こして活性酸素を発生する性質もあり、この活性酸素は組織にダメージを与えます。これらの性質を利用してPDTは肺がんに効果を発揮します。
PDTの実際
具体的なPDTの方法について――。午前中に「レザフィリン」を注射し、4時間後にレーザー治療のために治療室へ移動します。レーザー照射は気管支鏡を使って行います。気管支鏡は直径5mm程度の内視鏡で、十分に喉(のど)の麻酔をした後に口から気管支へ挿入します。医師はモニター画面を見ながら、肺がんの部分を狙ってレーザー光線を照射します(写真1)。

レーザー照射による痛みは一切ありませんが、内視鏡が喉を通って気管支に入っている違和感を軽減するため、点滴で軽い麻酔をすることもあります。治療にかかる時間は30分程度。治療が終わって2時間もすれば、水分や食事を取ることができ、歩くことも自由にできます。
レザフィリンは肺がんの部分に集まりますが、注射してから数日間は皮膚にも少々残ります。この時期に強い光に当たると、皮膚がやけどを負ったようになってしまいます。このため、治療後はしばらく、強い光の当たらない環境で過ごさなければいけません。入院中もなるべく肌を露出しない服装で過ごし、必要なとき以外は廊下にもなるべく出ないようにします。
入院期間は約1週間で、退院前に一度、治療後の状態を確認するため気管支鏡検査を行います。退院後もがんの再発がないか、定期的に気管支鏡検査を行って経過をみる必要があります。
早期発見が何よりも大切
PDTは体にやさしい肺がん治療ですが、PDTを受けるためには早期の段階でがんを発見することが不可欠です。中心型肺がんはX線写真やCTでも写らないことが多いため、ヘビースモーカーについては定期的に痰(たん)の細胞診検査を受けることや、長引く咳(せき)や血痰(けったん)などの症状があるときは、早めに気管支鏡検査を受けることが大切です。
当院では「蛍光気管支鏡検査」にも力を入れています。蛍光気管支鏡は正常組織とがんを色分けして表示することができることから、普通の気管支鏡では発見できないような早期のがんの発見に役立ちます(写真2)。

PDT後のがんの再発も早期発見できるので、早期に再治療を行うことで根治をめざすことが可能になります。ヘビースモーカーや心配な症状がある人は一度、当科または呼吸器内科外来を受診することをお勧めします。
更新:2022.03.04