基礎情報

概要

睡眠障害とは、睡眠に問題があり日常生活に支障が出る病気の総称です。厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf)によると、直近1カ月間に週3回以上「睡眠全体の質に満足できなかった」という人は、男女とも約22%でした。また、20~50歳代では男女とも「日中、眠気を感じた」、70歳代の女性では「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」と答えた人がもっとも多かったという結果が出ています。

睡眠障害には、不眠症、過眠症、概日リズム睡眠障害、睡眠呼吸障害などさまざまな種類があります。原因も生活習慣やストレス、身体的な病気、服用している薬、食品の影響などさまざまです。治療では生活習慣や睡眠習慣の改善を行います。

症状

睡眠障害を引き起こす病気は数多くありますが、代表的な病気の症状を紹介します。

不眠症

寝付きが悪い入眠困難、寝ていても途中で何度も目覚めてしまう中途覚醒、眠りが浅い熟眠障害、睡眠が足りていないのに朝早く目覚めてしまう早朝覚醒などがあります。十分に睡眠が取れないことにより、疲れが取れない、注意力や集中力が低下する、気分が変わりやすいなどの症状が現れます。

過眠症

十分な睡眠を取っていても、起きている時間帯に強い眠気があり、仕事や学校など日常生活に支障をきたすような症状です。一日中眠気が続く特発性過眠症や、寝てはいけない重要な時であっても強い眠気に襲われたり、脱力が起こるナルコレプシーといった現象が起きます。

概日リズム睡眠障害

生物には体内時計が備わり、地球の自転周期による昼夜の変化に合わせて、睡眠と覚醒のリズムなどを調整しています。概日リズム睡眠障害は、その体内時計と昼夜のサイクルにずれが生じ、眠りたい時間に眠れず起きたい時間に起きられないという状態です。

睡眠時呼吸症障害

代表的な疾患は、睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に舌が喉(のど)に落ち込んで気道が塞がれることで、大きないびきをかき、時々呼吸が止まります。すると一時的に目が覚め、睡眠が妨げられます。子どもにも現れ、落ち着きがなく学習面に支障をきたし、成長や発達が遅れたりすることがあります。

レストレスレッグス(むずむず脚)症候群

布団に入って寝ようとすると足がむずむずして動かさずにはいられず、眠りにつけないという症状が起こります。

睡眠時随伴症

睡眠中に異常な行動や体験をする病気です。睡眠の状態は、浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠に分けられます。

レム睡眠時に起こる睡眠時随伴症には、悪夢を頻繁に見ることで眠りが妨げられる悪夢障害、大声の寝言、奇声、暴力的な動作など、夢の中の行動がそのまま現れるレム睡眠行動障害などがあります。

ノンレム睡眠時に起こる睡眠時随伴症としては、突然叫んだり泣き出したりする夜驚症、無意識のまま動き回る睡眠時遊行症などが挙げられます。

原因

不眠症

眠れるかどうかを心配して不安になり、緊張して眠れなくなる精神生理性不眠、原発性不眠症、病気の治療のために用いている薬剤の副作用で不眠になる薬原性不眠、かゆみや痛みなど体の不調が原因の不眠、うつ病や神経症など精神疾患が原因の不眠、アルツハイマー病やパーキンソン病など脳に関係する疾患が原因の不眠などがあります。

過眠症

特発性過眠症は、髄膜炎(ずいまくえん)や頭のけががきっかけとなり発症することがあります。ナルコレプシーは脳内の覚醒に関わる神経伝達物質の低下が原因です。そのほか、風邪薬、抗アレルギー薬、抗うつ薬などの副作用で過眠が引き起こされることもあります。

概日リズム睡眠障害

日勤と夜勤などシフト勤務がある人は、概日リズムがずれやすくなります。また、夜型で起床時間が遅い生活をしていると、朝型の生活に戻すことが難しくなります。逆に夕方に眠くなり就寝し、深夜に目覚めてその後は眠れないという人もいます。

睡眠呼吸障害

睡眠時無呼吸症候群は、肥満、首が短い、上気道が狭い、下あごが小さいなど、身体上の原因が大きく影響します。成長ホルモンの過剰分泌による先端巨大症、甲状腺機能低下症なども原因となりやすいとされています。

レストレスレッグス(むずむず脚)症候群

慢性腎不全、鉄欠乏性貧血、胃の切除などで鉄分が欠乏し、感覚の制御に関わる機能が低下することや、神経に関わる病気が原因で起こると考えられています。

睡眠時随伴症

レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症やパーキンソン病との関連性が知られています。夜驚症と睡眠時遊行症は小児期に始まり、青年期までには治まるとされます。神経系の発達度が関係していると見られます。

検査・診断

睡眠障害かどうかは、睡眠に関する問診や検査などを行い診断します。血液検査、心電図検査、頭部MRI検査、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)、反復睡眠潜時測定検査(MSLT検査)などです。終夜睡眠ポリグラフ検査では、入院して一晩かけ、脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸曲線、いびき、動脈血酸素飽和度など睡眠の状態を細かく調べます。過眠症、睡眠時無呼吸症候群、睡眠時随伴症などの診断に用いられます。反復睡眠潜時測定検査は日中(起きている時間帯)2時間おきに5回、眠りにつくまでの時間を測ることで眠気の強さを判定します。ナルコレプシーなどの診断に必要です。

治療

不眠症の治療では規則正しく生活し、生活習慣や睡眠環境の改善を図るほか、必要に応じて薬物を用います。特発性過眠症やナルコレプシーでは覚醒を維持するための薬が使われます。概日リズム睡眠障害では、体内時計のリズムを変えるために光治療(高照度光療法)を行うことがあります。睡眠時無呼吸症候群の治療としては、マウスピースの装着や気道がふさがらないよう鼻マスクをつけて気道に空気を送り込む持続陽圧呼吸療法(CPAP)などがあります。レストレスレッグス症候群には、原因と考えられる病気の治療や生活習慣の改善などで対応します。睡眠時随伴症では精神療法や薬物療法を行います。

予防

厚生労働省が「健康づくりのための睡眠指針 2014」にて、以下の睡眠12 箇条を推奨しています。睡眠障害の予防に役立つ内容です。

表
表:睡眠12箇条

更新:2022.08.25