関節リウマチ治療のスペシャリストによる最新の治療

福井大学医学部附属病院

感染症・膠原病内科

福井県吉田郡永平寺町

関節リウマチとは

骨や関節、筋肉など、体を支え動かす運動器官が全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。このうち、関節に炎症が続いたのち、徐々に破壊され、やがて機能障害を起こす病気が「関節リウマチ」です。関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫(は)れと痛み」です。最も起きやすいのが、手足の指や手首の関節です(図1)。また、関節リウマチの症状は「対称性」といって、左右両側の関節に現れることが多いのが特徴です。関節リウマチは、腫れを伴って、じっとしていても痛いのが大きな特徴で、その痛みはよく「かみつかれたような痛さ」ともいわれます。

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図1 関節リウマチの関節症状

関節リウマチの発症のピークは30~40歳代で、性別では女性に多く、男性に比べ5~6倍の有病率です。しかし、60歳代からの発症も少なくなく、高齢発症関節リウマチでは男女の発症率に差はありません。関節リウマチの原因は、免疫機構に異常が生じることにより、自分の体の成分や組織を外敵と誤り、攻撃して排除しようとしてしまうことです。その結果、関節に炎症が起きるわけです。そして、関節が破壊されていきます。炎症が続くと、関節の中にある「滑膜(かつまく)」に血管や細胞が増えて、厚く腫れてしまいます。腫れあがった滑膜はやがて骨の軟骨部分や靱帯(じんたい)を破壊し、進行すれば骨まで破壊してしまうのです(図2)。

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図2 関節リウマチの関節

治療は薬物療法が中心

関節リウマチというと、将来的には「寝たきり」というイメージが持たれた時代もありました。しかし最近では、よい薬が増え、薬の使い方も上手になり、関節リウマチは痛みをとるだけの治療から、健康な人に近い日常生活を送ることができるまでに進歩しました。関節リウマチの治療の基本は、病気の進行を抑えることと、痛みをとること、関節が壊れるのを防ぐことです。

痛みというのは関節リウマチの場合、①炎症による痛み、②増殖した滑膜による痛み、③関節が破壊された痛み、の3種類があります。それぞれの痛みにあわせて、薬物療法、手術療法、リハビリテーション(リハビリ)を用いた治療が行われます。関節の異常な炎症、滑膜の増殖、および関節機能の低下を抑えるために、主に薬による治療(薬物療法)を行います。

関節リウマチの薬物治療で使用する薬

単に炎症や痛みを抑えることが目的の薬

  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)
  • 副腎皮質ステロイド

病気の進行を鎮静化させることが目的の薬

  • 抗リウマチ薬(DMARD)
  • 生物学的製剤
  • JAK阻害剤

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)や副腎皮質ステロイドは痛みや炎症を抑えるには優れた薬ですが、関節機能の低下を抑えることができません。したがって、患者さんのQOL(生活の質)の改善のために用いられます。

抗リウマチ薬(DMARD)、生物学的製剤およびJAK阻害剤は、関節炎を鎮静化させて関節機能の低下を抑えることができるため、患者さんがこれまでと変わらない生活を送れるようにする(予後の改善)ために用いられます。しかし、これらの薬は効果が現れるまで時間がかかります。

国内で使用されている生物学的製剤

関節リウマチ治療において、現在、国内では7種類の生物学的製剤が使われており、いずれも注射薬(皮下注射または点滴)です。皮下注射できる薬は、医療従事者からの十分な指導を受けることにより、自分で注射(自己注射)することも可能です。注射器もいろいろと工夫されており、ペン型の製剤や、針が見えないようなデザインになっているものなど、さまざまな種類のものがあります。

生物学的製剤の働きかた

関節リウマチでは、TNFやIL-6などのサイトカインと呼ばれる物質が異常に産生されたり、T細胞などの免疫応答を司る細胞が異常に活性化してしまうことで、炎症や痛み・腫れが生じ、骨や軟骨などの関節が壊れると考えられています。生物学的製剤は、サイトカインやT細胞の働きを直接抑えることにより、その効果を発揮します。

膠原病(こうげんびょう)治療の専門家

関節リウマチの治療は、生物学的製剤の出現により劇的に変わり、新時代を迎えたといわれています。当科では7種類すべての生物学的製剤を採用しており、患者さんの背景や病状にあわせて選択し、治療を行っています。また、生物学的製剤の自己注射を円滑に導入できるよう、在宅療養室と連携し、器械・器具の取り扱いや手順についての説明、物品調整を行い、療養がスムーズに継続できるように支援しています。

ここが安全・安心――感染症治療の専門家

生物学的製剤はDMARDに比べ、非常に高い炎症抑制作用がありますが、免疫を抑える力も併せ持っているため、肺炎や結核などの感染症の発生に注意が必要です。さらに本薬剤は高価であるのも特徴です。生物学的製剤の治療を開始するにあたっては、その必要性、効果、安全性および費用に関して医師と十分に相談することが大切です。

当科は、膠原病診療の専門科であると同時に感染症も専門としています。生物学的製剤で免疫力が低下して感染症を発症されても、各種感染症の診療経験豊富なスタッフのもとで、適切な感染症治療も早期に行うことが可能です。

更新:2024.10.07