小児がんの診断と治療
札幌医科大学附属病院
小児科
北海道札幌市中央区

小児がんとは
主に小児期(0~15歳)に発症するがんで、血液のがん(白血病やリンパ腫(しゅ))や固形腫瘍(しゅよう)を含めて「小児がん」と呼ばれています。成人のがん(日本全国で年間100万人)と比較すると年間の発症数は少なく(日本全国で年間2,000~2,500人)、成人がんと比べて病気の進行が早いものが多いです。1番多いのは急性白血病で2番目に多いのが脳腫瘍です。そのほか小児に特有の腫瘍(がん)が多数あります。
小児がんの症状
白血病やリンパ腫など、血液のがんは、発熱が続く、出血(鼻血が止まらない、皮膚に出血斑(しゅっけつはん)が出る)、顔色が悪い(貧血)や首や脇のリンパ節が腫(は)れている、などで発見されることが多いです。一方で、症状が出血斑だけであったり、リンパ節が腫れているだけの場合は、悪性ではないこともあります。正確な診断のためにも小児血液・がんの専門医を受診することをお勧めします。
脳腫瘍などでは、眼の動きがおかしい、物が二重に見える、頭痛や嘔吐(おうと)などをきっかけに画像検査(CT検査やMRI検査)で見つかることが多いです。
そのほかの小児固形腫瘍では、お腹(なか)がすごく張っている、手足の一部が腫れている、などで見つかり、精密検査で診断されます。
小児がんの検査と診断
当科では、痛みを伴う検査(点滴、骨髄穿刺(こつずいせんし)、腰椎穿刺(ようついせんし)、中心静脈カテーテル留置など)はすべて鎮静剤(眠る薬)・鎮痛剤(痛み止め)を使用して患者さんの恐怖感、痛みに対するトラウマを与えないようにしています。
採血・点滴の際に、麻酔薬がしみこんだ皮膚麻酔のシールを使用して対応しています。
白血病などの血液がんの場合は、骨髄穿刺(腰の骨を針で刺す検査)によって診断されます。骨髄中の細胞の形態異常や性質(リンパ性か骨髄性か)や白血病細胞に見られる染色体異常、遺伝子の異常などについても調べて、治療方針をたてるために役立てています(図1)

図1 白血病細胞の顕微鏡画像
脳腫瘍を含む固形がんの場合には、CTやMRIなどの画像検査で、腫瘍の場所を特定し手術で腫瘍の一部を取る腫瘍生検を行います。採取した腫瘍の種類や悪性度などの診断をして確定します。
近年はPET-CT(図2)で転移巣を探したり、治療効果判定に用いたりします。

図2 PET-CT画像
小児がんの治療
小児がんの治療は、抗がん剤を使用する「化学療法」、腫瘍を取りきる「手術療法」、再発防止のための「放射線療法」を組み合わせて集学的な治療を行っています。
白血病は化学療法のみで治ることが多くなりましたが、再発して造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)が必要になった場合には放射線治療も行うことがあります。
固形がんの場合には、腫瘍を取りきる、ということが非常に大切ですので手術療法が重要になります。手術、化学療法に加えて放射線治療も重要な役割を担っています。当院では早期からリハビリテーションも導入し、体力維持と運動発達の評価をしながら、治療をすすめています。
治療に関しては、日本小児がん研究グループ(Japan Childrenʼs Cancer Group: JCCG)に所属し全国規模の臨床研究に参加しています。
近年では、がんゲノム解析によりがんの遺伝子レベルでの特徴を捉えて、その部分を狙った「分子標的療法」が少しずつ可能になってきています。担当する私たちも「がん治療が新しい時代に入った」と実感しています。

当科では、遺伝子診療科と連携して、保険診療によるがんゲノム解析を患者さんに勧めています。これにより従来の治療法で効果が出なかった患者さんに新しい治療(分子標的療法)が提供できる場合があります。担当医にご相談ください。
本疾患の関連病院(紹介を受けてフォローアップ可能な病院)
【札幌市】北海道立子ども総合医療・療育センター(コドモックル)
【函館市】市立函館病院
【釧路市】市立釧路総合病院
更新:2024.09.23