新たな機器を用いた乳がん手術

札幌医科大学附属病院

消化器・総合、乳腺・内分泌外科

北海道札幌市中央区

乳がんとは

乳がんは現在日本人女性の癌腫別罹患率(りかんりつ)(*1)第1位であり、乳がんの治療法には、主に手術、薬物療法、放射線治療があり、手術によってがんを取りきることが基本となります。乳がんは脇(腋窩(えきか))のリンパ節に転移をしやすいので、転移がある場合はリンパ節をとります。手術後の病理検査によって、術後の治療計画を検討します。

* 1 罹患率:病気になる人の割合

進歩する乳がん手術

近年の大規模な臨床試験の結果、腋窩郭清(えきかかくせい)(脇のリンパ節を手術でとること)が省略される傾向にあります。しかし、腋窩郭清によってリンパ節を確実にとることが生命予後(*2)の改善にも重要であると報告されています。2018年の乳癌診療ガイドラインにおいても腋窩郭清の重要性は示されています。

乳がん手術における腋窩郭清は、手術時間の延長や術後出血や滲出液(しんしゅつえき)の漏出が問題となります。どのようにしたら手術時間を短縮し、そして術後出血および滲出液の漏出を減らせるかが、乳がん手術の大きな問題となっています。一方で、新しい手術機器(デバイス)によって血管を処理することは、この10年間で急速に進歩してきました。乳がん領域においては、2018年4月に手術機器が保険適用され使用されるようになってきました。

私たちは、腋窩郭清を行う際に用いる従来の機器と超音波凝固切開装置(USAD)を比較して有用性を検討しました。手術時間、出血量、ドレーン総排液量、いずれにおいてもUSAD群でよい結果でした(表)。今後さらに、リンパ浮腫(ふしゅ)(足や腕が腫(は)れる)をはじめとした合併症の予防に対しても貢献できるか検討をしていきたいと考えています。

* 2 予後:今後の病状についての医学的な見通し

イラスト
図 超音波凝固切開装置
超音波で血管や組織を止血しながら切開することができます
表:超音波凝固切開装置を使用した場合の効果
手術時間(分) 46分短縮
出血量 85mlの減少
ドレーン総排液量 130mlの減少
ドレーン挿入期間 1日短縮
入院日数 1日短縮

更新:2024.09.23