前立腺がんのトリモダリティ治療

札幌医科大学附属病院

放射線治療科

北海道札幌市中央区

前立腺がんとは

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能です。また多くの場合、比較的ゆっくり進行します。

トリモダリティ治療とは

トリモダリティ治療とは、前立腺がんにおいて密封小線源治療、外照射療法、内分泌療法(ホルモン療法)の3つを組み合わせた治療です。接頭語tri(トリ)は3という意味があります。

再発や転移のリスクの高い前立腺がんは、この3つを組み合わせることによって、ほかの治療法に比べ、高い治療成績をあげています。

トリモダリティ治療の3つ

・密封小線源治療

非常に弱い放射線を出す、長さ約5mmの小さな線源を50~100個程度前立腺内に挿入し、前立腺内のがん病巣へ放射線を照射します。このカプセルは永久に前立腺内に残りますが、出る放射線量は徐々に弱まり1年後にはほぼゼロになります(図1、2)。

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図1 線源の実際
(出典:日本メジフィジックス株式会社)
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図2 前立腺内に挿入された線源のX線写真

・外照射療法

外照射療法は、体の外から前立腺に放射線を照射する方法です。強度変調放射線治療(IMRT)という技術を用いて、治療範囲を前立腺の形に合わせることで副作用を減らすことができます。当院では小線源治療との併用の場合、約25回の照射を行います。

・内分泌療法(ホルモン療法)

前立腺がんには、精巣や副腎(ふくじん)から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激で病気が進行する性質があります。内分泌療法は、アンドロゲンの分泌や働きを妨げる薬によって前立腺がんの勢いを抑える治療です。

トリモダリティ治療の実際

1.トリモダリティ治療の流れ

当院でトリモダリティ治療の適応としているのは主に再発、転移のリスクが高い前立腺がんです。リンパ節転移や遠隔転移のある場合は適応としていません。

トリモダリティ治療を希望の患者さんは、まずは泌尿器科の主治医より放射線治療科に紹介してもらいます。適応となれば内分泌療法が開始となり、その3~6か月後に小線源治療を行います。小線源治療1か月前に前立腺体積測定目的で経直腸エコー検査を行います。小線源治療は3泊4日の入院で行い、小線源治療終了6~8週後より外照射療法が開始となります(写真)。

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写真 小線源治療の術中写真

2.副作用について

トリモダリティ治療は重篤な合併症が少なく、治療後の生活の質が良い点が特徴としてあげられますが、副作用として最も多いのは排尿障害です。たいていは排尿困難、頻尿、切迫感などであり、少ないですが排尿痛、尿失禁、血尿などの症状が出現することがあります。その他、直腸障害として肛門出血や肛門痛がまれにあります。

小線源治療後の生活

前立腺内に挿入された小線源から体の外へ出る放射線は、非常に弱いものです。ごく普通の生活ならば一緒に生活する人をはじめ周囲の人への弊害は全くありません。MRI検査も支障ありません。空港などでの金属探知機の検査も問題ありません。

更新:2024.09.23

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