体にやさしい高精度放射線治療

放射線治療の進歩

放射線治療の進歩は著しく、以前と比較し副作用もかなり軽減しており、外科手術と匹敵する治療成績のがんもあります。また体への負担も少ないため、高齢者や手術が難しい方などにも適応があり、外来治療も可能です。特に、高精度放射線治療は副作用も少なく、治療効果も高く体にやさしいがん治療です。

高精度照射とは

高精度照射とは腫瘍（しゅよう）に正確に（数ミリ以内での精度）で、かつ正常な組織への照射を極力抑えつつ腫瘍に十分な放射線量を過不足なく照射する放射線治療です。これを可能にする照射技術の代表的なものには定位照射、強度変調放射線治療（IMRT：アイエムアールティ）とさらに最近では強度変調回転放射線治療（VMAT：ブイマット）とIMRTとVMATを合わせたハイブリッド照射があります。これを実現するには新しい照射装置（リニアック）、特に画像誘導（IGRT）機能があるものが必須です。

当院では２台の高精度照射装置で治療を行っています（ノバリスTx、トゥルービーム）。治療の頭脳として治療計画コンピュータの能力も重要です。定位照射専用iPlan（アイプラン）とIMRT専用RayStation（レイステーション）で対応しています。このような機械、システム以上に安心で安全に治療を受けていただくためスタッフの質はさらに重要です。

当院では放射線治療専門医、医学物理士、放射線治療専門技師、放射線治療専門看護師が専門で治療にあたり、きめ細かい治療を提供しています。

定位照射の実際

いわゆるピンポイント照射といわれるもので、多方向から少ない放射線を照射し腫瘍に線量を集中させ、周囲正常組織には強い放射線線量を避けることができます。腫瘍の大きさ、部位により１回で照射する定位手術的照射（SRS）と、数回に分けて照射する定位放射線照射（SRT、SBRT）があります。定位照射は脳、頭頸部（とうけいぶ）腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍と前立腺がんなどに行われます。

脳腫瘍

ガンマナイフのピン固定と違い、痛みのないシエル固定で照射します（写真）。１cm以下の転移性脳腫瘍なら１回の照射（SRS）で90%以上が制御されます。

肺がん・肝臓がん

4～8回の外来照射で照射可能。Ⅰ期肺がんでは90%程度の局所制御率で手術に匹敵します。手術困難な肺機能が悪い方、高齢の方にお勧めできる治療法です。副作用の放射線肺炎も少なく、発症しても軽度です（図１）。いずれも外来通院でも治療ができます。

IMRT（強度変調放射線治療）の実際

腫瘍の形状が不整形で、避けるべき正常組織が隣接している場合に専用のコンピュータを用い照射野の形状を変化させた固定ビームで、腫瘍の形に適した照射をする新しい照射方法です。周囲の正常組織への照射を抑えることができるため、以前よりまして腫瘍に十分な照射が可能です。

VMAT（強度変調回転放射線治療）の実際

固定ビームでのIMRTの発展型の照射法です。照射装置（リニアック）を回転させながら照射範囲と放射線量を変化させることでIMRTより精密な治療が可能であり、照射時間も数分と短時間ですみます（図２）。当院では脳、頭頸部、前立腺、肺がんなどを中心に、限局した悪性腫瘍はVMAT照射で行っています。

ハイブリッド照射（IMRT/VMAT）

IMRTとVMAT照射を合わせた照射法で、それぞれの照射法で正常組織の線量の低減が難しい場合には有効な照射法です。この照射法を可能にするには、専用の最新コンピュータでの同時最適化計算が必要です。当院ではRayStationという放射線治療計画装置で行っています（図３）。がん治療の進歩、特に放射線治療の進歩は、コンピュータとソフトウェアの進歩でも加速されます。当院では常に新しいソフトウェアで体にやさしく、効果の高い照射法を提供しています。

更新：2022.03.08