あなどってはいけない脂肪肝
札幌医科大学附属病院
消化器内科
北海道札幌市中央区

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは?
肝臓に脂肪が溜(た)まった状態が脂肪肝です。脂肪肝には、お酒が原因のアルコール性脂肪肝と、お酒をあまり飲んでいないのに脂肪肝になるNAFLD(ナッフルディー)(非アルコール性脂肪性肝疾患(しぼうせいかんしっかん))があります。NAFLDの主な原因の詳細は不明ですが、肥満などの生活習慣病が原因とされており、栄養障害、薬の副作用などで生じることもあります。また、腸内細菌や免疫なども影響していることがわかってきています。わが国の2009年から2010年の検診受診者を対象とした調査では29.7%の方がNAFLDだったと報告されています(Eguchi Y, et al. JGastroenterol, 2012;47.586-595)。
脂肪肝なら心配ない?
NAFLDのうち多くの方はほとんど進行しません。しかし、10~20%の人は慢性肝炎、肝硬変と進行し、肝がんを発症したり肝不全にいたることがあります。この徐々に進行するNAFLDをNASH(ナッシュ)(非アルコール性脂肪肝炎)といいます。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、肝硬変や肝がんになっても、病気がかなり進行しない限りほとんど症状はありません(図)。また、薬の副作用による脂肪肝、お腹(なか)の手術後に生じる脂肪肝(消化器内科講座にて研究しています)などでは、肥満がなくとも脂肪肝が進行することがあります。そのため、脂肪肝が現在どのような状態になっているのかを調べるため、定期的に検査をすることが勧められます。健診などで異常があった場合は、放置せずに一度、専門医に相談や受診をしてください。

脂肪肝を治す薬はあるの?
NAFLD治療の原則は、食事・運動療法などで、徐々に標準体重をめざすことです。脂肪肝に保険適用がある薬はありません。しかし、脂肪肝の悪化の原因になり得る糖尿病、高血圧、脂質異常症の治療薬や、抗酸化作用のあるビタミンEなどはNAFLDへの治療効果があることが報告されています。近年では、新しい糖尿病の治療薬であるGLP-1(ジーエルピー-ワン)アゴニスト、SGLT-2(エスジーエルティー-ツー)阻害薬なども脂肪肝に効果があることがわかってきました。
更新:2024.09.23