メラノーマ(悪性黒色腫)の診療――手術と新規薬物療法

札幌医科大学附属病院

皮膚科

北海道札幌市中央区

メラノーマ(悪性黒色腫)とは

当科では年間およそ30人のメラノーマの患者さんが新規で来院します(実績データ参照)。メラノーマの治療は、早期病変に対しては外科的切除とセンチネルリンパ節生検を行っています。転移病変がある進行したメラノーマには薬物治療を行っています。メラノーマの薬物治療は、ここ数年間で新しい治療薬(免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的治療薬)が出現しています。

メラノーマの病態

メラノーマはメラノサイト(メラニンを形成する細胞)のがん化によって生じる悪性腫瘍(あくせいしゅよう)です。多くは皮膚に発生しますが、メラノサイトの存在する口腔(こうくう)、外陰部、肛門などにも発生します。

原因として紫外線や皮膚への刺激が関係していると考えられています。通常まずは表皮内に横に広がりますが、進行すると縦方向(深部)に増殖します。そのため腫瘍(メラノーマ)の厚さが転移のリスクと関係しています。

メラノーマの症状と検査

メラノーマの疑いで受診した際には病変の出現時期、サイズ・形・色調の変化の有無、出血の有無などを確認します。メラノーマの特徴として、①形が左右非対称、②輪郭が不明瞭、③色調が多彩、色むらがある、④直径6mmを超える、⑤変化がある(増大傾向がある)などがあります(図)。

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図 メラノーマの特徴

検査

1 ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査とは、ダーモスコピー(光源がついた拡大鏡)にゼリーをつけて皮膚の状態を詳細に観察する検査です。日本人ではメラノーマの約4割が手や足に発生します(写真1)。手のひらや足底のように指紋(皮溝と皮丘)がある部位ではダーモスコピー検査がとても有効です。

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写真1 左:メラノーマ 右:ほくろ

“メラノーマ”と“良性のほくろ”を色素のある部位(皮溝または皮丘)や分布の違いから鑑別することができます(写真2)。

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写真2 ダーモスコピー像(左:メラノーマ、右:ほくろ)
2 CT検査、MRI検査、PET検査
メラノーマは小さくても転移することがあります。手術の前にCT検査、MRI検査または、PET検査などを施行して他の臓器に転移があるかどうかを確認します。

メラノーマの手術

手術前の検査で転移病変がなければ標準治療は手術治療となります。メラノーマの厚さによって、切除範囲(病変からどのくらい離して切除するか)が決まります。メラノーマの厚さが一定以上あれば、センチネルリンパ節生検を行っています。センチネルリンパ節とは、がん細胞から最初に流れるリンパ節です。このリンパ節に転移がなければ、その先のリンパ節に転移している可能性は低いことが考えられます。

当院ではRI法、色素法、蛍光法の3つの方法でメラノーマから最初に流れるリンパ節(センチネルリンパ節)を見つけて、センチネルリンパ節に転移しているかどうかを検査しています(写真3)。

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写真3 センチネルリンパ節(青く染色、赤外線カメラで蛍光)

メラノーマの新規薬物療法

2014年に免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが承認されたことを皮切りに、いくつかの免疫チェックポイント阻害薬と分子標的治療薬がメラノーマにも承認されています。分子標的治療薬はBRAF(ビーラフ)と呼ばれる遺伝子の変異がある患者さんが対象となる飲み薬です。免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞由来の免疫抑制シグナルを解除することで、患者さん自身の免疫を高める抗体薬の点滴治療です。

患者さんの体調や病期の進行具合、BRAF遺伝子変異の有無や、腫瘍マーカーの値、メラノーマの病型、転移している臓器などを総合的に評価して、最も効果的と考える治療薬を選択して治療を行っています。

更新:2024.09.23