歯科用コーンビームCTによる画像診断 歯科画像診断

徳島大学病院

歯科放射線科

徳島県徳島市蔵本町

コーンビームCTとは?

コーンビームCTというのは、患者さんに円錐(えんすい)(コーン)状に広がるX線を照射しながら装置を回転させて撮影を行い、得られた画像情報を基にコンピューターで3次元像を生成する装置を言います(写真1)。普通のX線CT装置とは異なって面状に広がる2次元の検出器を使うことで、装置が1回転(または半回転)する撮影で3次元再構成に必要な投影データが得られます。普通のX線CT装置に比べて細かく表示できる3次元像が得られるため、患者さんの体の断面を細部まで立体的にいろんな角度から観察することができます。

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写真1 コーンビームCT撮影

検査のときには撮影領域が狭いため、患者さんの被曝量(ひばくりょう)は従来の装置に比べて大変少ないという特徴があります。半面、骨や歯などの硬組織を詳しく観察することはできますが、筋肉や内臓などの軟組織は区別して見ることができないという欠点があります。ただ、歯科の領域では多くの疾患が硬組織に関連するものなので、非常に便利な検査装置だと言えます。

歯科で使っているコーンビームCTは、歯科用CT、歯科用コーンビームCTと呼ばれています。検査の目的は、主に①歯科インプラントの術前検査として歯が抜けた後の顎(あご)の骨の質を診査したり、インプラントを入れられるだけの骨の大きさ(厚さや高さ)があるのかどうか診断する②親知らずの抜歯の際、歯の周りの骨の厚さや歯の根と骨の内にある神経との位置関係を術前に診査する③歯科矯正での埋伏歯(まいふくし)(骨に埋もれたままの歯)の状態を診査する④口を開けると顎で音が鳴ったり、痛くて開けられないなどの、顎関節(がくかんせつ)(顎の関節)症状に対して関節部の骨に異常がないかどうか診査する⑤歯周病や歯の神経に対する歯科治療の診断に使われています。

3次元の高画質画像を使うことで、通常行われている歯科のX線検査(断層方式パノラマX線撮影法や口内法X線撮影法)では診断できない痛みや、そのほかの症状の原因が判明することがあります。

撮影は専用のいすに座って頭や顎をテープなどで固定して行います。撮影時間はおよそ10数秒です。

コーンビームCTの特徴

歯科用コーンビームCT検査の特徴をおおまかにまとめると次の通りです。

【利点】

  • 細かく観察できる(空間分解能が高い)
  • 金属による画像の乱れが少ない
  • いすに座ったままの撮影で、閉塞感(へいそくかん)が少ない

【欠点】

  • 撮影できる範囲が狭い
  • 軟組織の診断ができない
  • 画像にノイズが出る
  • 普通のX線CTのようには、CT値に基づいた診断を行えない

最後に画像を幾つか紹介します。「写真2」は下顎の前歯を歯科用コーンビームCT(左)と通常のCT(右)で、それぞれ撮影した画像です。コーンビームCTの方が詳細に観察できるのが分かるでしょうか。

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写真2 下顎の前歯の歯科用コーンビームCT(左)と通常のCT(右)

「写真3」はコーンビームCTで撮った下顎の親知らずです。親知らずの抜歯術前検査として、歯根の形やその近くにある神経管との位置関係を調べるために行ったものです。写真に示す矢印の丸く黒い部分は神経管を示しています。親知らずの歯根のすぐそばを神経管が通っていることが分かります。このような術前の情報は非常に大切なものです。

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写真3 コーンビームCTで撮った下顎の親知らず

「写真4」は顎の関節の像です。関節の骨の位置や骨の構造には異常のないことが分かります。「写真5」は矢印で示す上顎の親知らずが逆向き(上向き)の状態で骨に埋もれており、「写真6」では同じく上顎の前歯の裏側に過剰歯(正常な歯の数より多く発生した歯)ができて逆向きに埋もれているのが分かります。「写真7」は、歯根の先に病巣ができて骨が吸収されて(溶かされて)いるのが分かります。

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写真4 顎の関節の像
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写真5 上顎の親知らずが逆向きの状態
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写真6 上顎の前歯の裏側にある過剰歯
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写真7 歯根の先の病巣

このように歯科治療のための画像検査の一つとして、当院では歯科用コーンビームCTを活用しています。

更新:2022.03.04