関節リウマチ診断・治療の最前線-関節を壊さない
藤田医科大学病院
リウマチ・膠原病内科
愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪
関節リウマチとは
関節リウマチ(RA)は、慢性に全身の多関節(たかんせつ)(手指・手・肘(ひじ)・肩・頸椎(けいつい)・大腿(だいたい)・膝(ひざ)・足・足指)に炎症をきたす疾患です。関節の滑膜(かつまく)(関節の内側にある膜)に炎症を起こし、「関節の痛み、腫脹(しゅちょう)(はれ)、熱をもつ、赤くなる」といった症状が出ます。進行すると骨が破壊され、「写真」のように関節が変形し、日常生活動作(ADL(エーディーエル))の低下を招きます。また、関節以外にも肺など全身性の臓器に影響を及ぼすことがあります。原因は不明ですが、遺伝する病気ではないとされ、遺伝と環境の両方の要因が複合して発症すると考えられています。発症のリスク因子として、喫煙が知られています。長い間有効な治療法がなく、壊れていく関節についてなす術(すべ)がありませんでした。近年、新たな診断方法や有効な治療法が登場し、早期に発見、治癒を目指すことが可能になっています。
関節リウマチの診断
診断には医師の触診(実際に関節を触ってはれや痛みがないかをみること)、血液検査、画像検査が必要になります。以前は1987年の関節リウマチ分類基準(表)を参考にしていました。この基準では「対称性の関節腫脹がある」「X線検査で関節のびらんが認められる」といった項目がありますが、基準を満たす頃には、すでに関節の破壊が進行してしまっています。
関節リウマチは、発症から約2年経過するまでをWindow of Opportunity(ウィンドウオブオポチュニティー)(治療の機会の窓)と呼んで、この時期に適切な治療を行わなければ関節破壊が進行することが分かっています。検査の進歩で、早期の診断が可能となってきました。血液検査では、抗CCP(こうシーシーピー)(環状シトルリン化ペプチド)抗体が測定できるようになりました。関節MRI(磁気共鳴機能画像法)検査は、レントゲンで骨に変化が起こっていない早期でも滑膜の炎症をとらえることができます。関節超音波検査では、滑膜の肥厚(ひこう)(分厚くなること)や炎症をリアルタイムに検出することができます。
2010年には関節リウマチの新分類基準(図1)が発表されました。この基準を参考に、1つ以上の関節腫脹があれば、対称性でなくとも評価することが可能です。また、リウマチ因子や抗CCP抗体の重みづけが高いことも特徴です。加点方式で6点以上ならば関節リウマチと分類することができ、より早期の診断に有用です。
関節リウマチの治療
有効な治療がなかった時代は、鎮痛薬(痛み止め)で症状を緩和していました。痛み止めには非ステロイド性消炎鎮痛剤と副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイドがあります。副腎皮質ステロイドは強い鎮痛効果がありますが、長期間使用すると、さまざまな副作用に悩まされるなどの問題もありました。また、鎮痛薬は根本的な治療ではないため、関節の破壊は進行します。壊れた関節は元に戻らないため、手術という選択肢以外ありません。
しかし、1997年に合成抗リウマチ薬であるメトトレキサート、2000年以降には生物学的製剤やJAK(ジャック)(ヤヌスキナーゼ)阻害薬(そがいやく)など、新たな治療法が次々と登場しました。現在、国内で使用可能な合成抗リウマチ薬は10種類以上、生物学的製剤は8種類、JAK阻害薬が3種類とさまざまな薬剤があります。関節リウマチと診断された場合、禁忌(きんき)(患者さんの状態によってその薬が使用できないこと)がなければ第1選択でメトトレキサートを使用し、国内では16㎎/週までの増量が可能です。メトトレキサートが使用できない場合でも、その他の合成抗リウマチ薬の使用が可能です。効果が不十分な場合は、生物学的製剤やJAK阻害薬を適宜使用していくことになります。
早期に適切な治療を行えば、寛解(かんかい)(関節の炎症が治まり良い状態となること)を達成することができるようになってきました。寛解には臨床的寛解(炎症所見や症状の改善)、構造的寛解(関節破壊の進行抑制)、機能的寛解(身体機能の維持)があります。適切な治療を行い、すべて達成することが理想的な目標ですが、医師・患者間で相談し、個々にあった目標を決めて3か月から6か月ごとに治療を見直していくTreat to Target(トリートトゥターゲット)(目標達成に向けた治療、図2)という治療戦略が世界共通となっています。
関節リウマチに罹患(りかん)しても、定期的に治療を見直し、その時々にあった治療を受けることで、快適な日常生活が送れる時代となったのです。
更新:2022.03.08