二重に見えてお困りの方へ 斜視

徳島大学病院

眼科

徳島県徳島市蔵本町

左右の視線がずれて、ものが二重に見える

人間は左右の目が同じ方向を向いています。見る方向が変わっても左右の目が同時に動くので、正面だけでなく上下左右どの方向を向いても視線がそろっているのが正常です。何らかの原因で左右の視線がずれるのを斜視といいます。「図1」のようにいろいろなタイプがあります。

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図1 斜視のタイプ

斜視になると、1つのものが2つに見えます。これを複視といいます。例えば、車道のセンターラインが2本に見えたり、1人の人が2人に見えたりして生活に不自由が出てきます。ただし、生まれつきや小さい頃からの斜視の場合は、片目で見る癖がつくので二重には見えません。

当科では、斜視の患者さんが受診されると、通常の眼科検査以外に斜視検査を行います。「写真1」は器械を用いて斜視の量や見え方を検査しているところです。必要に応じ、採血や画像検査(CTやMRI)を追加することがあります。斜視の原因を調べて、それに応じた治療を行います。

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写真1 斜視検査
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写真2 斜視検査の様子

原因はさまざま

斜視の原因としては①目を動かす筋肉「外眼筋」の異常②筋肉を動かす神経の異常③眼球周囲の異常などが考えられます。

①は、甲状腺眼症(こうじょうせんがんしょう)(甲状腺疾患に伴う眼球運動障害)、外眼筋炎(筋肉が炎症を起こして動きにくくなる)、重症筋無力症(神経からの指令が伝わりにくい)など、外眼筋がうまく作用してくれない病気です。それぞれ、内服や点滴、眼球周囲への注射などを行います。甲状腺眼症では放射線治療を行う場合もあります。

②は、筋肉を動かす指令は脳から神経を通って伝わりますが、脳腫瘍(のうしゅよう)や動脈瘤(どうみゃくりゅう)、けがなどでそれらの神経経路に障害が起こり、外眼筋の動きが悪くなるケースです。これらは命にかかわることもあるので、急いで診断、治療を行う必要があります。糖尿病や加齢のため、わずかな神経障害が起こる場合もあります。こちらは数か月単位で自然治癒する場合があります。

③は、眼球が入っている眼窩(がんか)という目のくぼみに腫瘍ができたり、眼窩の骨が骨折したりして、目の動きが悪くなるものです。主に手術で治療します。

斜視手術やプリズム眼鏡で治療

原因治療を行っても複視が残った場合や原因不明の場合は、斜視手術やプリズム眼鏡処方を行います。手術は、「図2」のように外眼筋の位置を付け替えて、筋肉の効果を弱めたり強めたりします。斜視手術は比較的安全な手術で、大人は局所麻酔の日帰り手術で行うことが多く、手術時間は1時間程度です。術後は痛みや異物感、見え方の変化のため、1週間程度の休養が望ましいです。

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図2 斜視手術の方法

1回の手術で治る人が多いのですが、程度がひどい場合は2回以上の手術が必要になる場合もあります。

プリズム眼鏡は視線のずれを矯正するための眼鏡で、小角度のずれには有効です。この眼鏡は見かけ上は普通の眼鏡とほぼ変わりません。

ちなみに、片目で見ても二重に見える場合は、乱視や白内障などが原因で起こります。いずれにしても複視が出た際は、早めに眼科を受診してください。

更新:2022.03.04