低侵襲画像診断・治療センターの画像診断技術
藤田医科大学病院
放射線科
愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪
低侵襲画像診断・治療センターとは?
2012年に開設した「低侵襲(ていしんしゅう)画像診断・治療センター」(通称:放射線棟)は、地上5階・地下1階の施設です(写真1)。各フロアの構成は、地下1階が放射線治療、1階が核医学、2階がMRI、3階がハイブリッド手術室(血管撮影)、4階がCT、5階がX線透視となっており、それぞれのフロアに画像診断機器が配置されています。全国でも珍しい「一棟まるごと放射線診療部門」というコンセプトを基に、診療放射線技師・医師・看護師など、各部門のスペシャリストがこの棟に集い、医療を提供しています。
メーカーとの共同開発・共同研究
藤田医科大学では1980年代から長年にわたって、キヤノンメディカルシステムズ社(旧東芝メディカルシステムズ社)とヘリカルスキャンやArea Detector CT「AquilionONE」、高精細CT「AquilionPrecision」の共同開発を行い、CTのパイオニアとして、歴史に名を残してきました。その関係で藤田医科大学病院には常にキヤノンメディカルシステムズ社製の最先端のCTやMRIが導入されており、導入後もこれらの機器の性能を最大限に生かせるような撮影方法や画像処理技術などの共同研究も行っています。
また2017年2月に中国の医療機器メーカーであるShanghai United Imaging Healthcare(以下、UIH)製のPET/CTが当院に導入されたのをきっかけに、2017年8月に「藤田/UIH共同研究所」が低侵襲画像診断・治療センター内に設置され、世界市場のニーズに合った製品を開発するために、共同研究を行っています(写真2)。
最新の画像診断技術
AquilionONE/GENESIS Edition(写真3)
2007年10月に16cmの幅を最速0.35秒で撮影できる320列の検出器を持つAquilionONEの1号機が当院に世界で初めて設置されました。それまでのCTは検出器が最大で80列であり、4倍の検出器を持つAquilionONEの登場により脳や心臓などの臓器全体を撮影し、形のみでなく血液の流れや組織の動きなど(4DCT)も評価できるようになりました。
その後、数回のバージョンアップを経て2016年からはAquilionONE/GENESIS Editionを導入しています。GENESIS Editionには2つのエネルギーを利用して撮影する「Spectral Imaging System」やAI(人工知能)の1つであるDeeplearning(深層学習)を用いた画像処理技術である「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」が新たに搭載されています。
AquilionPrecision(写真4、5)
2017年2月に検出器の厚さが0.25mmの高精細CTであるAquilionPrecisionの1号機が当院に設置されました。それまでのCTは検出器の厚さが0.5mmであり、検出器の厚さが2分の1のAquilionPrecisionの登場により、従来のCTと比べ最大で8倍のデータを得ることが可能となりました。そのため従来のCTでは「ぼやけて」見えた小さな病変が「くっきり」と見えたり、これまで視認できなかった構造物が視認できるようになっています。また処理するデータ量が多くなるため、従来のCTの5倍以上のデータ処理能力があります。
AiCE(写真6、7)
AiCEは人工知能(ディープラーニング)を用いたキヤノンメディカルシステムズ独自の画像処理技術で、従来の画像処理技術では困難であった少ない放射線でも安定した画質改善効果を得ることができます。そのほかにも人工知能を用いることにより画像処理に必要な時間を短縮することもできます。この人工知能を用いた画像処理技術はCTだけでなく、一部のMRIにも搭載され高画質化と高速化を実現しています。
更新:2024.10.24