パノラマX線検査法やCT、MRI検査 顎関節症の画像診断

徳島大学病院

歯科放射線科

徳島県徳島市蔵本町

顎関節症とは?

3つの特徴的な症状があります。1つ目は、顎(あご)の関節の痛みです。2つ目は、顎を動かすと耳の前で「カクンカクン」とか「ジャリジャリ」という音がすることです。そして、3つ目は、口を大きく開けることができないという症状です。

3つ全部が現れる場合もありますし、1つだけの場合もあります。左右の関節のうち、片方に症状が出る場合が多いようですが、両方に症状が出る場合があります。

この顎関節は、頭の骨(頭蓋骨(ずがいこつ))の凹みと下顎の骨(下顎骨)の突起で構成されていて、両者の間にクッションとして関節円板があり、それを筋肉と靱帯(じんたい)が取り巻いています(図)。それらがスムーズに機能することで、食べ物を噛(か)んだり、話しをすることができるのです。

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図 顎関節の構造

病状と発症の多い年齢は?

顎関節に関係する筋肉に問題がある場合や、顎関節の骨に問題がある場合、さらに関節円板の位置や形に問題がある場合、に分かれます。これらのうち2つ以上が複合する場合もあります。

子どもから高齢者まで幅広く認められます。特に20~30歳代の女性に多いようです。当院の歯科診療部門を訪れる新しい患者さんでは、むし歯や歯周病に次いで多く、年間約400人(全体の約15%)が受診しています。

原因は?

くいしばりや歯ぎしりは、知らず知らずのうちに顎関節やその周囲の筋肉に負担をかけ、その状態が長期にわたると症状が出る場合があります。また、歯が抜けたままだったり、噛み合わせが悪かったりすると顎関節症の原因になるといわれています。

さらに、うつぶせ寝、頬杖(ほおづえ)をつく癖など、日常生活の中にも原因があるとされていますが、顎関節症の発病には多くの要因が関係しており、明確な原因は分かっていません。

検査法は?

画像検査に先立って、困っている症状や経過などについて詳しい聞き取りを行います。次に、顎関節部の触診や口の中の噛み合わせを含めた状態の診査を行います。顎関節を構成する骨や関節円板の異常が疑われる場合は、以下の画像検査の対象となります。

当科は、主に顎関節症外来からの画像検査を行っています。最も一般的な検査法は、パノラマX線検査法(写真1)です。この検査は、顎関節の骨の状態を診断することができるほか、顎関節以外に原因がないかを確認することも可能です。同じ装置を使って、口を閉じた状態と口を開けた状態を比較するパノラマ顎関節X線検査法(写真2)も行っています。

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写真1 パノラマX線検査法
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写真2 パノラマ顎関節X線検査法

さらに詳しい検査が必要なときは、歯科用CT検査(写真3)やMRI検査(写真4)を行います。歯科用CT検査では、顎関節を複数の方向から断面像を得ることができ、特に、骨の構造に関して詳しい情報をつかむことができます。一方、MRI検査では被曝(ひばく)がなく、関節円板と骨の状態を同時に診断することができます。検査時間は20分ほどで検査中に痛みはありません。

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写真3 歯科用CT検査(『補綴臨床 別冊 基本臨床画像診断』佐野司・倉林亨編、医歯薬出版より)
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写真4 MRI検査

治療法と予防法は?

痛みが強い場合は痛みを和らげる薬が処方されます。症状が安定したら無理のない程度に口を動かす練習や、入れ歯のようなマウスピースを付けて噛み合わせの調整を行います。ただし、歯並びの状態や症状の強さなど患者さんの症状によって治療方法は異なります。

以上のような治療を続けても十分な効果が得られない場合は、顎関節腔(がくかんせつくう)洗浄療法などの外科的治療が行われる場合もあります。

顎関節症の予防には無意識に歯をくいしばらない、パソコン作業の際に適切な姿勢を保つ、ストレスが溜(た)まらないような生活に努めることが大切です。

更新:2022.03.04