キーワードは❝子どもの総合診療医❞
藤田医科大学病院
小児科
愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪
はじめに
私たち藤田医科大学の小児科は、“子どもの総合診療医”をキーワードとして、軽い病気から重い病気まで、さまざまな子どもの病気に幅広くかつ専門的な知識を持った小児科医集団が治療に取り組むためのone teamです。親御さんにとって、またかかりつけ医の先生方にとって、どんな病気でも子どもの病気は心配なことに変わりはありません。さらに、子どもたちが苦しむ姿を見るのは非常につらいものです。ですので、私たちはどんな病気のお子さんでも、ベストな診療ができるようさまざまな分野の小児科専門医をそろえ、常に子どもと親御さんに寄り添った治療を行うことを目指しています。
以下に、それぞれの疾患領域の診療対象となる病気の説明や、私たちが行っている最新治療の一端を紹介しますので参考にしてください。
小児アレルギー・免疫疾患
アレルギー疾患の中で特に食物アレルギーの診療と研究に力を入れています。私たちのグループが作成している「加工食品のアレルゲン含有量早見表」を活用し、アレルギーがあっても完全除去とはせずに、食べられる範囲の加工品から摂取をすすめ、子どもたちの食生活の質を改善しつつ治癒を目指して診療を行っています。
臨床研究として以前から取り組んでいる企業と共同で独自に開発したアレルゲン性を下げた食品を用いて、安全で効果的な食物アレルギーの治療法開発も進めています。食物アレルギーの一般的な治療では症状が改善せずお困りの方はぜひ相談してください。
小児循環器
小児循環器分野では「胎児から職場まで」をテーマとして、以下のような特色を持った診療を行っています。
- 胎児心エコー外来
- 治療抵抗性川崎病の集学的治療(乳児から安全な血漿(けっしょう)交換療法)
- 心筋症の再生医療(経皮経冠動脈的に幹細胞を移植する再生医療(準備中))
- 遺伝性心疾患(QT延長、Brugada、Marfan、Ehlers-Danlos症候群など)
- 成人先天性心疾患外来。子どもから成人まで、さまざまな心臓の病気に対して最新の医療を提供しています。
小児腎疾患
子どもの腎臓病は成人とは異なる点がいくつもあります。当科では、胎児期(生まれる前)から学童期までにみつかる、先天性・遺伝性疾患、ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)などさまざまな腎臓病について、日本小児腎臓病学会から出版されている各種の診療ガイドラインに基づく診療だけではなく、成長や発達などの子どもの特質や、同じ病気でも個人によって大きく異なる病状に合わせたテーラーメイド(個人の特質に合わせた)診療を提供します。
先天代謝異常症
先天代謝異常症とは、先天的な代謝機能の障害により特定の栄養素が使えなかったり、有害物質が体内に蓄積してしまう疾患です。まれな疾患が多く診断治療が特殊なため、専門的に診療できる施設が限られているのが現状です。当科では愛知県で唯一、専門外来を有するなど、全国でも有数の診療施設となっています。全国に先駆けてのライソゾーム病マススクリーニングや酵素補充療法、きめ細かい食事療法など、患者さんに最適な治療を提供しています。
小児内分泌疾患
小児内分泌疾患は、ホルモンというそれぞれが独自の働きを持ち、特に子どもの場合には、元気に成長・発育するために不可欠な物質の異常によって起きる疾患です。先天的、後天的な下垂体の異常、甲状腺疾患、性の分化・思春期発来異常、副腎疾患、水・電解質異常、糖尿病、ビタミン・骨の病気などが挙げられます。成長障害の原因は、ホルモンの異常だけではなく、栄養の問題や、生まれながらの体質、他臓器の病気の場合もあり、まずは全身を総合的に診て、それぞれのお子さんにあった診療を提供します。
小児感染症・予防接種
すべての小児感染症のお子さんに対応しています。特に突発性発疹症、ロタウイルス性胃腸炎、水ぼうそうの臨床研究を長年にわたって行っており、ヘルペスウイルスやロタウイルスなどについては独自の検査診断システムをそろえています。通常の感染症に加え、他の診療グループと連携して、基礎疾患を持つ子どもの重症感染症、脳炎・脳症などについても最新の診療を提供しています。
また、先天性サイトメガロウイルス感染症をはじめとした母子感染症の診断、治療についてもこの地域のセンターとして活動しています。2020年からは先天性サイトメガロウイルス感染症に対する抗ウイルス薬の臨床試験も開始予定です。予防接種外来も設けていますので、特に基礎疾患のためにワクチン接種に心配がある場合は相談してください。
小児神経
子どもの成長発達にかかわる最も重要な器官、それは「脳」です。小児神経分野は「脳」とそれに関連する器官を専門としています。発達・認知の問題からけいれん性疾患、筋疾患まで、幅広く診療を行っています。脳波検査は早産児から施行が可能で、ビデオ同時記録長時間脳波検査によるてんかん発作の解析も行っています。総合病院として他診療科との連携も活発に行っており、結節性硬化症は全国から患者さんの紹介をいただいています。
小児血液腫瘍
白血病など小児がんは希少疾患であり、全国の施設が参加して日本小児がん研究グループ(JCCG)が設立され、治療成績向上を目指しています。当科でも2016年に小児血液・がん専門医研修施設の認定を受け、積極的に臨床研究に参加して、最善の治療を提供するよう努力しています。院内に訪問学級もあり、毎月開催される小児キャンサーボードや木曜開催の病棟での多職種カンファレンスを通じ、小児がん診療の充実に務めています。
新生児
愛知県に7つある総合周産期母子医療センターの1つとして新生児集中治療室(NICU)で赤ちゃんの集中治療を行っています。赤ちゃんが家族と安らかに過ごす時間が長いほど赤ちゃんの発達に良い影響があるため、赤ちゃんを含んだ家族のことを考えた「ファミリーセンタードケア」が重要視されています。2018年に稼働を開始した新病棟は、赤ちゃんが家族と一緒に過ごしやすいよう居心地よく設計され、「ファミリーセンタードケア」を実践しています。
更新:2024.01.26