乾癬を起こす元凶をピンポイントで抑える新しい治療

皮膚科

乾癬とは

かぶれ、みずむしなど皮膚の病気はたくさんありますが、乾癬(かんせん)という病気をご存じでしょうか?頻度(ひんど)は人口のおよそ1000人に1人の割合で、決して珍しい病気ではありません。

乾癬は、平らに盛り上がった赤い発疹(ほっしん)が全身の皮膚にできる病気です。発疹にはフケのような白い膜がついているのが特徴です。また爪の変形、指の関節の腫(は)れや痛みなど、皮膚以外の症状を伴うこともあります。原因はまだ分かっていませんが、生まれつき「乾癬になりやすい体質」をもった方がいるのは間違いないようです。ただし体質をもった方が必ず乾癬を発症するわけではありません。カロリーの高い食生活、過度な飲酒や喫煙、ストレスなどの要因も乾癬の発症に関係するといわれています。最近の調査により、乾癬の患者さんは、肥満、高血圧、糖尿病といったメタボリック症候群ももっている割合が高いことが示され、両者の関連性が注目されています。実際、肥満の方が適度な減量をしただけで乾癬が良くなったケースも報告されています。

乾癬の原因はよく分かっていませんが、発疹ができたところで何が起きているかについてはかなり分かってきました。最近では、普段は血液の中を流れる白血球がなぜか皮膚にやってきて、この細胞が出す、さまざまな物質が乾癬を起こすのに重要な役割をしているという考え方が、主流となってきています。

乾癬の新しい治療

多くの皮膚の病気と同様、「塗り薬の治療」がまずは基本となります。塗り薬はステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬が主に使われます。塗り薬のみで効果が不十分な場合は、「紫外線の治療」や「飲み薬の治療」を組み合わせます。「紫外線の治療」は全身照射型のナローバンドUVB装置や局所照射型のエキシマライトを使用します。また「内服薬の治療」としては、レチノイド、シクロスポリンが主なものです。

以上の3種類の治療が長らく乾癬治療の中心でしたが、最近ではこれらの治療で十分な効果が得られない場合や、副作用で内服薬が使えない場合などには「生物学的製剤もしくは分子標的薬による治療」という新しい選択ができるようになりました。2022年12月現在、ジェネリックを除くと11剤が使用可能で、そのうち1剤のみ点滴注射、残りはすべて皮下注射です。皮下注射のものは自分で注射(自己注射)できるものも多くなっています。

さらに、炎症スイッチを止めて乾癬に合併しやすい症状を抑える分子標的薬という内服薬が2種類加わりました。

これらの薬は、前述の白血球が出す物質を働かなくする作用があります。「乾癬を起こす元凶」を直接、ピンポイントで抑える従来にないタイプの治療で、高い治療効果が期待できます。実際、従来の治療法ではコントロールできなかった方でも、この治療を始めて数か月でほとんど発疹が出なくなった患者さんもいます。多くの場合、数週間~数か月に1回の頻度で薬を再投与すれば、良い状態を持続することができます。注意すべき点はいくつかありますが、最も重要なのは、投与すると免疫力が下がってしまうことです。

実は「乾癬を起こす元凶」は免疫力にも関係する物質であるので、投与すると体内でおとなしくしていた病原体が再活性化したり、新たに感染が起きやすくなります。したがって、初回の投与前には十分な検査をして、病原体が潜んでいないか確認し、投与後も定期的な検査を受ける必要があります。しかし過剰に心配する必要はありません。日常生活に大きな制限はなく、手洗い、マスク着用を励行するなど、ごく一般的な感染予防対策をするだけで十分と思われます。

当院では週2回、乾癬の専門外来を開いています。乾癬の治療に熟知した担当医が診察し、各々の患者さんに合った治療法を提供します。気軽に相談いただけたら幸いです。

更新:2023.09.11