症状をゼロにー気管支ぜんそく、肺の生活習慣病COPD

呼吸器内科

気管支ぜんそく、COPDはどんな病気?

どちらも肺の中の空気の通り道、気道が炎症を起こしている病気です。息が切れたり、呼吸とともにヒューヒュー・ゼーゼーと音がしたり、咳や痰が増えるなどの症状がでます。

気管支ぜんそくでは慢性的な炎症のおきている気道が、ウイルス感染(かぜ)やアレルゲン(アレルギーの原因物質)の侵入によって刺激され、咳やヒューヒュー・ゼーゼーを伴う発作性の呼吸困難、いわゆる「ぜんそく発作」を起こすのが特徴です。ぜんそく発作は夜間~明け方に起きることが多いとされていますが、あまりぜんそく発作を自覚していない患者さんもいます。

COPD(シーオーピーディー:慢性閉塞性肺疾患)はタバコが原因で、細い気道に炎症が起き、肺で酸素を取り込む大事な役割を担う肺胞が壊され、呼吸の働きが損なわれる病気です。従来、肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気です。タバコが原因の生活習慣病とも言えます。日本ではCOPD は男性死因の第8位で高齢者の割合が高いのが特徴です。咳、痰、動いたときの息切れなどが主な書状です。

どんな治療?

気管支ぜんそくもCOPDも普段の治療は吸入薬(口から吸うお薬)を主に用います。気管支ぜんそくでは、炎症を抑えるためにステロイドを含む吸入薬を使用するのが大原則です。一方。COPD は禁煙に加えて、細い気道が狭くなるのを改善するために、長い時間効果のある気管支拡張薬を使うことが大事です。最近では2種類の気管支拡張薬を含む吸入薬や血液中の好酸球と呼ばれる白血球の数が多い患者さんではステロイドを含む気管支拡張薬が使われます。

気管支ぜんそくの患者さんは症状が落ち着いてもステロイドを含む吸入薬をきちんと続けて使用し、日常生活に全く支障のない状態を維持することが大事です。COPDも吸入薬を継続して使用して、症状、生活の質を向上させること、さらに運動療法などの呼吸リハビリテーションも効果があります。

重症ぜんそくの治療

ぜんそくの患者さんの多くはステロイドを含む気管支拡張薬の吸入を続けることで日常生活に支障をきたすことはなくなりますが、ごく一部の患者さんでは十分量の吸入薬を続けても発作を起こしてしまう方がいます。このような重症のぜんそく患者さんでは、気道の炎症の原因になっている物質や細胞を抗体と呼ばれるお薬を定期的に注射して抑え、ぜんそく発作をなくすことができるようになってきました。鼻炎、副鼻腔炎、皮膚炎などのぜんそくに合併する病気にも有効な場合があります。現在では5種類の注射薬が使えるようになり、4種類の注射薬は患者さんご自身が注射することも可能です。

また、重症のぜんそく患者さんのなかで、注射薬が効きにくい患者さんや咳が激しいような特殊な重症ぜんそく患者さんでは気管支サーモプラスティという気管支鏡という内視鏡を使った治療も行っています。気管支の内側から特殊なカテーテルを使って加熱し、平滑筋という気道をとりまく筋肉の量を減らしてぜんそく症状を軽くするものです。当院では現在、全身麻酔で治療を行っています。眠っている間に安全かつ確実、丁寧に治療することができます。

症状ゼロを目指して

これらの治療により、気管支ぜんそくでは症状をなくし、健康な人と変わらない生活をすることが可能であり、COPDでは息切れの進行を食い止めることができます。まずは禁煙、そして私たち医療チームと二人三脚で治療を進めていきましょう(写真)。

写真
写真 治療風景
手術室で、複数の医師が安全に行っています

「自分らしく生活して自分らしい最期を迎える」ための療養生活における支援

気管支ぜんそく、COPD、間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患は、糖尿病や高血圧と同じで完治する病気ではありません。また、「息がつらい」という体験や不安とともに生活していかなければなりません。もし、慢性呼吸器疾患だと診断されたら、病気と向き合い、折り合いをつけながら生活していくことが必要となります。そのためには、自分の病気を理解し、日常生活を工夫しながら生活していくことが大切になってきます。

慢性呼吸器疾患患者さんは、内服や吸入、酸素療法など自己管理をしながらの生活となります。病気と向き合い、折り合いをつけながら生活していくためには、病気を理解することが必要です。例えば「間質性肺炎」と、よく耳にする「肺炎」は違う病気で、治療方法や日常生活の注意点なども異なります。自分の病名は何で、どんな症状があるのか、どんな治療方法があるかを理解して療養生活を送ることが大切です。療養生活のキーワードは「病気を自己管理しながら、自分らしく生活する」です。

自分らしく生活する完成形が「自分らしい最期を迎える」です。自分らしい幕引きができるように、元気なときから延命治療やお葬式についての希望を書く「エンディングノート」を準備する人が増えています。健康であっても病気があっても、人には必ず最期が訪れます。どこでどんな最期を迎えたいか考え、家族と話し合うことが大切です。

当院では、療養生活のキーワードを目標として、医師、看護師、理学療法士が中心となり、息がつらくなりにくい日常生活動作の練習や、自己管理の方法を患者さんと一緒に考えて療養生活のお手伝いをしています。また、自分らしい最期を迎えるための意思決定支援についても積極的に取り組んでいます。

更新:2024.10.08