膵臓・胆道疾患に対する超音波内視鏡による最新の診断と治療

藤田医科大学病院

消化器内科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

超音波内視鏡とは

超音波内視鏡(ちょうおんぱないしきょう)(EUS(イーユーエス):E n d o s c o p i c Ultrasonography)は、先端に超音波装置が装着されている内視鏡です(写真1)。この検査は“胃カメラ”と同じく、口から内視鏡を消化管(胃や十二指腸)内へ挿入します。通常の胃カメラでは消化管の表面を観察しますが、EUS検査では超音波を用いることにより、消化管の中からすぐ近くにある膵臓(すいぞう)、胆道などを超音波で観察することができます。通常の腹部エコー検査では、胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔内(ふくくうない)の脂肪、骨が妨げになり、膵臓や胆道全体を観察することが難しいのですが、EUSでは膵臓や胆道全体を観察することができます。また、すぐ近くから観察が行えるため、通常の腹部エコー検査より、詳細に病変の情報を得ることができます。

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写真1:超音波内視鏡(提供:富士フイルムメディカル株式会社)

EUSによる診断

EUSは、超音波画像により診断します。すぐ近くから膵臓や胆道の観察が行えるため、CTやMRI検査では見つからないような10mm以下の小さな病変を見つけることも可能です。しかし、超音波画像だけでは診断が困難な場合もあります。その場合、確定診断のために、細胞や組織の一部を採取して、顕微鏡で検査する必要があります。従来では膵臓や胆道の病変から、お腹(なか)を切ることなく細胞や組織を採取することは困難でしたが、EUSを用いることにより、病変部の細胞や組織を採取し顕微鏡で検査することが可能となりました。超音波内視鏡下穿刺吸引法(ちょうおんぱないしきょうかせんしきゅういんほう)(EUS-FNA(イーユーエスエフエヌエー))といいます(図1)。

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図1:超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

膵臓や胆嚢(たんのう)・胆管の病変に限らず、消化管の近くにある腹腔内腫瘍(しゅよう)・リンパ節や腹水などに対し、細胞や組織を採取することが可能です。具体的には食道、胃、十二指腸などの中からEUSで病変を観察しながら、注射の針と同じくらいの太さの針を内視鏡の先端から出して、消化管の壁越しに病変に穿刺し、細胞や組織を針の中に採取してきます(写真2)。手技時間は30分程度で、鎮静剤を点滴し眠っている間に検査を行います。お腹を切る必要はないため、皮膚にも傷が残らず、翌日から食事もでき、体に負の少ない検査です。

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写真2:超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

EUSを利用した治療

膵臓や胆道の病気により、胆管(胆汁の流れる道)が狭くなったり詰まったりすると黄疸(おうだん)を生じることがあります。これを閉塞性(へいそくせい)黄疸といいます。この閉塞性黄疸に対する治療として、胆汁の流れをよくするために、胆管内へストローのようなプラスチック製の管(プラスチックステント)や、金属製の管(金属ステント)を留置します。このように胆管内にステントを留置し、胆汁の流れを良くする処置を「胆道ドレナージ」といいます。

通常、内視鏡を使って十二指腸の胆管と膵管の出口(乳頭部)から胆管へステントを留置しますが、さまざまな理由により、この処置が困難な場合があります。このような場合、経皮経肝的胆道(けいひけいかんてきたんどう)ドレナージ(PTBD(ピーティービーディー)という体の外から肝臓を通って胆管内にステントを留置する処置が選択されることが多く、現在でも広く行われています。しかしPTBDの最大の欠点は、体の外にチューブや胆汁をためる容器を付けておくことが必要なため、日常生活に支障をきたすことです。この難点を克服する新たな処置として、EUSを用いて胆管と膵管の出口(乳頭部)を介さず胆管にステントを留置することができるようになりました。超音波内視鏡下胆道(ちょうおんぱないしきょうかたんどう)ドレナージ(EUS-BD(イーユーエスビーディー))といいます。

EUS-BDは、前項で説明したEUS-FNAの手技を用いて、狭くなったり詰まったりして胆汁の流れが悪くなった胆管にステントを留置する手技です。十二指腸から胆管に針を刺したり(CDS)、胃から胆管に針を刺したりして(HGS)、胆管と膵管の出口(乳頭部)を介さず胆管にステントを留置します(図2)。PTBDと違い体の外にチューブが出ることはないため、日常生活に支障をきたすことはありません。近年、急速に発達している処置で保険適用になっていますが、この手技は難しく高度な技術が必要なため、EUS-BDが行える施設は限られています。専門医療機関の受診をお勧めします。

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図2:超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)

更新:2022.03.08