乳腺疾患への取り組み-ブレストセンター

藤田医科大学病院

乳腺外科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

乳がんとは

女性の乳腺は授乳期に乳汁を産生する小葉(しょうよう)と、乳汁を運ぶ乳管から成り立っています。この乳管または小葉に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)が乳がんです。乳房の皮膚や血管、脂肪から発生する腫瘍は含みません。

乳がんは女性の罹患(りかん)する悪性腫瘍の中で最も多く、日本人でも近年増加し続けています。定期的な自己触診やマンモグラフィ、乳房超音波検査によって乳がんを早期に発見し、治療を開始することが重要といわれています。

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図1:マンモグラフィにて発見された非触知早期乳がんの石灰化像
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図2:乳がん超音波画像

近年、遺伝子検査で“乳がんになる確率が非常に高い”と診断された米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんが発生していない健康な乳房を切除したことが話題となりました。予防的乳房切除と呼ばれるこの治療は、まだあまり日本ではなじみがありません。

当院では、遺伝性乳がんの可能性が高いと判断され、ご希望がある方に対して遺伝外来への相談、遺伝子検査を実施しています。遺伝性乳がんと診断されて予防的乳房切除を希望される場合には、ブレストセンターで乳房切除と乳房再建を組み合わせた治療を計画していきます。

乳がん治療への取り組み・ブレストセンターの紹介

乳がん治療は大きく外科療法、薬物療法、放射線療法に分けられます。乳がんと診断がついたら、診断された材料(針生検や摘出生検のサンプル)を用いて「病理部」で免疫染色を行い、乳がんの特性を調べます。「乳腺外来」では全身精査を行い、がんの進行度(病期、ステージ)を検索します。その結果、手術を先に実施するか、手術前に薬物療法を実施するかを検討していきます。化学療法(抗がん剤治療)が必要な場合には、がん治療の専門スタッフが常在し、安心して化学療法を受けることができる「薬物療法センター」で治療を進めていきます。

手術を実施する場合には、乳房温存療法が可能か、その場合にはどの程度の切除が必要か、乳房が変形しないような手術方法は何か、乳房切除が実施される場合には乳房再建が同時に実施可能かなど、得られた画像所見をもとに乳腺外科でカンファレンスを行い診断していきます。

乳房切除と乳房再建を希望される患者さんには、「形成外科」と連携を取り、同時に再建を行う(一次乳房再建)か、それとも乳房切除後一定期間経過したのちに再建を行うのか(二次乳房再建)、人工物を用いた再建を行うのか、自家組織を用いた再建を行うのかなどオーダーメードの医療を提供していきます。乳房温存療法を実施した場合には、残存乳房(部分切除をしたあとに残された乳腺組織と皮膚・乳頭)への放射線療法を行っていきます。

これらの診断、検査、すべての治療は乳腺外科医が主治医となって実施を進めていきます。各分野の実施担当医と連携をとり、すべて大学病院内で行っています。

外科治療・オンコプラスティックサージャリー

乳がんの治療時、病変の切除と同時に形成外科的治療を組み合わせる治療は乳房オンコプラスティックサージャリーと呼ばれています。

当院ブレストセンターでは、乳房温存手術の場合(「早期乳がんに対する、整容性と根治性を両立させた乳房温存療法」参照)でも、乳房切除術の場合でもオンコプラスティックサージャリーの実施が可能です。乳房切除では、乳がんの治療としての乳房切除とリンパ節の切除(センチネルリンパ節生検や腋窩(えきか)リンパ節郭清(せつかくせい))を乳腺外科医が行い、引き続き行われる乳房再建手技を形成外科医が実施しています。全身麻酔中に、乳がんの切除と乳房再建が同時に実施できます。またこれらの手術はすべて保険適用となっているため、当院での実施件数も増加してきました。

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図3:PETにて指摘された乳がんおよび転移リンパ節(→)

乳がんと診断され手術を行った結果、乳房が変形したり乳房を失ったりすることで悲しむ女性が一人でも少なくなるような医療を提供しています。

更新:2024.01.25