前立腺がんの最新治療

札幌医科大学附属病院

泌尿器科

北海道札幌市中央区

前立腺がんとは

前立腺は、男性のみにあるクルミくらいの大きさの臓器で、膀胱(ぼうこう)の下で尿道のまわりを取り囲み、主に精液の一部をつくっています。前立腺から発生する前立腺がんは、最新の統計では年間に診断される男性のがんの中で最も多いですが(91,215人)、死亡数は第6位(12,544人)であり、早期に診断・治療を受ければ治る病気です(図1)。

図
図1

症状・検査

1.症状

早期ではがん特有の症状はなく無症状ですが、進行すると排尿困難や血尿などが出現します。

2.PSA(ピーエスエー)血液検査

PSAは前立腺の細胞がつくるたんぱく質です。正常の細胞でもつくられていますが、前立腺がんでつくられたPSAは正常細胞でつくられたものよりも血液に混ざりやすいため、血液検査で高い値となります。4.0ng/mlを超えると前立腺がんを疑います。

3.触診

肛門から指を入れて、直腸の壁ごしに前立腺がんの状態(硬さや広がり)を確認します。

4.画像検査

超音波(エコー)検査でがんの広がりや大きさを確認します。最近ではMRI検査で、がんの場所や広がりについて高い精度で診断が可能となっています(図2)。

図
図2 前立腺MRI

確定診断

針生検による組織診断が必要になります。2泊3日の入院で行います。前立腺をエコーで見ながら、前立腺の一部を針で採取して、がん細胞の有無や悪性度を確認します。がんが発生しやすい場所(好発部位)に合わせて14~18か所から採取します。麻酔をかけて行うので痛くありません。

治療

  • がんのステージに合った治療法の中から最適な治療法を決定します。主な治療法は、手術、放射線(外照射、内照射)療法、薬物療法があり、これらを組み合わせて行う場合もあります。薬物療法は、がんの進行とかかわっている男性ホルモン(アンドロゲン)を抑えるホルモン療法が中心ですが、組織の悪性度により抗がん剤を使用する場合もあります。
  • 手術:ロボット支援下前立腺全摘除術
    内視鏡手術支援ロボット「ダビンチサージカルシステム」を使用し、小さな創(きず)、少量の出血、短時間で安全かつ正確に手術を施行できるよう努めています。当科にはプロクターと呼ばれるロボット支援下前立腺全摘除術の指導医に認定された執刀医が7人在籍しています。

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    写真 ロボット支援下前立腺全摘除術
  • 合併症
    手術による主な合併症は、腹圧性尿失禁と性機能障害(ED(イーディー))です。尿失禁は前立腺の周りの括約筋(かつやくきん)が一時的に障害されることにより起こります。くしゃみやお腹(なか)に力がはいると尿が漏れますが、ほとんどの人が回復します。
    性機能障害は、前立腺の周りにある勃起にかかわる神経が障害されるために起こります。神経がある場所とがんが好発(*)する場所が同じなため、通常は前立腺と神経を一緒にとりますが、当科では、がんを取り残さず神経を温存するための適応の工夫や術式の開発をしています。最近の研究では神経温存術を施行した患者さんが性機能の保持だけでなく、尿失禁の回復にもよいため、この神経温存術式を積極的に取り入れています。

*好発:発生する頻度が高いこと

50歳を過ぎたらPSA採血を!

PSAは前立腺がんの早期発見に不可欠な腫瘍(しゅよう)マーカーです。1mlの血液で前立腺がんの疑いがあるかないかがわかります。

更新:2024.09.23

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